2020年は関西学院大にとって厳しく、不本意に終わったシーズンだった。
21―28。
11月29日におこなわれた関西大学Aリーグの順位決定戦。関西学大は3位決定戦で京産大に敗れ、全国大学選手権出場を逃した。HO竹内海斗主将は悔しさを吐露する。
「僕たちは本気で日本一を狙えると思っていました。負けてからも1週間くらい負けた感じがしなくて…。まだ練習に行く感じがしたり、急に何もなくなったので落ち着かなかった」
昨季の大学選手権、準々決勝では明大と接戦を演じた(●14―22)。スクラムで優位に立ち、ディフェンスで体を張り続けた。
「今年はFWを強みとしてやってきましたし、FWは日本のどこよりも強い自負がありました」
そのFWを牽引したのがHO竹内主将だった。明大戦でも2番を背負い、後半35分までグラウンドで奮闘した。
「どんなにしんどい状況でも、最前線立って動いていた自負はありますし、そこでは誰にも負けない」
日本一のチームをあと一歩まで追い詰め、「日本一までの距離が分かった」今季だったが、京産大戦ではそのFWで苦杯をなめた。
「なかなか相手のスクラムに対して、うまいこと組めなかった。僕たちはヒットの瞬間で相手を崩すイメージで組んできたけど、ヒットの瞬間に相手に引かれて、僕たちが落ちてしまったり、引かれた分、こっちの足伸び切ってしまったりということがあった。FW起点で作っていたチームとしては、そこの強みを出せなかったのが敗因」
思わぬ敗戦だった。順位決定戦の前週におこなわれた天理大戦では後半に突き放されて17―43で敗れたものの、前半は17―14でリードしていた。手応えを感じた中での京産大戦だった。
「(天理大戦は)分析する中でも、自分たちの力を出せれば絶対に勝てるという自信がありました。僕たちは自粛期間が明けるのが遅かったけど、自分たちのできることをちゃんとやってきました。そこが出せた」
「京産戦では自分たちのマインドセットのところで劣っていました。天理戦はみんな気持ちが入っていたのに、京産戦のときはそれほどの気持ちというか、心のどこかに余裕が…。勝てるという浮ついた気持ちがあったかもしれないと、振り返れば思います」
日本一を目指したチームが大学選手権に進めなかった事実は、当然納得のいく結果ではなかっただろう。だが振り返れば、今季の関西学大は苦難の連続だった。
新型コロナウイルスの影響を受け、4月1日からチームは活動を停止。6月下旬に大学側から活動再開の許可が出るも、1時間で20人以下の活動は9月中旬まで続いた。
本格的な活動再開、つまり全体練習がおこなえたのは9月19日から。関西大学Aリーグではもっとも遅い全体練習の再開だった。11月7日の開幕に向けておこなった練習試合は、10月25日の関西大との1戦のみだ(〇26―24)。
シーズン序盤も竹内主将は苦労した。「日本一の壁を知れて、いい意味の距離がわかったけど、日が経つうちにチームのモチベーションは下がってしまった」。
そんなときはミーティングや個人面談を重ねて、原因を突き止めた。「幹部陣やコーチ陣になかなか意見を言えない感じがあったせいでモチベーションが上がっていないと感じました。そこから、うまいことコミュニケーションを取れるように、練習後に少人数トークをして、いまの悩み、課題を言える場を作った。それでチームがうまく動くようになった」。
チームとしてひとつの山を越えた矢先に、新型コロナウイルスによる自粛期間が訪れた。それでも巽中、天理高とキャプテンを務めた竹内主将は逃げなかった。
「全部が全部できないのは分かっていたので、自分たちにフォーカスしてやるところを考えた。今年はDFとFWのセットプレーはこだわってやってきたので、自粛期間中も再開後の短い期間も、そこに集中してやってこられた」
天理大、京産大と連敗でシーズンを終えたが、開幕戦の近大(〇28―14)と2節の摂南大(〇52―31)には持ち味を十分に発揮した(京産大戦でも竹内主将は2トライを挙げている)。
「全力でやる部分はチームに残せたと思うし、コミュニケーションの大切さやどうやってチームを運営することが大事なのかというのは伝えられたと思う」
卒業後は一般就職の道を選んだ。第一線でラグビーを続けるのはこれが最後だ。
「1番自分を作ってくれたのはラグビー。一生懸命やるのは当たり前で、チームの状況や周りを常に確認しながら、いろいろ考えて動いてきた。人として成長させてくれました」
後輩たちへ日本一の思いは託した。