ラグビーリパブリック

天理大学特集! 9年前の初決勝から変わらない色(後編)

2021.01.21

後列左・宮前の出身校・名張西は学校が百合が丘にあることから百合の花が胸に。後列右の上田の出身・鶴来は獅子舞で有名。ジャージーにもご当地の色が出る。立川主将が持っているのは天理大のジャージー(撮影:早浪章弘)

 1月11日、天理大は大学選手権決勝で早大を55-28で破り、初の日本一を成し遂げた。天理大はこれまで3度決勝に進出している。初の決勝進出は2011年だった。決勝では帝京大に12-15で敗れはしたが、立派な準優勝を果たした。功労者5人が決勝終了直後、ラグビーマガジンの取材に応じてくれた。後編ではLO上田聖、SO立川理道(当時主将、日本代表キャップ55)の2人を紹介したい。

前編(PR金光大生、WTB宮前勇規、WTB木村和也インタビュー)

ラグビーマガジン2012年3月号掲載(1月16日インタビュー)
文◎森本優子

天理大学[第48回大学選手権準優勝]
TRUE COLORS.
~それぞれの色~

もっとセットが安定できてたら。
LO⑤上田聖[鶴来/石川]

 高校時代からソフトモヒカンは、FWの中ではひときわ目立つ。陽性のキャラクターでチームを盛り上げるのがLO上田聖である。

 3歳上の兄が鶴来高でラグビー部だったことから、自らも同じ道へ。高校時代は3年間、アイセア・ハベア、シアオシ・ナイらのいた日本航空石川(旧日本航空第二)と花園切符を巡って戦った。

「自分が3年のとき春の大会で航空に勝って、花園に行けるかな、と思ったんですが、結局負けてしまって」

 大学では、その彼らと同窓に。

「ずっとライバルだったけど、味方にしたら…頼もしすぎます(笑)」

 上田がレギュラーに定着したのは、4年になった今シーズン。この3年間、様々なポジションを経験した。

「1年の夏にはWTB、2年でPRもやりました。高校時代ずっとNO8で、ここにもNO8で来たっていう気持ちがあったから、最初は”人数が足りないからWTBにいかされたのかな”ってネガティブな気持ちもありました。でも今になってみると、おかげでBKの動きやディフェンスのことが分かったし、スクラムを組んでいたら、肩回りの筋肉がついて、タックルも低くいけるようになった。いろんな経験をさせてくれたのがよかったんだと思います。何回も何回もCチームまで落とされたんですけど、そのたびに”負けとれんわ”って這いあがって」

 決勝戦を終えて帰省したときの友人たちの祝福で、準優勝を実感したが、今もまだ悔しい気持ちが燻ぶる。

「BKは勝てていた。もっとFWでセットプレーが安定できていたらと思うと、BKに申し訳なくて」

 就職はキヤノン。昨年、サントリーのトライアウトを受けにいったが、最終で落選。ラグビーを諦め公務員を目指していた矢先、声がかかった。

「実はキヤノンの方が見に来られる試合と、公務員試験が同じ日だったんです。元々”試験があるから休みます”と言ってたんですけど、小松監督から話を聞いて、公務員試験を諦めて試合に出ました。イチかバチかでしたけど…。よかったあ(笑)」

当時4年生、LO上田聖

僕らのラグビーがどこまで通用するか、挑戦したい。
SO⑩立川理道[天理/奈良]

 誰もが認める「ミスター天理」立川理道。悔しさを感じる一方で、達成感も湧いてきた。

「ああいう試合だからこそ悔しさは残るんですけど、街を歩いてても、知らない人が”惜しかったね”と言ってくれて。全国2位を感じました」

 今回、チームが飛躍したきっかけは1回戦の法大戦にあった。

「後半、法政にタックルの質も運動量も悪いところを突かれて、小松監督からも厳しい言葉をいただいた」

 2回戦の慶大戦、FLで抜擢されたのが唄と関口の二人だった。

「唄は勘もいいし、鋭さもあったけど、どこまで関東の大きなFWに通用するかは分からなかった。小松さんも迷いはあったと思います。それが、大きいFWを次々と止めてくれた。関口も関西リーグは出てないけど、活躍してくれた。僕は選手権に入ってチームを変えたのはFL二人だと思ってます」

 日本代表新監督であるエディー・ジョーンズ氏は昨年のW杯前、優勝チームの条件として「緻密な準備と優れた主将、そしてXファクター」を挙げている。その説を借りるなら前記の二条件は整い、最後の「Xファクター」が両FLだったわけだ。

 選手権を通じて、リーダーとしても大きく成長した立川だが、「自分は何もしていない」が口癖だ。

「チームが変わったのは去年のシーズンです。小松さんをはじめとしてスタッフ、キャプテンだった兄(直道さん)が一気に変えた。食事もばらばらに食べていたのを、時間を決めてみんなで食べるようにして、意識付けを徹底した。朝練習も始めたんですが、今までしていなかったことを始めるのは結構大変だったと思うんです。今年はそのまま引き継いだ感じです。準優勝で兄も喜んでくれてましたけど、性格上、悔しさもあると思う(笑)。本当に小松さんと、去年の4年生があって、今年があると思います」

 試合後すぐ対戦チームとレフリーに握手を求めにいく姿も、天理大の試合では見慣れた風景だ。

「勝っても負けても、相手とレフリーに挨拶に行く。兄もそうやっていたし、そういうものでしょ?」

 2月の日本選手権ではトップチャレンジのチームと対戦する。

「クボタ、来てほしいですね…。そうなれば、トップリーグ(昇格)が決まってるわけだから。僕らのラグビーがどこまで通用するか挑戦したい。簡単にボールは動かないでしょうけど、チャンスはあると思うので、そこで何かできたらいいなと」

 再び彼らがピッチに登場するのは9月25日。その日が待ち遠しい。

(おわり)

当時4年生で主将、SO立川理道

◎第48回大学選手権決勝(2012年1月11日) 帝京大15―12天理大

【帝京大メンバー】

1.吉田康平 2.白隆尚 3.前田龍佑 4.ティモシー・ボンド 5.ジョシュア・マニング 6.大和田立 7.松永浩平 8.李聖彰 9.滑川剛人 10.森田佳寿 11.菅谷優 12.南橋直哉 13.中村亮土 14.伊藤拓巳 15.竹田宜純 16.佐藤啓示 17.辻井健太 18.小山田岳 19.木下修一 20.中村有志 21.橋口功 22.小野寛智

【天理大メンバー】

1.藤原丈宏 2.芳野寛 3.金光大生 4.田村玲一 5.上田聖 6.唄圭太 7.関口卓雄 8.山路和希 9.井上大介 10.立川理道 11.木村和也 12.アイセア・ハベア 13.トニシオ・バイフ 14.宮前勇規 15.塚本健太 16.清水洋志 17.高屋敷拓也 18.村東宣佳 19.渡部文泰 20.山本昌太 21.鈴木心喜 22.松井謙斗