1月9日14時5分、東大阪市の花園ラグビー場でキックオフだ。
第100回の記念大会を迎えている全国高校大会がきょう、決勝を迎える。
カードは神奈川代表・桐蔭学園と、京都代表・京都成章の東西対決となった。決戦前日の表情や談話などをお伝えする。
◆前日のメディア対応に臨んだ桐蔭学園の藤原秀之監督、佐藤健次主将、青木恵斗選手
通算8度目の決勝に臨む桐蔭学園は、終始落ち着いた雰囲気。防衛王者の貫禄をのぞかせた。
通常年は準決勝から決勝の間は中1日の日程、今年はレストが3日ある。個々のサイズや能力を蓄えた桐蔭学園にとっては好材料と言える。指揮官が触れたのは、経験だった。
「95回大会時も中3日だった経験が、今回に生きている」と藤原監督。
「準決勝翌日は休み、2日目は軽く体を動かし、今日3日目(1月8日)は、試合ですべきことの確認を行なった。雪が降ったので、90分ほどで早めに切り上げました」(同監督)
桐蔭学園は豊富な決勝経験を持つ。2005年度以来8回目の決勝。この10年では5回目、今年は3年連続決勝だ。選手たちにとっても3年連続の経験となる。
「指導陣がともに経験を積み上げているのは大きい」
藤原監督は、長年コンビネーションを培い、互いに成長してきたもう一つのチームにも触れた。FWや接点の分野を託す金子俊哉コーチ、事務方もトレーナーも務める福本剛コーチらの存在だ。
選手たちは次のように発言。桐蔭学園の充実ぶりがうかがえる。
桐蔭・NO8佐藤健次主将
「決勝の舞台に立てることに感謝。今年の状況の中で学んできたことを生かしたい。今年は試合経験も少ないことから、一戦、一戦で成長を見せることを心がけてきた。決勝もそのような成長が示せれば」
桐蔭・LO青木恵斗
「自分の強みであるアタックを前面に出して、チームの継続プレーに貢献できるようにしたい。自分が目立つとかでなくチームメートのために戦いたい」
一方、過去4強3回、初めての決勝に臨む京都成章はフレッシュだ。
湯浅泰正監督は、チャレンジャーとしてのチームのアイデンティティをリラックスした雰囲気のなか話した。
「過去、多くの強豪チームを生んだ京都の代表ですが、あまり子供たちに対してそれを強調することはありません。自分たちらしいプレーが明日もできれば」(湯浅監督)
監督歴34年目のベテランでありつつ、先達の指導者、チームに対してカウンターカルチャーを築くことで、自分たちの持ち味を磨いてきた自負がある。伝統のまち、京都の地でそれを貫いてきたのが興味深い。
「チームの原点はタックルです。伏見工業さんのような、突出したアタッキングラグビーをなんとか倒したいと考えているからだと思います。タックル、ディフェンスでならば、どうにか相手に対抗できるのではと思いやってきた。そのスタイルに確信をもてたのは、伏見さんを破って初めて全国大会に出た時でした」
ディフェンスにおいては、「早い接点」を掲げる。
「早いとこ触っとく、ということを、軸に据えてきました」
京都の中学生チームは、全国にあっても奇特なアタック能力を備えた存在だ。結束の固い京都の中学指導者たちは、日本のラグビーどころである大阪のパワアフルなスタイルに対抗するため、京都オンリーの個性を磨いてきた。その逸材たちが集まる京都強豪の高校の攻撃センスは素晴らしい。京都の高校シーンで新興チームが芽を拭くには、ディフェンスしかなかった。
成章には、いわば、全国に出るまでに蓄えた強靭な足腰がある(桐蔭学園もかつては相模台工という全国強豪に県内で鍛えられた)。
「高いアタック能力を持つチームに勝つには、ディフェンスが早い接点を求めることが大切。早く触るとはそういうことです。相手が10の力を持つなら、勢いがつく前にまず接点を取りにいく。相手の力が7や6になった瞬間なら、うちでも勝負ができる可能性が出てくる」(湯浅監督・12月上旬)
府下の戦いを想定したロジックは、そのままきょうの桐蔭学園戦にも当てはまる。
京都成章は今年、試合中の主体的な意思決定とコミュニケーションに積極的に取り組んできた。その理由は、昨年敗退時にその力不足を強く感じたからだ。昨春、感染第一波時のオンラインのセッションは、その上で有効に使うことができたという。
準決勝後は、選手たちをいったん自宅に戻す予定を変更、感染リスクを鑑みて外出禁止とした(※)。湯浅監督自身はこの3日間に、盟友でもある御所実・竹田寛行監督と連絡を取っている。決勝4度の経験を持つ竹田監督に多くを学んでいるはずだが、そこは秘中の秘だろう。
「竹田先生ですか。ラインと電話が来ましたね。内容は、楽しんでやーとのことでした」
桐蔭連覇か、成章の初登頂か。キックオフの笛を待とう。
※事実関係の誤りを修正しました
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