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フランスラグビー徒然【番外編】 6か国対抗、予定通り開幕へ。

2021.01.30

チームを束ねるフランス代表、ファビアン・ガルチエ監督。(Getty Images)



 フランス国内は、3度目のロックダウンはもはや避けられないという空気になってきた。すでに100万人以上の人がワクチンの接種を受けたが、1日の新規感染者数は相変わらず2万人を超え、そのうち、イギリスの変異株の感染件数の割合は約10%と言われており、1月初めの3%から急速に増えている。

 政府は感染爆発をなんとしてでも防ぎたいところだが、自由が制限された生活に疲弊し不満を抱いている国民に、どうすれば新たなロックダウンが受け入れられるか、検討しながら細かい条項を準備している段階と言われている。

 1月27日、例年通り6か国対抗戦の開幕に先立ち、各国チームヘッドコーチとキャプテンが一堂に会する記者会見が今年も行われた。
 ただし、今年はオンライン会見である。同大会CEOのベンジャマン・モレル氏が、「現時点では延期することは考えていない。今後の状況に応じて、あらゆるオプションが可能になってくるが、現段階ではスケジュール通り運営できるよう注力している。ただ、フランス入国時に課される7日間の隔離期間について、フランスで行われている他のスポーツ大会と同じように特例が認められるのかどうか、フランス政府の明確な指示を待っている」と述べた。

 現在、フランスへの入国には、出発前最大72時間以内に行われたPCR検査陰性の結果の提出が必要だ。そしてEU加盟国以外の国からの場合、入国から7日間の隔離が求められる。
 今年のラグビー6か国対抗戦のスケジュールでは、2月28日にスコットランド、3月20日にウエールズがパリでフランスと対戦するために入国する。また、イタリア、アイルランド、イングランドで試合をして帰国するフランスチームも隔離対象になり、政府の対応が注目されていた。

 1月29日付のレキップ紙は「フランス政府は提出された6か国対抗戦感染症対策実施要綱を検討した結果、チームが滞在するバブル内での予防対策の徹底した遵守や、陽性反応者が出た場合の隔離用施設を準備することなどを条件に、特例を認めた。しかし今後のフランスおよび参加5か国の感染状況により、取り消される可能性もある」と報じた。

 以前、ラシン92のジャッキー・ロレンゼッティ会長は「(感染リスクを避けるため)昨年8月にポルトガルのリスボンで集中開催されたサッカーの欧州チャンピオンズリーグの決勝トーナメントのように、ホームスタジアムであるパリ・ラ・デファンス・アリーナを、全試合おこなえるように、参加する6チームがそれぞれ貸切で使えるスタジアム周辺のホテルと一緒に無償で提供する」と発言していた。

 しかしモレルCEOは、「感染予防とセキュリティーを考慮すると、各協会は安全なトレーニングセンターをそれぞれ持っている。また、各スタジアムの広告契約の問題もある。この大会で何より大切なのは、カーディフ、ダブリンなど、それぞれの国で試合が行われることだ」と、従来の形式でこの歴史のある大会を実施する意義を強調した。



 そんな中、フランス代表チームの準備合宿がニースで行われている。
 スタッフ、選手全員がPCR検査を受けた後、1月24日の夜に集合。ホテルは貸切、共同スペースではマスク着用、チームバスでトレーニングに行く以外は外出禁止。ウエートルームは使用後消毒。検査は週2回。ホテルや、チームに関わるその他の全スタッフも同様に検査を受ける。また、24日の夜に試合があったトゥーロンとスタッド・フランセの選手は翌朝の合流だったが、検査を受けて結果が出るまでそれぞれの部屋で待機した。

 厳重な感染予防対策に、CTBアルチュール・ヴァンサンは「大会が実施されるために、僕たちがするべき最低限のこと。この状況でラグビーを続けられることが、どれだけ恵まれているかを認識するべき」と言う。
 この合宿が、パリの国立ラグビーセンターではなく、ニースで行われることについて、HOジュリアン・マルシャンは「スタッフは、僕たちをあらためてニースに来させたかったのだと思う。ここは僕たちの物語が始まった場所」と語る。ニースは1年前、ガルチエ・ブルーが最初に集合した場所である。

 キャプテンのFLシャルル・オリボンも、「最初に集合した時は、グループ内でまだ少し戸惑いもあり、遠慮している選手もいた。でも、一人ひとりの選手が、勝ちのカルチャーを持っていた。一緒に過ごしていくにつれて、それがチーム全体のカルチャーになっていった。その始まりがニースだった」と、新しいシーズンを同じ場所でスタートできる意義を評価している。

 今回、負傷者が多く出ている。SOロマン・ンタマックとPRデンバ・バンバが負傷で参加できないことは合宿メンバー発表前にわかっていた。その後FBトマ・ラモス、さらに先週の試合で、CTBヴィリミ・ヴァカタワ、PRジャン・バティスト・グロ、LOスワン・レバジが負傷した。
 レバジの代わりに招集されたトマ・ラヴォーも3週間前にコロナウイルスに感染し、まだ陰性にならず合流できなくなった。NO8グレゴリー・アルドリットゥは今週初めに膝の造影検査を受けたため、現段階では合流していない。

 この状況に対して、ファビアン・ガルチエ 監督(ヘッドコーチ)は、「昨年のオータム・ネーションズカップでは、チームを丸ごと替えなくてはならなかったが、今いる選手は多かれ少なかれ、他の選手に代わって試合に出たことがある。チームの中心になる選手も残っている。昨年の秋の方が、途轍もないチャレンジだった」と言う。

 インテンシティの高い試合形式の練習をおこなえるよう、合宿参加人数は「42人」というのが同監督のこだわり。今回も42人で合宿はスタートした。その中からこの週末のトップ14の試合のため、13人がそれぞれのクラブチームにリリースされる。
 しかし、週明けに代表チームに再び合流するのは2人だけになる。代表とクラブチーム間の移動での感染リスクを避けるため、今後は31人で合宿を行うことになった。

「悪化している感染状況を考慮すると、選手を行き来させるのは賢明ではない。選手を、そして感染対策で苦労してきたクラブチームも守らなければならない」とBKコーチのロラン・ラビットは説明した。「トレーニング方法を見直さなければならないが、適応するしかない。リスクを減らして大会が開催されることが優先」と加えた。
 どの国も同じような状況の中、どれだけ適応していけるか、与えられた状況をどれだけ有意義に使えるかが鍵になりそうだ。

 ガルチエ監督は「目標は勝つこと。勝つことが目の前の目標であり、永遠の目標である。今のフランス国内の状況、また、その中で我々がどれだけ恵まれているかということを十分理解している。フランス代表チームを応援してくれる人々に、僕たちのことを信じてくれている人々の気持ちに応えたい」と話す。
 ガルチエ・ブルー、今回はどんな物語を見せてくれるのか、楽しみだ。

追記)1月29日夜、カステックス首相から緊急で新しい措置が発表された。
 ロックダウンはもうしばらく様子を見るとして、新たに「絶対的な理由以外のEU以外の国からの入国、または出国を禁止する」という規制が追加された。
 6か国対抗開催可否に関しての報道はない。