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第100回まで4日! 決勝再現⑦第96回・東福岡28-21東海大仰星

2020.12.23

前半18分にこぼれ球を拾ったCTB森勇登(現・明大4年)が先制トライ(撮影:BBM)

モスグリーンの王者

 2017年1月7日。2007年度の初優勝以来、9年間で花園を5回制するなど黄金時代を築いた東福岡。谷崎重幸前監督から藤田雄一郎監督へバトンタッチしてからも進化を続けるチームは、2016年度のハイスクールシーンでも主役を担った。2年生で高校日本代表に選出されたLO箸本龍雅主将、FL吉永純也を軸に、強靭なフィジカルと多彩な仕掛けでたたみかける戦いぶりは、春から “3冠”を意識させるほどの迫力があった。

◆東福岡のLO箸本龍雅(現・明大主将)が、東海大仰星の2人がかりのディフェンスに立ち向かう

 浜松工との初戦は大会史上最多となる139得点(当時)を挙げ、3回戦でも松山聖陵を91-0と圧倒したが、一気に厳しさが上がる準々決勝では、「やるならここしかないと思っていた」(湯浅泰正監督)という京都成章の気迫みなぎる攻守に、残り20分で12点ビハインドと追い込まれる。しかし後半14分、19分の連続トライで逆転すると、21分には2年生NO8福井翔大が50㍍を爆走。鮮やかな集中力で最初の難関を突破する。

 続く御所実との準決勝も死闘だった。前半は御所実19-5東福岡残り14分で11点差となり、「いよいよこれで決まりか」の雰囲気も漂ったが、後半20分にトライを返し4点差に詰め寄ると、24分にはLO箸本が駿馬のような走りで防御を突破し、SH隠塚翔太朗につないで逆転。残り時間を懸命の防御で耐え抜き、1点差を死守した。

強行出場の森が先制トライ

 東海大仰星との決勝は、それまでの2試合とは一変して、この年の東福岡の強みを存分に発揮する試合となった。渾身のタックルで挑みかかる相手にひるむことなく体を当て、果敢にボールを動かして仕掛ける。準決勝で負ったケガを押して出場のCTB森勇登のトライで前半を7-0で終えると、後半2分にもトライを追加し14-0に。その後、6分、10分と東海大仰星がトライを返しいったんは追いつかれたが、13分、16分とCTB堀川優が快足を飛ばしてインゴールへ飛び込み、食い下がる相手を突き放した。

 反則数はそれぞれ2ずつ。簡単にタッチに蹴り出すキックも少なく、インプレー時間が長いハイクオリティの戦いは、この年を締めくくるにふさわしい決勝だった。この10年の高校ラグビー界を牽引するライバルが、すべてを出し尽くしてぶつかった60分。ノーサイド直後にスタンドから沸き起こった拍手の大きさが、その卓越した内容を表していた。

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東福岡のLO箸本龍雅を東海大仰星は2人がかりで止めにいく(撮影:BBM)
東海大仰星のディフェンスをかわして突進するNO8福井翔大(撮影:BBM)
東福岡は2年ぶりの3冠を達成。強さを見せつけた(撮影:BBM)