人気を誇る伝統校が復権
2013年1月7日。高校ラグビーシーンではおなじみの濃紺に赤のジャージーが、17年ぶりに全国の頂点に立った。大阪工大高時代に優勝4回、準優勝2回を数える名門の戴冠は17年ぶりで、2008年の常翔学園への校名変更後は初。
◆豪快な突進を見せたNO8桶谷宗太を3人掛かりで止める御所実(撮影:BBM)など写真3点
2年生にして高校日本代表に選出されたFB重一生、WTB松井千士を筆頭に前年度の花園4強メンバー8人が残り、当初からこの年を牽引する存在と目されていた常翔学園だったが、春先は思うように結果を残せなかった。
迎えた冬の花園はAシードとして2回戦から登場し、萩商工、佐賀工と2戦連続で完封勝ちして8強入りを決める。準々決勝ではFB松田力也率いる伏見工と一進一退の熱闘を繰り広げ、後半22分に逆転されるなど苦しんだが、28分のPGで再逆転して27-26で勝利。準決勝で東の名門、國學院久我山を圧倒し、ファイナルにコマを進める。
自慢の攻撃力が全開
決勝で対峙したのは御所実。春の近畿大会準決勝で19-21と苦杯を喫した因縁の相手だ。水も漏らさぬ組織防御が強みのチームに対し、常翔学園は立ち上がりから自慢の攻撃力を全開にして攻めた。開始から1分、5分と鮮やかな集中攻撃で10-0と一気に先行する。
しかし本当の勝負はここからだった。御所実がケガで本調子にない3年生に代えて防御力の高い2年生を投入すると、常翔学園が攻めあぐねる場面が次第に増え始める。ディフェンスで粘り強く守ることができれば、御所実の得意の展開だ。22分、御所実は初めて敵陣でのマイボールラインアウトのチャンスをつかむと、2トライを返し14-10と逆転する。
序盤の一方的な内容から一転、残り20分で追いかける状況になった常翔学園。それでも、選手たちは最後まで攻め抜く姿勢を失わなかった。FWがパワフルな縦突進で近場を削り、じわじわとゴールラインへ迫ると、最後は右オープンの大外でパスを受けたWTB松井がタックラーを振り切って右スミへ。17-14とふたたびリードを奪い、反撃を許さなかった。
決して思い通りではない展開でも最後に勝ち切れたのは、自分たちのスタイルを信じて貫けたから。野上友一監督は逆転のシーンを振り返り、「恐れずにボールをつないでくれた。あの場面であのプレーをできたことがうれしい」と歓喜に沸く教え子たちを讃えた。
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