ラグビーリパブリック

山形中央、17人の大勝利。昨季の大敗から「成長できた」。

2020.12.29

勝利を決め、相手チームベンチに挨拶する山形中央。右端が横尾輝主将(撮影:牛島寿人)


 大きな選手の入る1番から5番にも、ずいぶんと細身の選手が並ぶ。
 
 山形中央は、今年の全国高校ラグビー大会で最少の17名という布陣で初戦を迎えた。12月28日、大阪・東大阪市花園ラグビー場の第2グラウンドで旭川龍谷を迎える。

 スクラムは押された。時折、向こうの軽快なハンドリングとランにかき回された。しかし山形中央は、十人十色のパフォーマンスで終始、主導権を握った。

 NO8の鑓水飛暉也、SOの鑓水力暉也の兄弟は、各々の持ち場で鋭い走りを披露する。

 兄の飛暉也はスクラムサイドからのランでチャンスメイク。弟の力暉也は防御網を左斜め前方へ切り裂くプレー、タックラーをひきつけながらFBの鈴木梓太を走らせるパスで前半2分の先制トライをおぜん立てした。

 この場面以外でも、向こうの死角をえぐるパス交換、さらにはパスをもらう選手のコース取りが際立った。5-0のスコアで迎えた前半22分には、スクラムからのサインプレーでCTBの叶内周蒔が抜け出す。10-0とする。

 守っては機動力を活かす。先制トライのきっかけは、身長180センチでLOに入る吉田伊吹のカウンターラックだ。186センチと最長身のFL、菊池優希は試合終盤に自陣でこぼれ球へ飛び込む。相手の攻めを断った。

 後半15分以降に自陣深い位置でピンチを迎えるも、鑓水力のジャッカルで反則を誘った。

 ノーサイド。15-0。2004年度以来の初戦突破だ。高校から本格的にラグビーを始めた横尾輝主将は、両手を腰の前に揃えて言った。

「最近は山形県勢が勝てていなかったので、1勝できて嬉しい気持ちです。山形の新しい歴史を作っていけたと思います」

 1986年創部。数年来、少人数での活動を余儀なくされる。今季も新人戦の時期は他校との合同チームで活動した。

「ユニット(FW、BK)で練習するときもそれぞれが半分になる。スクラムも3対3、5対5で組んでいます。土日にOBの方が来て下さる時は8人で組める」

 昨季の花園の初戦では、報徳学園に5-162と大敗した。横尾主将は当時もいまの左PRとしてプレー。「大差で負けて悔しい気持ちで山形に帰って…」。地元で防御の組織を大幅に見直した。「一人ひとりが気持ちを切り替えてここまできた」とし、こう結ぶ。

「やってきたことを出し切って勝てた。達成感もすごくあります」

 あの日に圧倒した報徳学園は今回、昨季準Vの御所実に5-24と敗れている。これがトーナメント戦だ。

 山形中央の佐藤大志監督は「組み合わせ的なところが大きく影響したところがある」と認めるが、横尾主将は「自分たちは個人スキルを高める練習もやってきて…」と、あくまで自軍の歩んだ道への自信をにじませる。

「今年は去年のワールドカップ(日本大会)を観てラグビー部に入ってもらった1年生もいる。来年は自分たちの1勝、雄姿を観て入る人がいるのを楽しみにしています」

 30日の2回戦では神奈川の東海大相模とぶつかる。


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