ラグビーリパブリック

「感謝では足りない」天理大主将、男・松岡の感謝語録

2021.01.11

ラグビーを始めたのは中1。密集で、タックルで、痛い仕事を黙々とこなす(撮影:松本かおり)

 ついに大学日本一へ上り詰めた天理大ラグビー部。その魂の中心にあったのは、FL松岡大和主将の存在だ。

「めっ、ちゃくちゃうれしいです!」

◆準決勝・明治戦は前々回決勝のリベンジだった。準決勝でがっちりと相手を受け止める松岡主将

 試合後のインタビューでは、マイクが要らないくらいに感謝の気持ちがあふれた。NHKの放送や新国立競技場内に流れた言葉はすべてがシンプルだった。

 いろいろあった年、三たび日本が感染拡大にのまれる中、直球のメッセージは多くの人の胸を打つ。

 出身は甲南高校。兵庫県の名門、しかしラグビー的には無名校の出身の松岡。天理大では海外出身選手をはじめさまざまなバックボーンを持つ部員たちを束ねてきた。

 男・松岡のストレートな、しかし周囲への気遣いにあふれた言葉を紹介したい。

◆優勝を遂げて

「めっちゃくちゃうれしいです。今日の優勝は、天理大学ラグビー部全員と、この4年間サポートしてくださった皆さんと、今までの先輩たちが培ってくれたもの。全員がいい準備をしてくれた結果、優勝できたあと思っています。部員全員が本当によくガマンをして、周りの方に支えていただいたおかげで、ここまで来ることができました」(談話・優勝直後)

◆休止期間について

 天理大学ラグビー部では昨年8月に集団感染が起き、3週間にわたる活動休止があった。

 クラスターが発生したのは8月18日、合宿所内でのこと。夏合宿は中止となり、チーム作りの上で重要な練習試合もすべてなくなった。練習再開は9月10日。強豪にとってはなんとも痛い出来事だ。

 松岡主将は練習ができない間、神戸の自宅で、家の前の坂を走るなどしてトレーニングに明け暮れた。9月初旬からは母校・甲南中高で2週間の教育実習があった。練習再開は主将なしで迎えられた。

「僕がいない間、リーダー陣がうまくまとめてくれました。教育実習から戻ったとき、もう一度全員を集めて、練習を再開できたのは自分たちだけの力じゃない。小松(節夫)監督が周囲の厳しい声を受け止めて、いろんなところに頭を下げてくれたから。感謝の気持ちだけでは足りない、今年こそ日本一をとるために頑張っていこう・と話しました」(談話・12月)

◆辞退となった同志社への思い

 同じくコロナ禍で大学選手権を辞退することになった同志社大の仲間たちにも心を痛める。

「関西代表として3チームが大学選手権に出て、一緒に関西を盛り上げていこうと思っていたところでした。クラスターが出て練習ができなくなる辛さはよくわかる。同志社が出られない分、関西のチームとして、彼らの分まで頑張っていきたい」(談話・12月)

 NHKの放送で決勝解説に入った坂田正彰氏は、式の間も感激が止まらず男泣きする主将を見て。一言。

「私たちも、こういう明るさを持ってやっていくしかないですね。下向かずに、ひたむきに。いいキャプテンですね」

 成し遂げたものは大きい。

 天理大自身にとって初めての優勝。関西勢として36年ぶりとなる大学選手権制覇だった。

準決勝・明治戦で、がっちりと相手を受け止める松岡主将(撮影:髙塩 隆)
明治戦は、前々回決勝のリベンジとなった。今回は、昨年準決勝(14-52早大)の雪辱に(撮影:髙塩 隆)