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「ラグビーを楽しみ愛されるスポーツに。韓国ラグビー界を変える」 在日3世、崔潤会長が誕生

2021.01.15

「現場のご苦労を解決したい」。崔氏は現場主義で韓国ラグビー界を変える(写真提供:OK金融グループ)


 韓国ラグビー界トップに在日3世の崔潤氏(チェ・ユン、57歳)が就任する。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている韓国。大韓ラグビー協会(以下、KRU)は、年明け1月12日に第24代KRU会長選挙をおこない、前KRU副会長の崔氏がシム・ヨンボク、ソウル市ラグビー協会会長を78票対26票で破り、初当選した。任期は2021年2月1日から4年間。

 崔氏はインタビューに「子どもたちにラグビーの楽しさを教え、ラグビーを選択してもらえるような協会を作っていく」と述べた。選挙公約ではラグビー界へ「調和と統合」を呼びかけ、80%近い得票を得た。世界の先進的なラグビーの取組みを謙虚に学び、特に日本ラグビー界には応援支援を求める考えも明らかにした。

―KRU会長に当選が決まり、現在のお気持ちは?

「韓国ラグビー界にとって1月12日は歴史的な日になりました。当日、韓国は大雪に見舞われましたが、江原道(カンウォンド)在住の80歳の長老から韓国南部、珍島(チンド)の18歳の若者まで。往復10時間をかけてソウルまで来てくれました。(選挙人の)90%が平日、コロナ渦の中で投票した。(韓国)ラグビーを変えたいと思うラグビー人の心が一つになりました」

―崔氏を支持された方の重みはいかがですか?

「過去4年間、協会から副会長職を外されかけたときも積極的に仕事をしてきました。地道にラグビーのあり方を常に説いてきました。それをラグビー人が理解してくれたと思います。感無量です。私は日本の学校でラグビーを始めました。日本も40年前は、それほど人気が無かった。日本ラグビー界は地道に発展してきた。それを知っています。韓国もこれから新しい学生たちや、その親御さんたちがラグビーをしたくなる、させたくなる、楽しみたいと思うようラグビー協会、環境を作っていきたい」

 崔氏は愛知県名古屋市出身、1963年9月6日生まれの57歳。名古屋高校1年で楕円球と出会った。ポジションはフォワードで1番から8番まで。ようやくNO8についた高校3年生、最後の大会でプロップ1番がケガをして1番で終えたという。名古屋学院大ではラグビーをせずに地元の在日コリアンのチーム「愛知闘球団」でプレーを続けた。
 韓国では2002年、金融事業を開始。現在は銀行を中心としたOKフィナンシャルグループ会長としてビジネスマンの顔を持つ。2013年に男子プロバレーボールチーム「ラッシュアンドキャッシュ、VESPIDバレーボール団」を創設し、2年後には韓国Vリーグのチャンピオンまで育てた(現在、バレーボールのチーム名は「OK金融グループ・ウッツメン」)。
 2015年にKRU副会長へ就任。大学を卒業後、尚武(韓国軍体育部隊)や社会人のラグビーチームに進めなかった人材へ、経営する企業への入社という進路も提供している。

―崔氏は8つの公約を掲げました。韓国のある現役コーチは「協会の活性化と新しいチームの創設を期待しています」と話していました。

「新しいチームを作ること。そして五輪や代表選手の強化、それとともに大事なのは子どもたちにラグビーの楽しさを教えていきたい。韓国のラグビー人口は中学生から大人まで約1500人しかいません。深刻な問題です。ぜひとも接して愛して欲しい。ラグビーを人生の最高の友だちにしてもらえるようにしたい」

―ラグビーに親しむためには環境作りが大切です。

「これまではラグビーを選択して選手になりそれで終わるという人生でした。それではダメでラグビーを終えても第2の人生を、多様な人生を選択できるような環境、支援をしていきます。ラグビーをやって良かったと思える人生が送れるような仕組みです」

「選手はもちろんですが現役の監督、コーチは脆弱な仕事環境にいます。どうしても早く結果を出す、勝つことだけにこだわるようになります。財政的な支援をし、基本を大事に教える力、現代ラグビーの先端的な取り組み(安全、道徳など)を研修し学ぶことができるようにします。これはレフリーも同じ。海外への研修などプログラムを整備し取り組んでいきます。子どもたちに楽しさを教える啓蒙活動をしていく」

―2月に就任するまでに最初にすることは?

「(事務局など)組織作りです。ラグビー人の中でも優秀な人材、ラグビーを愛する人の集団を作ります。公募とスカウトで韓国内のみならず世界中から集めたい」

―公約では崔氏の公約の進捗状況を諮問する委員会も作りますね。

「ラグビー協会の外からも人材を集めたい。ラグビーを知らない弁護士などではなくラグビーを愛する人、改革をしていきたい方に」

―日本ラグビー界とは、どのような関係を築きますか?

「日本ラグビー協会に手紙を送ります。本当は訪問したいのですがコロナ渦なので。日本はワールドカップ開催でラグビー人口が増えています。それまで試行錯誤を繰り返してきた。その試行錯誤の過程、ノウハウを勉強したいと思います。本当に謙虚な姿勢で学んで育てていただきたい」

―在日コリアンラグビー界との関係は?

「多くの方から(当選への)お祝いの連絡をもらいました。大阪朝鮮高校のベスト4、おめでとうございます。日本ラグビー界において在日の選手たちが多く活躍しています。彼らが日本代表だけでなく韓国代表へも選ばれるように努めます。そして支援も続けていきたいと思います。今後も親しみをもち謙虚に付き合っていきます」

 今年夏、東京五輪出場予定の7人制韓国男子代表への強い支援も打ち出していく。韓国のスポーツ行政は、これまでの勝利至上主義から徐々に楽しむスポーツへとシフトしている。崔氏はこの変化も予算面などへ、できる限り取り入れるという。「現場の人たちの話を聞いて、そのご苦労を解決したい」。この強い思いで会長職に取り組んでいく。

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