2年連続のファイナルへ
2010年度(第90回大会)の初優勝は東福岡との両校優勝。それ以外の5度の決勝はいずれも、あと一歩で涙を飲んできた。誰もが認める実力を有しながら花園で勝ち切ることの難しさを味わってきた桐蔭学園が、第86回大会で初めて決勝に進出して以来7回目となるファイナルで、2020年1月7日、ついに悲願の単独日本一の座に就いた。
準決勝の東福岡戦では、春の大敗の雪辱に燃える相手を寄せつけず、快勝を収める。8人平均で身長180㌢、体重95㌔超の大型FWが、ブレイクダウンを制圧。参加校中屈指の得点力を誇る東福岡を1トライに抑え、2年連続のファイナル進出を決める。
際立った完成度
最後の相手は、全国選抜でも決勝を争った御所実。試合は序盤、御所実が狙い通りの試合運びで開始16分までに連続攻撃とモールで2トライを挙げ、0-14と大きく先行される展開となる。
しかし、盤石の土台の上にさまざまな選択肢を備えるチームは、この危機にも動じなかった。1PGを返して11点ビハインドでハーフタイムを迎えると、後半開始に敵陣ゴール前でFWが近場を攻め続け、LO青木恵斗が2人のタックラーを弾いて豪快にインゴールにボールを押さえる。
その後しばらくは御所実の懸命の防御を崩し切れない時間が続いたが、16分に試合を決めるビッグプレーが生まれる。SO伊藤がカウンターアタックで防御の穴を突破し、ビッグゲイン。外でパスを受けたFB秋濱悠太が右コーナーへ飛び込み、ついに15-14とスコアをひっくり返す。
勢いに乗る桐蔭学園は、23分にも18フェーズに及ぶ連続攻撃を仕留め切ってWTB西川賢哉がトライを追加。27分にはSO伊藤がDGを決めて1プレーでは追いつけない点差までリードを広げ、勝利を決定づけた。
「今年の3年生は過去2年で3位、準優勝と悔しい思いをしてきた。その経験がすべて準備に出たのかな、と思います」(藤原秀之監督)
磨き上げてきた隙のないラグビーで頂点に肉薄した御所実の戦いぶりも見事だった。結果的に勝負どころでのわずかなミスが命取りになったが、裏を返せばそれほど際どい勝負だったということでもある。4回目の決勝で悲願の日本一はならなかったものの、また一歩そこへ近づいたことを証明した。
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