冷たい雨。凍りつきそうな寒さ。そんな状況にミスも少なくなかった。
しかし、2試合とも熱かった。それぞれのチーム、一人ひとりの選手の気持ちが伝わってきた。
1月24日、日体大健志台グラウンドで第31回関東女子ラグビー大会(Otowa CUP)の準決勝がおこなわれた。勝ったのはモーニングベアーズ(アルカス熊谷と自衛隊体育学校の合同チーム)と、横浜TKM/山九フェニックスの合同チーム。両チームは2月7日に実施される決勝で対戦する。
第1試合は、モーニングベアーズがRKUグレースに29-0のスコアで勝った。
先制点は前半18分。この試合でMIP(Most Impressive Player)に輝いたFB平山愛がPGを決めた。
WTB谷口令子の好走などで勢いを得たモーニングベアーズの追加点は前半29分。相手反則で得たPKを蹴り出し、ラインアウトからモールを組むと押し切った。
同42分にはスクラムからサイドを突いたNO8梶木真凜がトライラインを越える。15-0としてハーフタイムを迎えた。
モーニングベアーズは、後半に2トライを追加した。途中出場のSH阿部恵が挙げたのも効果的で、結果、完封で勝利を手にした。
勝因は攻守で前に出る意識を押し出したことだ。HO公家明日香主将は、「練習期間があまり取れなかったこともあり手の込んだことができなかったし、(雨と寒さで)コンディションも悪かったので、一人ひとりが前に出ようと言いました。前半、キックを使ったプレーがハマって点が取れて勢いが出ました」と話した。
第2試合は最後の最後まで競った。そして、劇的な決着だった。
序盤から、それぞれが自分たちの色を出した。攻めてはボールをよく動かし、守ってはダブルタックルなどで圧力をかけた日体大。横浜TKM/山九フェニックスは好タックルを連発し、接点で何度もボールを奪い返した。
前半は5-5。日体大は33分、PKから好機をつかみ、モールで先制点を奪う。横浜TKM/山九フェニックスは43分、スクラムから大きくボールを動かして途中出場のWTBレイヤモ・アテカが左サイドを走り切った。
後半に入っても互いに1トライずつを加え、両者の差はゴールキックの差だけ。試合は日体大の2点リードで試合終盤を迎えた。
攻めてはボールを失っていた横浜TKM/山九フェニックスは、渾身の力を振り絞って敵陣に攻め込み、攻撃を重ねた。そして、「自分の前が開いた」とNO8永井彩乃が豪快に走る。逆転のトライを決めた。
ゴールキックが決まったのはインジャリータイムに入った後半41分。ゴールキックも決まり、17-12と劇的な逆転勝利だった。
MIPにも選ばれた永井は、「みんなの諦めない気持ちが伝わってきていました。それに負けないようにプレーしていました。前週の試合には出場しなかったので、私が一番元気、という気持ちでプレーしていました」と話し、持ち味である突破力を存分に発揮した試合を振り返った。
攻めては戻される苦しい時間帯には、「諦める点差じゃない。大丈夫」と周囲に声をかけ続けた。
「試合前のアップの時から、みんなの勝ちたい気持ちが伝わってきていました。相手を飲み込む勢いでアタックできたのが良かった」
今秋開催予定のワールドカップへの出場を目指している永井は、「代表候補に選んでもらっているので、それに相応しいプレーをしたいと思っています」と言う。
この日、スタンドには女子15人制日本代表のレスリー・マッケンジー ヘッドコーチの姿があった。
良いアピールになった。