前評判通りの4校が勝ち上がる
2018年度。前年度の花園上位校の多くで大幅にメンバーが入れ替わり、この年は当初から各校関係者が「どのチームにもチャンスがある」と口をそろえるシーズンになった。
◆後半7分、大阪桐蔭はPR江良楓のトライで逆転、互いを鼓舞する
選抜大会と同じ顔合わせとなった決勝。先に流れに乗ったのは、FW戦で優位に立つ大阪桐蔭だった。前半7分、ラインアウト起点の攻撃からブラインドWTB三島琳久がギャップを抜け出し、外をフォローしたFB伴井亮太が左中間に飛び込む。13分にも中盤のスクラムからBKのサインプレーで攻め込み、テンポよく継続してSO嘉納一千がフィニッシュ。一気に12-0とリードを広げた。
去年の準優勝を乗り越える
ここまで劣勢の桐蔭学園だったが、体を当てるごとに大阪桐蔭の激しいコンタクトにも対抗できるようになり、持ち味の継続力を発揮する場面が増え始める。22分にラインアウトからPR床田淳貴がトライを返すと、続くキックオフから攻撃を重ね、約80㍍を攻め切ってPR鈴木康平が左中間へ。さらに28分にもWTB佐々木隼が左スミに飛び込み、17-12と逆転してハーフタイムを迎えた。
先に2トライを挙げた大阪桐蔭にすればもったいない前半にも映ったが、綾部正史監督が「総合力は相手が上。ひっくり返されて後半というのは逆によかったかもしれないし、3本取られて浮き足立つこともなかった」と振り返ったように、チームに動揺はなかった。そしてその言葉通り、選手たちは後半に真価を発揮する。
7分、この日の焦点だったFW戦で圧力をかけ相手をゴール前に押し込み、PR江良颯が密集脇をこじ開けトライ。ゴールも決まって逆転すると、17分には敵陣22㍍内でモールを組み、BKも加わった渾身のドライブで押し切ってリードを9点に広げる。
終盤、桐蔭学園の猛攻で2点差まで追い上げられたが、最後はCTB高本幹也のビッグタックルでボールを奪取。残り時間をしのぎ切り、待望の瞬間を迎えた。
「去年の準優勝を超えるという思いだけで、この1年間を乗り切ってきた」。試合後、綾部監督はシーズンの歩みをそう振り返った。決勝で力尽きた前年の悔しさを糧に厳しい鍛錬を重ね、築き上げたスタイルをより強固なものへと成長させた。その信念と意志がもたらした、悲願の日本一だった。
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