21年ぶりの大阪頂上対決
この年は4月にフランスで行われたU18ヨーロピアンチャンピオンシップにU18日本代表が参加した影響で、開催時期が重なった春の全国選抜大会は主軸不在で臨んだチームが少なくなかった。そのため冬の花園は、全国の強豪がフルメンバーで顔をそろえる最初で最後の機会となり、例年以上に大きな期待と注目を受ける中で開催された。決勝に勝ち上がったのは東海大仰星と大阪桐蔭。地元大阪勢同士の頂上対決は、実に21年ぶりのことだった。
◆大阪桐蔭、前半終了間際にモールを押し込んでトライを決めたのは、現・帝京大ルーキー奥井章仁。当時も「1年生」
2018年1月8日。東海大仰星は3年連続7回目のファイナル進出。もっとも、そこに至るまでの道は平坦ではなかった。春の近畿大会は3位、全国選抜大会は予選リーグ敗退。夏合宿でも東福岡に完敗を喫した。
試練は花園でも続く。熊本西に苦戦。秋田工とは同点(トライ数差で勝ち上がり)。しかし、チームは変貌を遂げる。特に見事だったのは準決勝の東福岡戦だ。「ヒガシ史上屈指のスケール」とも評される相手に対し、これしかないという展開でトライ数3本対2本の勝利。湯浅大智が何度も「会心のゲームです」と繰り返すビッグパフォーマンスだった。
動じず逆転に成功
もう一方のファイナリスト、初めて決勝進出を果たした大阪桐蔭も、今大会を通して力を伸ばしたチームだった。ポイントとなったのは元日の3回戦。強力なランナーを擁する目黒学院に対し、チームの軸であるディフェンスできっちりと体を当てて快勝。準々決勝でも國學院久我山との重量級対決を力で制すると、準決勝ではPR細木康太郎らパワフルなランナーがそろう桐蔭学園にタックルまたタックルで徹底抗戦。最後は63次にも渡る相手の連続攻撃をしのぎ切り、歓喜の拳を突き上げた。
激戦区・大阪を牽引する存在となった2校が対峙した決勝は、挑戦者の大阪桐蔭が先行する流れで進む。開始5分にスクラムからのサインプレーでFL上山黎哉主将が先制トライを挙げると、10-10で迎えた30分には得意のモールを押し込み2本目のトライ。7点のリードを奪って折り返した。
しかし、東海大仰星は動じなかった。PGでスコアを10点差に広げられるも、雨が上がるや持ち前のハンドリングラグビー全開で自在にボールを動かし、相手防御を切り裂く。後半12分FB谷口宜顕、21分WTB西村高雅のトライで20-20と追いつくと、23分には裏に抜け出したSH松木勇斗をWTB河瀬がフォローしポスト下へ。鮮やかに試合をひっくり返し、頂点にのぼり詰めた。
いくつもの挫折を経験し、失敗を乗り越えてつかんだ、5回目のタイトル。最後の大舞台で最高の力を発揮するために重ねてきた準備が大きく花開いた、狙いすました優勝だった。
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