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天理が早稲田を圧倒し悲願の日本一! 関西勢36季ぶりの全国大学ラグビー選手権制覇!

2021.01.11

チャンピオンとなった天理大学。全国大学選手権で初優勝を遂げ、歓喜(撮影:高塩隆)


 2020年度の大学ラグビー日本一を決める第57回全国大学選手権大会の決勝が1月11日に東京・国立競技場でおこなわれ、天理大学が早稲田大学を55-28と圧倒し、悲願の初優勝を遂げた。
 関西勢が大学日本一になったのは、1984年度に同志社大学が優勝して以来、36シーズンぶりとなった。

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、1月7日に政府から1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)を対象に緊急事態宣言が発令され、自粛までは求められなかったが、観客数は最大5000人かつ収容率50%以下に制限された。ただし、すでに販売済みのチケット(約1万7000枚)は適用外との政府見解を日本ラグビー協会は確認し、来場者への感染対策も徹底して決勝は開催された。

 天理は昨年8月に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、活動が大幅に制限された時期もあったが、困難を乗り越え、関西大学Aリーグで5連覇を達成。2季ぶり3度目となった全国大会の決勝でも前年度王者の早稲田を圧倒し、歓喜となった。

 天理は序盤から勢いがあった。
 前半3分、敵陣深くのブレイクダウンでLOアシペリ・モアラがターンオーバーし、キャプテンのFL松岡大和がサポートしてゴール前まで前進、密集からボールを動かし、CTB市川敬太がトライゲッターとなった。SO松永拓朗がコンバージョンを決めて貴重な2点を追加。
 10分にも敵陣深くに入ってFWが前進し、パワフルなLOモアラが強引に持っていってインゴールに押さえた。

 14点ビハインドとなった早稲田は20分、敵陣深くでフェイズを重ね、CTB長田智希のゲインでゴールに迫り、最後はPR小林賢太が突っ込み、ディフェンダーにからまれながらもグラウンディングが認められ、トライとコンバージョンで7点を奪い返した。

 だが23分、早稲田に反則があり、天理はSO松永がペナルティゴールを決めて3点を追加。

 天理はディフェンスでも早稲田にプレッシャーをかけ、ラックへの集まりも速くターンオーバーを連発して流れをよくすると、31分にも再び攻め込み、CTB市川がフィニッシャーとなって点差を広げた。

 ミスが続くようになった早稲田に対して、天理は完全に主導権を握り、ハーフタイム前には敵陣深くのスクラムからボールを動かし、レシーブしたパワフルなCTBシオサイア・フィフィタがディフェンダーを引きつけたあと、空いたスペースを黒衣の12番が抜け、CTB市川のハットトリック達成で天理は29-7として折り返した。

 天理の勢いは後半に入っても止まらず、45分(後半5分)、敵陣深くで、相手ボール投入のスクラムでプレッシャーをかけ、インゴールに転がったボールをSH藤原忍が押さえ、トライとなった。

 早稲田は52分にFB河瀬諒介の個人技でトライを奪い返したが、天理は5分後、SH藤原の中央突破からチャンス広げ、強くあたりにいったCTBフィフィタからオフロードパスをもらったCTB市川がゴールへ駆け抜け再び流れを変えた。

 天理はさらに64分、ブレイクダウンで相手の反則を引き出し敵陣深くに入ると、ラインアウトから攻めてCTBフィフィタの力走でゴールに迫り、すばやいリサイクルからLOモアラがフィニッシャーとなった。73分にもトライを追加。

 早稲田は67分と80分にトライを奪い返し執念を見せたが、ノーサイドの笛が鳴り歓喜したのは、関西の誇り高き黒衣軍、天理だった。

天理大の土橋源之助にタックルする早稲田大の古賀由教(撮影:松本かおり)

 天理大学を日本一に導いた小松節夫監督は、「いままで決勝を2回戦って、なかなか自分たちの実力を出せなかったが、今日はとにかく自分たちの力を出し切ろうと、送り出した。本当に、学生たちはハードワークして、タックルして、何回も起き上がって、自分たちの力を出してくれたと思う」と決勝を振り返り、選手たちの奮闘を称えた。

 計8トライの攻撃力もすさまじかったが、速いプレッシャーで早稲田のアタックを封じたディフェンスも指揮官は高評価。

 そして、コロナ禍のなかで苦しいこともあったが、「キャプテンを中心に本当にいいチームを学生たちが作ってくれた。自分たちで乗り越えてくれたと思う。我々だけでは到底乗り越えられなかったが、大学、天理市民のみなさんのおかげで活動を再開できた。そういう人たちにも恩返しの意味で勝つことができて、喜んでもらえるのは本当にうれしい。いろんな方にご支援いただいて優勝することができた。本当にありがとうございました」とコメントした。

 キャプテンの松岡大和は、小松監督に続いておこなわれたテレビインタビューで初優勝の感想を訊かれ、「めっちゃくちゃうれしいです!」と喜びを爆発させた。
 勝因については、「メンバー23人が体を張ったのもそうだが、今日まで本当に、メンバー外のみんなが協力して、いい準備をしてこれた結果」だと涙ながらに語り、優勝は天理ラグビー部全員で成し遂げたと強調した。
 そして、サポートしてくれた人々や先輩たちにも感謝。「この1年間はいろいろあったが、部員全員が本当にがまんして、そのなかでいろんな方にサポートしていただいて、乗り越えてこれたと思っている。大会があるかどうかわからない状況で、不安な選手もたくさんいたが、大会があることを信じて、日本一を目指して全員ががんばってきた」と、これまでの道のりを振り返った。

 天理大学ラグビー部は1925年(大正14年)創部。ついに、全国の頂点に立った。