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「時間をかけた議論は大事」。平野優芽(サクラセブンズ)は判断力を磨く。

2021.02.10

広い視野とスペース感覚が持ち味の平野優芽。(撮影/松本かおり)



 新しい指揮官になって、少しずつ変化が起こっているようだ。
 2月9日、熊谷で実施中の女子7人制強化合宿に参加している平野優芽(ひらの・ゆめ/日体大3年)が、オンライン記者会見で自身とチームの現在地を話した。

 2月6日から14日までは熊谷、それ以降は2月26日まで宮崎・延岡でおこなわれる同合宿。今年に入ってチームに合流したハレ・マキリ ヘッドコーチの指導のもと、選手たちはテーマを持ってトレーニングに取り組んでいる。

 キーワードはスペースだ。
「ディフェンスは(相手に与える)スペースを埋め、コンタクトに勝つ。アタックではスペースを見つけ、みんなでそこに仕掛ける」
 実戦的な練習を通して、課題を見つけ、感覚を磨くことを繰り返す。
「デイフェンスは、以前は相手に合わせてそれぞれの立ち位置を変えていたのですが、いまは、自分たちの(全体の)幅を徹底して守り、組織的に守るシステムになりました」
 積み上げてきたスタイルの大枠に変化はないが、細部に新しい取り組みが見られる。

 平野自身、ゲームメーカーとして判断力をさらに高めることを意識している。
「ハレさんにも、そこを求められています」
 自らスペースに走る。仕掛けてスペースを作り、周囲を走らせる。攻める方向を間違わず、チャンスを確実に仕留めたい。
 対外試合のできない中で、そこを高めるのは難しいから、「合宿中もワールドセブンズシリーズの過去の試合の映像を見て、感覚を忘れないようにしています」。
 SNSなどで他国の活動状況も把握する。平穏が戻ったときに備え、できることすべてに力を注ぐ。

 新指揮官になって、「コンタクトの練習が増えた」感覚だ。同時にタックルスキルの細部にもこだわる。
 攻守とも意図した動きをしたとしても、接点で劣勢になるならプレーは完結しないからだ。
「コンタクトで勝つことが大事、と。強度の強いメニューにも取り組んでいます。ハレさんは、一人ひとりのことを理解して、それぞれに合ったアドバイスをしてくれます」

 数日前に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が発した女性蔑視とも思われる発言について、「話が長くなるのは女性だから、というのは違うかなと。時間をかけてでも議論をするのは大事なことだと思います」と話すゲームリーダーは、日々を大事に過ごしていくと話した。

 3週間の長期合宿にも「熊谷より暖かいところ(延岡)に行けるのは、リフレッシュできるから嬉しい」と前向きな姿勢を見せる。
 約5か月後に控える大舞台では、「ベストのパフォーマンスを出すこと。メダルを獲得すること」が目標。その実現のために、サクラセブンズの司令塔は進化を続けたい。

160センチ、60キロの20歳。(©JRFU)