1月11日、大学選手権決勝で早大を破り、初の日本一になった天理大。3度目の決勝で悲願の快挙だった。2年前の決勝では明大に敗れている。決勝が行われた2019年1月12日の翌日、当時の4年生FWで座談会を開いた。
ラグビーマガジン2019年3月号掲載(1月13日インタビュー)
文◎森本優子
天理大[4年生FW]座談会
Play back 4 years.
【メンバー】
HO島根一磨[主将・天理/現パナソニック]
LO由良祥一[FWリーダー・大産大附/現豊田自動織機]
FL佐藤慶[天理/現栗田工業]
NO8ファウルア・マキシ[日本航空石川/現クボタ]
PR加藤滉紫[専大松戸/現マツダ]
頂点には手が届かなかったけれど、
帝京大の10連覇を止め、今季の大学シーンに強烈な存在感を残した天理大。
小さいけれど堅固なスクラム、湧き出るようなフォロー、電光石火のアタック。
決勝の明大戦では島根主将の鬼神の活躍もあり、
よりファンの脳裏に残るチームとなった。
決勝戦翌日、悔しさと達成感の入り混じる中、
島根主将をはじめFWの4年生に集まってもらった。
――決勝から一夜明けてみて。
島根 あらためて新聞を見ると悔しさが…。試合は時間が経ってから見たいと思います。
佐藤 僕はYouTubeで見てめちゃくちゃ悔しかったです。
加藤 試合は全く見てないですが、友達から「スクラムよかったね」と送ってもらった、スクラムを押している動画を何回も見返しました。
由良 パブリックビューイングで天理の人が集まって応援してくれる映像がツィッターに張ってあって、それを見て泣きそうになりました。思ったらダメなんですけど、「ああすれば、こうすれば」と。
マキシ 僕は負けた試合は見ない。昨日は悔し過ぎて寝れなかった。
――主将が奮闘した反響は大きかったのではないですか。
島根 (連絡は)すごかったです。いろんな人の支えがあったんだなと改めて思いましたね。普段は僕はアタックに行くキャラじゃないんですけど、ボールを積極的に持とうと思って行ったら、皆の勢いもあって、いつも以上のバフォーマンが出来た。
由良 いつもすごいですから。
――主将はどんなタイプですか。
加藤 喋りは副将の池永(玄太郎)のほうがうまいです。でも「そうしないといけない」と思わせてくれる行動をとってくれる。そこがキャプテンに向いている。
――よく怒るほうですか。
島根 怒るというよりは、注意が多かったです。でもフィットネスのとき、最後まで入りきるというところで、皆に吠えてたかもしれない。
――今や天理といえばスクラムです。実際にどう感じていましたか。
加藤 僕が入った頃から強かった。今年のスクラムが強い理由は、先輩方が強かったから。そういう人と組めたおかげで、今の形がある。
――加藤選手は専大松戸から天理に進学した。選んだ理由は。
加藤 ‘11年度の立川(理道)さんの試合を見たのと、小さくても実力があれば使ってくれるということで選びました。あの試合ではスクラムはそれほど強くない印象でしたが、入ってみたら、強くてびっくりしました。
島根 僕も天高時代からずっと見てきて憧れを持っていたんですが、そのときはフィールドプレーの印象が強かった。入ってみたら、セットへのこだわりがありました。
由良 僕は高校のときFLで、大学でLOになったんですが、先輩にめちゃくちゃ細かいことを言われた。僕は天理ウェイと言ってるんですけど、体重のかけ具合やお尻の位置とかめちゃくちゃ細かい。下級生のときはずっと怒られながらやってて、なんでこんなにと思ったんですが、それだけ細かいところを意識するからこそ強くなるんだと思いました。
――帝京大戦の後、加藤選手が「1㌢にこだわる」と言っていた。
加藤 地面から1㌢の高さで組む。
由良 その意識で全員がやることで、コンパクトで強く組めるんです。
マキシ 今はエイトもめっちゃ体重かけて押してますけど、1年のときは肩をつけるくらいでした。去年からエイトも押し切るようになって、今年はバックローの意識が高かった。
佐藤 僕は3番の小鍜治(悠太)を押してたんですが、前が頑張ってくれてるので、3列も死ぬ気で押してました。
――佐藤選手は、新潟から天理高校に入学した。
佐藤 入るときは、特に何も考えてなくて、親が寮生活をしてみろと。気が付いたらラグビーやってた。いい先輩がいたのでついていった感じです。
――本数はかなり組むのですか。
加藤 僕が2年のとき、菅平合宿の前の流葉(高原)合宿が終わったら、首の皮が剥けてた。朝起きてすぐ、歯を磨いてバナナを食べて、スクラムを組んでました。
由良 ブヨに噛まれながら(笑)。朝なんでめっちゃ地面に虫がおるんですよ。みんな足とか噛まれまくって。
島根 バインドしてるから手ではらえない。
由良 虫除けスプレーも効かない。
――島根主将は今季からHOに転向した。苦労があったのでは。
島根 最初は僕がHOに入ると、下のチームにも押されてました。他のチームには押されないんですけど、身内には負けていた。
加藤 HOは付け焼刃で出来るポジションじゃないのに、スローイングも含めてよく頑張ったと思います。
佐藤 僕はずっとバックローで一緒だったので、ユニット(練習)が終わった時のしんどそうな顔がャパかった。大変やろうな、と。
由良 僕はラインアウトのサインを出していて、最初は前でとりやすいサインを出していたんですが、夏合宿でラインアウトが不安定だった。島根が焦ってるのも、チームをまとめないといけないのも分かったから、どうにかして相手から逃げて、なおかつ島根が投げやすいところを、と考えていたら、僕自身考えすぎてしまった。佐藤慶から「こうしたら」と言われても「そんなこと分かってんねん!」って。島根は練習終わってからもずっと一人で、的に向けて投げてた。毎日その姿を「すごいな」と見てました。
――キャプテンの重責と新しいポジションの両立は大変だったのでは。
島根 それがお互いに噛み合ったから、よかったのかなと。必死になる分、みんなもついてきてくれる。弱いのに、キャプテンだからと出られるのは嫌だった。スローイングは最後までうまくいったとは思ってないですけど、やれることは全部やったかなと。また練習して、次のステージでも頑張らないと。(つづく)
◎第55回大学選手権決勝(2019年1月12日) 明治大22―17天理大
【明治大メンバー】
1.安昌豪 2.武井日向 3.祝原涼介 4.片倉康瑛 5.箸本龍雅 6.石井洋介 7.井上遼 8.坂和樹 9.福田健太 10.忽那鐘太 11.髙橋汰地 12.射場大輔 13.森勇登 14.山崎洋之 15.山沢京平 16.松岡賢太 17.齊藤剣 18.吉岡大貴 19.小宮カズミ 20.朝長駿 21.松尾将太郎 22.児玉樹 23.山村知也
【天理大メンバー】 1.加藤滉紫 2.島根一磨 3.小鍜治悠太 4.由良祥一 5.アシペリ・モアラ 6.岡山仙治 7.佐藤慶 8.ファウルア・マキシ 9.藤原忍 10.松永拓朗 11.中野豪 12.池永玄太郎 13.シオサイア・フィフィタ 14.久保直人 15.立見聡明 16.内山友貴 17.谷口祐一郎 18.山川力優 19.ジョネ・ケレビ 20.松岡大和 21.小畑拓也 22.野田涼太 23.松田信夫