ひたむきさで勝つ
節目の記念大会となった2016年度の第95回大会は、関東、近畿、中国、九州のブロック代表4校が増枠され、例年の51校から55校へと参加校数を拡大して開催された。シードも従来のA(3)、B(10)13校から、同格の9校へと縮小。本来シードされてもおかしくない学校がノーシードになったことで、1回戦から好カードが続出した。
◆桐蔭学園のLO高橋広大に東海大仰星は3人がかりのタックルで仕留めにいく
緊張感ある攻防を制す
2年前と同じ顔合わせとなった決勝。いずれもファイナルの経験が豊富で(ともに5回目)、明確な戦術、戦略とそれを遂行する地力を持つチームだけに、試合は開始直後から緊張感ある攻防が続いた。
開始3分に東海大仰星がゴール前のFW戦から先制トライを挙げるも、12分に桐蔭学園がPGを返し、以降は一進一退の展開に。20分、24分と桐蔭学園が御家芸の連続攻撃でトライを重ね17-12と逆転したが、東海大仰星も29分にゴール前スクラムからデザインされたアタックでFL眞野がインゴールへ。19-17としてハーフタイムを迎える。
ほぼ互角の戦いから流れを変えたのは、東海大仰星の対応力だった。「桐蔭学園の防御は横の動きに弱い」と感じたSO岸岡は、FWで3トライを奪った前半の組み立てから一転、後半はBK勝負へとシフトする。
この読みはズバリ当たった。3分、ラインアウトを起点にBKがサインプレーを仕掛け、WTB中孝祐がフィニッシュ。11分、20分とPGを追加して15点差までリードを広げると、桐蔭学園に1トライを返された直後の28分にもBKラインで外のスペースを攻略し、WTB中が勝利を大きくたぐり寄せるトライを挙げる。終了間際の桐蔭学園PR石田楽人のトライで6点差まで詰め寄られたものの、直後にフルタイムを迎えた。湯浅大智監督は就任3年目で2回目の花園優勝、また高校3冠は昨年の東福岡に続き2校目となった。
この年の東海大仰星、桐蔭学園はいずれも入学当初「谷間の世代」と呼ばれていたが、3年間かけて地道に力をつけ、ファイナルの舞台に立った。湯浅大智監督と藤原秀之監督が異口同音で語ったように、それぞれにとって今後のチームづくりの指針を示すシーズンとなった。
◎発売中!『高校ラグビー花園の記憶』 記憶に残る懐かしの試合がよみがえる