ラグビーリパブリック

日大の長谷銀次朗が「引っ張ろう」と決意した秋。

2020.12.17

日本大学4年生の長谷銀次朗。コンタクト、タックルが強み(撮影:向 風見也)


 実直さを貫く。

 試合への意気込みを問われれば、「4年生の自覚として絶対に前に出るという思いで試合に臨んでいたので」。日大ラグビー部4年の長谷銀次朗は、確かにコンタクトの局面で「前に出る」。少なくとも、逃げずにぶち当たって相手に差し込む。

 身長178センチ、体重98キロ。大学トップレベルのFWにあっては飛び抜けたサイズではないが、力仕事の求められるLO、FLに入って役目を全うする。部内では3年の頃から「ウェイトリーダー」という役職を任され、トレーニングをする少人数グループの編成や各自のトレーニング数値や体重のチェックに時間を割く。

「なぜ(任されたか)…。ウェイトをよくするというのもあるし、担当のコーチとよくコミュニケーションを取っていたというのも理由だと思います」

 加盟先の関東大学リーグ戦1部で昨季2位に入り、今季は3位だった。12月からは大学選手権へ参戦する。2季連続だ。

 13日には東京・秩父宮ラグビー場での3回戦で福工大を108-0と制し、19日には同会場で昨季準優勝の明大とぶつかる。

 HOの藤村琉士主将は「(相手が)強いのはわかっているけど、通用する部分もある。大方の予想が向こうかもしれないですけど、それを覆せるようにやりたいですね」と意気込む。長谷もまた、最上級生として責務を果たしたい。かねてこう意気込んでいた。

「最後の年なので、目標は大学日本一。その目標に向かって全力で頑張っていきたいです。まずは試合に出続け、試合中も誰よりも身体を張ることを意識したいです」

 卒業後はまず、社会人チームでラグビーを続ける。もっとも将来的には教師となるのを視野に入れているようで、今年9月7日からの約2週間は母校の奈良・御所実高で教育実習をおこなった。

 公私ともに忙しい学生ラストイヤーは、通常と異なる出来事と多く向き合ってきた。思い出されるのは、リーグ戦の開幕前だろう。10月4日の東京・日大グラウンドでの初戦では、藤村、長谷ら4年生の多くがメンバー外となった。

 部内の規律を強化したい首脳陣の意向で、率先垂範すべき立場とされた上級生が最前線から退くこととなったのだ。

 その日は、前年度の入替戦出場校である中大に33-28と辛勝した。長谷は、自分がグラウンドに立てなかった頃の思いを述懐する。

「やっぱり、必ず勝って欲しいと(思っていました)。4年生が自覚を持って下級生に思いを託していたので、そこは、頑張って欲しいという気持ちで応援していました。その週(試合前)の練習では下級生に(すべきことを)アウトプットしていて、それを下級生がグラウンドで表せていた。(4年生同士では)開幕は下級生に任せてしまったので、次からは4年生が引っ張っていこうと話しました」

 つくづく、学生スポーツは4年生の物語である。話の続きにあたる明大戦は14時、キックオフ。

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