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第100回まであと6日! 決勝再現⑤第94回・東福岡57-5御所実

2020.12.21

前半10分にはFB高野恭二が約40㍍を走り抜いてトライ。東福岡は立ち上がりから攻撃力を爆発させた

驚異的な強さを誇示

 次元が違う。見ている誰もがそう感じる、圧巻の優勝だった。

 春の全国選抜大会は決勝で桐蔭学園を62-10と圧倒。この年に創設された7月のアシックスカップ全国7人制大会も、並いる強豪校の挑戦を退けて王座に。メンバー中、高校日本代表候補は実に11人。当然ながら冬の花園でも大本命に推された。

 だが、これほどまで飛び抜けた強さは、誰も想像できなかっただろう。

◆東福岡CTB永冨晨太郎が御所実の懸命のタックルをかわして突破する

 2015年1月7日。序盤から東福岡が激しく体を当ててコンタクト局面を制圧。開始2分のFB髙野恭二の先制トライを皮切りに自在の攻めで相手防御を次々と崩し、ディフェンスでもまったくつけ入る隙を与えない。それまでからさらに一段ギアを上げた戦いぶりで、6トライを奪う快勝を収めた。

記録づくめの戴冠

 FL古川聖人主将率いるFWが密集戦でグイグイ前に出て、できたスペースをSO松尾将太郎、CTB永冨晨太郎の長く鋭いパスで次々と攻略。前半7分にCTB萩原蓮のトライで先制すると、髙野蓮、岩佐賢人の両WTBなど決定力あるBK陣が存分に走り回ってトライを重ねる。

 全5試合の総得点298、決勝での57得点と得失点差52はいずれも大会史上最多、記録ずくめの戴冠。史上初の「高校3冠」達成は、過去4回の花園制覇と比べても随一といえるインパクトがあった。決勝を戦った御所実・竹田寛行監督の言葉が、それを裏づける。

「あんなチーム、見たことないです。いままでのヒガシとまったく違う」

 谷崎重幸監督からチームを受け継いだ藤田雄一郎監督にとっては、就任3年目での花園優勝。過去2大会はベスト8、ベスト4で敗退し、選抜大会の予選敗退など苦難も味わった。

「結果が出ないことにはここで監督は張れない。やっと監督としてのスタートラインに立てた。これで谷崎先生が作ってくれた道を、少しは広げていけるかもしれないな、と」

 ラグビーの原点である格闘技的要素で圧倒するという伝統を継承しつつ、新たなエッセンスを加えてチームを次のステージへ引き上げた。そのことを証明する、見事な優勝だった。

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東福岡CTB永冨晨太郎が御所実の懸命のタックルをかわして突破する(撮影:BBM)
前半7分にトライを決めたCTB萩原蓮は、決勝で2トライ6ゴール(撮影:BBM)
東福岡は5試合で298得点。自身の持つ記録を更新して3年ぶり5回目の優勝(撮影:BBM)
御所実も力を結集して食い止めるも東福岡の攻撃に圧倒された(撮影:BBM)