昨年の5月に、Twitterで瞬く間に広まったプロジェクト「#ラグビーを止めるな2020」がより良いものへと発展を遂げている。
「#ラグビーを止めるな2020」の発起人である、日本協会リソースコーチの野澤武史氏が立ち上げた一般社団法人、「スポーツを止めるな」は1月25日、高校生や大学生がプレーをアピールするためのオンラインプラットフォーム『HANDS UP』を開設した。
『HANDS UP』は自分のプレーをアピールしたい選手と、大学や社会人のチーム関係者、リクルーターをつなぐ役割を担う。両者とも無料で簡単に始められる。
選手たちは、自身のプレー動画などのアピールポイントを2分以内の動画にまとめ、それを最大3本まで登録できる。50㍍走や立ち幅跳び、握力、ベンチプレスといったアピールしたい身体情報の入力も可能だ。
一方チーム関係者は、プレー動画などを閲覧できるだけでなく、自分たちのチームの雰囲気が分かるような動画やチーム情報を登録して、選手たちにPRすることができる。
「例えば大学を決める上で、高校生は思ったよりも大学の情報を持っていない。学費免除の枠や推薦枠、AO入試といったさまざまな入学方法をチームが教えてくれれば、高校生たちの判断材料が増えるのではないかと期待している」(野澤氏)
両者がメッセージを直接送れるチャット機能もついており、気軽なコンタクトが可能だ。すでにチーム関係者から声のかかった選手も出てきているという。
「#ラグビーを止めるな2020」は、新型コロナウイルスの影響による相次ぐ大会の中止でアピールの機会を失われた、高校3年生の進路開拓を助けた。この動きはラグビーにとどまることなく、スポーツ界全体に広がるムーブメントとなったが、ひとつの課題が浮かび上がった。
高野連では球児に試合動画をSNSに投稿することを禁止にしていたり、他のスポーツでも部活動としてSNSの使用を禁止している学校が存在していたのだ。
クローズドなシステムであれば、選手が安全にプレーをアピールできる。そこで開発されたのが『HANDS UP』だった。現在すでに野球やサッカー、柔道といった計8種目が選択項目に並んでいる(「その他」で他競技も入力可能)。
また、『HANDS UP』は学校や地域による差を埋めることにもつながる。
「こないだの近畿大会には、リクルーターが50人ほどいたそうなのですが、僕が訪ねた四国大会は4人だけでした。地域差があるのが現状で、見てもらえないところは見てもらえないんです。そんな格差をなくして、機会を平等にしたい」(野澤氏)
マッチングの役割を担う『HANDS UP』だが、あくまで目的はそこではないと野澤氏は強調する。
「次のステージでも競技を続けたい競技力の高い選手のみが対象のようにも映るが、そうではなくて誰もが必要なことだと思っている。自分の強みは何だろうとか、リクルーターはどこを見ているのだろう、と”考える”こと自体に教育的価値がある」
いわゆるセルフプロデュースと呼ばれるもので、動画を作成することが自発的に自身と向き合う機会になり得るのだ。
「次のステージで競技を続けられることになればそれはとても嬉しいことですが、そうではなくても、自分から手を挙げる、動き出す社会になってきている中で、他人と違いを生む努力が芽生えたり、メタ認知が上がったりということにつながれば、やる価値はある」
現在は基本機能のみのベータ版だが、今後選手やチーム関係者からのフィードバックをおこない、本開発をしていく予定だ。
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高校ラグビーではブロック大会が終わりに向かい、いよいよ選抜大会という時期に差し掛かっている。リクルーターが目を輝かせている頃だろう。いまが最適なアピール機会だ。
『HANDS UP』の申込・登録はこちら▶https://hands-up.jp/login