ラグビーリパブリック

【コラム】トップリーグ、待望のキックオフ。注目はLO、WTB、HO。2023W杯目指す新しいジャパンの候補選手たち。

2021.02.11

ポスト福岡の期待かかるトヨタのWTB竹山晃暉。ゲームズマンシップも卓抜(Photo/Getty Images)

 フランスの強さは圧巻だった。2019年のワールドカップから大幅にメンバーが変わったイタリアを、敵地で文字通りひとひねりにしてみせた。

◆2023年めざす日本代表へ、期待ふくらむ齋藤直人。サンウルブズでの勇姿

 優勝候補の本命と目されたイングランドは、15ものペナルティをおかすなど最後まで精彩を欠く内容でまさかの黒星発進となった。相手の持ち味をことごとく封じて38年ぶりにトゥイッケナムで勝利を挙げたスコットランドの見事な組織防御は、2年後の激突をにらむジャパンの貴重な教科書になるはずだ。

 指揮官交代後なかなか調子の上がらないウエールズは、前半13分にレッドカード退場者を出したアイルランドに5点差でかろうじて勝利し、ひとまずはプライドを保った。もっとも、試合を通してより強い印象を残したのは、ほとんどの時間を14人で戦いながらあと一歩まで詰め寄ったグリーンのジャージーの奮闘だった。鮮やかに下馬評を覆したスコットランドと、敗れてなお意地を示したアイルランド。あらためて「ジャパンはこんなチームに勝ったのか」との感慨がわき起こった。

 2021年のヨーロッパ6か国対抗戦、伝統のシックスネーションズが、先週末より始まった。本来ならおなじみの応援歌が響きわたるはずの巨大スタジアムの観客席が無人なのは切ないけれど、強豪国同士の威信をかけた激突はやはり見応えがある。一つひとつのプレー、一秒一秒の瞬間に、選手一人ひとりの意欲と意志が立ちのぼる。

 何より真剣勝負を戦うことで、チームの現在地が明らかとなる。2023年9月のワールドカップフランス大会開幕までの時間に、何をしなければならないかも。

 2月20日。いよいよ、ようやく、ついに、トップリーグが幕を開ける。

 ワールドカップの熱狂が続く中での無念のシーズン半ばでの中止、さらには第1節直前での延期でまたしてもしばしおあずけとなったこともあって、「待ちに待った」の渇望は最高潮に達している。極限まで引き絞った弓から放たれる矢は、どんな勢いで飛び出すのか。そしてそこから浮かび上がる新生日本代表の輪郭は、いかなる形をしているのか。「2023年のジャパン」をテーマに、今季の注目選手を挙げてみたい。

 まず2019年のワールドカップメンバーでは、LOトンプソン ルーク(元近鉄)が現役を引退した。WTB福岡堅樹(パナソニック)も今シーズン限りでスパイクを脱ぎ、医師を目指すことを表明している。決勝トーナメント進出を果たす上で大きな役割を担った2人のあとをいかにカバーするかは、代表首脳陣がもっとも意識している点だろう。

堀川監督率いるヤマハでキャプテンに指名され、成長続けるベテランLO大戸裕矢(Photo/Getty Images)

 LOについては外国人選手の比重が大きく、居住年数など資格取得の要素も関わってくるため、不透明な部分が多いのは悩ましいところだ。いまやどの国も2メートル級の選手が並ぶ状況を考えれば、2023年代表選出の可能性がある外国人選手を計画的にピックしていくことも考える必要があるだろう。もちろん日本人LOの台頭にも期待したい。ヤマハ発動機で主将を務める大戸裕矢は、サイズでは測れない感覚と知性が持ち味。昨季1年目ながら全6試合に出場したトヨタ自動車の秋山大地にも、大きな可能性を感じる。

 福岡に代わる新フィニッシャーの一番手は、同じパナソニックで昨季全試合フル出場、7トライをマークした竹山晃暉か。チャンスに絡む嗅覚と、周囲の状況を見て判断できる落ち着いたプレーぶりは、名だたるランナーがひしめくリーグの中でもトップクラス。非凡なスピードに加え、当たられてもバランスが崩れない強さを備えるトヨタ自動車の髙橋汰地も有力な候補だ。

2020シーズンは6試合中5試合に先発したWTB髙橋汰地。パナソニック戦では福岡賢樹とも対峙。「判断、スピードに想像以上の差があった」。ルーキーイヤーに得難い経験(Photo/Getty Images)

 躍進する選手の出現が待たれるもうひとつのポジションが、HOである。世界でも指折りの2番、堀江翔太(パナソニック)は、2023年は37歳。2019年のトンプソンのようにコンディションと相談しながらの4大会連続出場を叶える上でも、坂手淳史(パナソニック)との競争で層を厚くする存在は欠かせない。2019年は最終選考で涙を飲んだサントリーの堀越康介、沢木敬介新監督の就任で変革が進むキヤノンの庭井祐輔にとっては、重要な一年になる。

防御、セットプレーに安定感。代表キャップ8のキヤノンHO庭井祐輔(Photos/Getty Images)

 国際級の外国人選手が名を連ねる中で出場機会をつかむのは容易ではないが、ルーキーにも楽しみな逸材は多い。明治大学からリコー入りしたHO武井日向は、セットプレーの安定感と腰の強いボールキャリーで大切な戦力となりそう。大阪朝高時代に2年連続で高校日本代表に選ばれ、帝京大を退学して神戸製鋼に加入したSO李承信も、「どんどん使っていきたい」と首脳陣から期待を受ける。

 何より注目は、昨季大学選手権を制した早稲田大学からサントリーに加わったSH齋藤直人とCTB中野将伍だ。学生時代から「次の日本代表の9番」と評されてきた齋藤にとって、流大とのレギュラー争いはそのままジャパン入りをかけたバトルを意味する。中野はWTBでの起用も想定されているが、オールブラックスでもワラビーズでも実現しないSOボーデン・バレットとCTBサム・ケレビが並ぶ豪華BKラインの一員としてプレーする経験は、かけがえのない財産になるはず。同様にCTBの座を争う中村亮土、梶村祐介が彼らからどのように刺激を受け、さらなる成長を遂げるかも、興味は膨らむ。

 最後に、齋藤、中野も参加した2020年のサンウルブズ組のことを記しておきたい。FL布巻峻介、LO谷田部洸太郎、FB/CTB森谷圭介(以上パナソニック)、SO小倉順平(キヤノン)、NO8吉田杏、SH福田健太(以上トヨタ自動車)ら今季トップリーグチームに所属する選手を筆頭に、2023年にフランスで桜のジャージーをまとって戦うために険しい道を選択した勇士たちの覚悟は、必ずプレーの随所に表れる。残念ながらわずか6試合でシーズンは途絶えたものの、そこから得られたものがいかに大きかったかは、大学選手権における天理大学のCTBシオサイア・フィフィタのパフォーマンスが雄弁に物語っている。注目だ。

サントリーで初シーズンを迎えるSH齋藤直人。各チームに散るサンウルブズ組の活躍も楽しみだ(Photo/Getty Images)
Exit mobile version