相手の懐へ肩を差し込む。腰を落とし、膝を深くためる。そのまま倒し切る。2020年度の大学ラグビー界にあって、相良昌彦はタックルで魅する。
身長180センチ、体重92キロの2年生は、早大の背番号6をつけて持ち味を発揮する。突進、ジャッカルでも好感触を得る。
「個人としては(状態が)上がってきて、これまでで一番、調子がいいかもしれないです」
昨季はルーキーイヤーから主力入りし、11季ぶり16度目の大学日本一を決めた。今季も前年度に続き、大学選手権決勝へ進む。1月11日、東京の国立競技場で天理大とぶつかる。
天理大は1月2日の準決勝(東京・秩父宮ラグビー場)で明大に41-15と勝っている。
早大は明大には12月6日、関東大学対抗戦Aの直接対決で14-34と屈しており、早大には決勝のカードが決まる前から「(選手権決勝で)リベンジしたい」と意気込む4年生もいた。
その敗戦時に活躍した相良は、明大はランナーがまっすぐ突っ込んでくるとあって「結構、自分のなかで得意」と自信をのぞかせていた。ただし、そもそもの部是は明大に勝つことではなく大学日本一になることだ。天理大との対戦を眼前に控え、相良はこうも述べた。
「去年の決勝は緊張しなかった。今年も緊張せず決勝を迎えられたら」
社会情勢の変化で練習期間や試合数に制限がかかった今季、相良も自らの故障で苦しんできた。
埼玉・熊谷ラグビー場での日体大戦(〇70-5)を2日後に控えていた10月16日、左足のハムストリングに肉離れを起こす。再発のリスクを避けるべく、11月中旬まで隊列を離れた。
欠場中の11月1日には、秩父宮での帝京大戦で4年の坪郷智輝が相良のつけていた6番をつけて躍動。マン・オブ・ザ・マッチを受賞した。
自分の定位置で他選手が際立つのを見て、相良は「焦りもあった」という。
すべきことはした。持久力を強化ポイントに掲げ、地面を走るのは負担がかかるからとひたすらエアロバイクを漕いだ。雌伏期間に心拍数を高めたことが、カムバック後の仕事量につながっているようだ。
復帰戦となった11月23日の慶大戦(秩父宮/〇22-11)は「自分のなかではワーストの出来」だったというが、明大戦では敗れたものの相手のNO8である箸本龍雅へ「何回も何回も映像を観て(走りの)パターンがわかっていた」と好タックルを浴びせた。
1月2日の秩父宮での大学選手権準決勝では、帝京大との再戦を33-27で制する(秩父宮)。タックルの回数、ボールを持って突進した回数はチームトップクラスだったようで、確かな手ごたえをつかんでいる。
「(明大戦では)ディフェンスがうまくいかなかった。(それ以来)ディフェンスのセット、スピードを修正しました」
今度ぶつかる天理大は複層的な攻撃ラインを適宜、変容させ、CTBのシオサイア・フィフィタら強力なランナーへ好循環のもと球を渡す。早大としては、肉弾戦での鋭い圧力で向こうの攻めのつながりを断ちたいところだ。
個人練習で「相手を仰向けにするタックル、流れを変えるジャッカル」を繰り返す相良が、要所での一撃で早大に流れを呼び込む。