ラグビーリパブリック

ラグビー新リーグは3部構成、最高峰は12チーム。上位は海外チームに挑戦へ

2021.01.15


 日本ラグビー協会は1月15日、2022年の開幕に向けて準備している新リーグのフォーマットを発表した。参加するのは25チーム。3部構成とし、各ディビジョン間で毎年入替機会(入替戦)のあるオープンリーグとして運営する。最上位のディビジョン1は12チーム、ディビジョン2は7チーム、ディビジョン3は6チームでおこなわれる。

 ディビジョン分けには、今年のトップリーグの順位が影響し、各チームの事業運営力なども審査される。チームの参加ディビジョンの確定や新リーグの名称発表は今年6月におこなわれる予定。

 オンラインで会見をおこなった日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は冒頭、次のようにコメントした。
「ラグビー協会としては、再びワールドカップを日本に招致して、世界一になるという大きな目標を立てている。そのためには、国内のリーグを発展させることが大きな要因になる。ワールドカップ2019のような熱狂を身近な日常にしていくことが、新リーグにとっての大きなポイントになる」

 新リーグのフォーマット決定における検討のポイントと狙いは次のとおり。
(1)高質で均衡した試合の醸成 → 日本代表強化の礎となり、これまで以上の効果を発揮する。
(2)ホスト&ビジター形式の実施 → 「事業化」と「社会化」をチームが実装し得る。
(3)わかりやすいフォーマット → ファン目線を重視し、より多くの人に愛される。
(4)フォーマットを一定期間固定化し段階的発展 → コロナ禍など不透明な運営環境でも持続発展できる。

 世界基準競技レベルの最上位リーグとされるディビジョン1は、2つのカンファレンス、計12チームで構成される。高質で均衡した試合を醸成することが重要で、限られたカレンダー内でホスト&ビジター(ホーム&アウェイ)形式での試合数を多く実施し、チームの事業性確保など、複合的な視点から考察した結果として12チームとなった。

 ディビジョン1は年間で計96試合(1チームあたり16試合)。6チームずつの2カンファレンスに分かれ、カンファレンスごとにホスト&ビジター形式で2回戦総当たりをおこない、別カンファレンスのチームとの交流戦もある。順位は勝ち点で決め、プレーオフは実施しない。

 そして、ディビジョン1の上位チームはクロスボーダーマッチ出場権獲得となり、海外リーグ加盟チームと対戦することになる。
 クロスボーダーマッチについて岩渕専務理事は、「現在、日本ラグビー協会として、あるいは新リーグとして、各国、各ユニオン、各リーグともいろんな話をしている。国際カレンダー、その国のリーグ、今後の行く末もかなり不透明なところがあり、最終的に何チームというのはまだまとまっていない。ただ、この新リーグの大きな柱の一つとして、『世界最高峰のリーグを目指そう』ということで進めてきた。そのためには世界最高峰になる舞台を整えるということが必要だと思っている。いろんな状況が生まれると思うので、状況を鑑みながら、ベストなオプションを選択していきたい」と述べた。

 ディビジョン2は、ディビジョン1入りを目指す7チームで構成されるリーグ。ディビジョン3は、将来的に上位ディビジョン入りを目指す6チームで構成される企業チーム/地域チームのリーグとされ、どちらのディビジョンもホスト&ビジターで2回戦総当たりを実施する。

 新リーグ法人準備室の谷口真由美室長は、「ホスト&ビジターというのが今回の新リーグの一丁目一番地の施策だと考えている。ホストの試合をすることでチームの皆様が事業をして収益を得るという機会がなければ、事業性は担保できない。そういう意味で、総当たりを2回することでホストの試合を確保する」と説明した。

 日本ラグビー界のクラブシーンのトップレベルでは、企業がラグビーチームを持つケースがほとんどだが、将来的に、独立した運営を目指しているチームもあると考えられており、谷口室長は新リーグを“ハイブリッド型のリーグ”と表現した。
 ディビジョン3は年間試合数が30で、他のディビジョンと比べると1チームあたりの試合数も少ないが、これについては「企業のなかで働く期間が必要ということもあるし、そういった観点からもディビジョン3の試合数を減らしている」と答えた。

 入替戦もおこなわれ、ディビジョン2はすべてのチームが入替戦に出場する(上位4チームがディビジョン1との入替戦、下位3チームがディビジョン3との入替戦)。

新リーグ法人準備室の谷口真由美室長

 気になるディビジョン分けについては、今年のトップリーグの順位が反映され、事業運営力なども審査される。事業運営力には、ファンクラブの獲得状況なども審査の項目に入っているという。
 今年のトップリーグは新型コロナウイルスの影響で観客が制限される可能性もあり、事業性が十分評価されないのではないかという指摘もあるが、これについて谷口室長は、「例えばSNSの発信状況であるとか、ファンエンゲージメントなども評価の対象に入れるので、ラグビーが物理的にできないからファンとつながれないとか、事業ができないということではないと思っている。チーム独自のいろんな施策を期待している」とコメントした。

 もし、今年のトップリーグが不成立になった場合、戦績の審査については各チームと合意しているとのこと。最後のトップリーグ、トップチャレンジリーグが成立しなかった場合は、2018年以前の過去5年間の戦績で評価する。昨年度はトップリーグが不成立となり、2019年はワールドカップがあったことからトップチャレンジリーグのチームが昇格する機会がなかったためで、公平を期して2018年以前となった。

 なお、新リーグは段階的なフォーマットレビューを計画しており、フェーズ1は2022-2024(3シーズン)、フェーズ2は2025-2028(4シーズン)、フェーズ3は2029-2032(4シーズン)となっている。世界のラグビーカレンダーの動きにも対応しながら、国内リーグのカレンダー、試合数、事業性なども見直し、リーグとして確固たる形をつくっていき、世界最高峰のリーグになるべく、大きなスパンのなかで一つの方向性を見いだす。


■今後のスケジュール(予定)
<2021年>
4月: 新リーグ運営法人発足
6月: チームの参加ディビジョンの確定、新リーグの名称・理念の発表
<2022年>
1月: 新リーグ開幕
1~5月: 新リーグシーズン活動期間(21週)
5月末: ポストシーズンマッチ(クロスボーダーマッチ、入替戦)
6月・7月、10月・11月: 日本代表活動期間


■新リーグ参加25チーム
NECグリーンロケッツ、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス、NTTドコモレッドハリケーンズ、釜石シーウェイブス、キヤノンイーグルス、九州電力キューデンヴォルテクス、近鉄ライナーズ、クボタスピアーズ、栗田工業ウォーターガッシュ、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、コカ・コーラレッドスパークス、サントリーサンゴリアス、清水建設ブルーシャークス、中国電力レッドレグリオンズ、東芝ブレイブルーパス、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、豊田自動織機シャトルズ、パナソニック ワイルドナイツ、日野レッドドルフィンズ、Honda HEAT、マツダブルーズーマーズ、三菱重工相模原ダイナボアーズ、宗像サニックスブルース、ヤマハ発動機ジュビロ、リコーブラックラムズ (五十音順)