圧巻の展開力と驚異的な追走
2011年1月8日。第90回を記念して例年よりも4校多い史上最多の55校が参加した大会は、前年度決勝戦の再現だった。東福岡にはCTB布巻峻介、FB藤田慶和、桐蔭学園高にWTB竹中祥、FB松島幸太朗と、超高校級の好ランナーたちがそろい、試合を決めてきた。実力も接近して、紙一重の攻防になることはお互い分かっていた。
◆2011年1月の第90回大会決勝(東福岡31-31桐蔭学園)。激しい接点の攻防にも一歩も引かなかった松島幸太朗(現クレルモン・オーヴェルニュ)
前半は桐蔭が支配。キックよりもボールをつないで敵陣を目指すのが桐蔭。意図的に両エースを走らせるためのスペース作りに長けるSO小倉順平が素早い判断で動かす。WTB竹中が連続トライを奪い、19―5とリードを広げた。東福岡がモールからトライを返し、24―10として前半を終えた。桐蔭は春の選抜大会で、前半15―0から、後半に25失点して逆転負けを喫していた。桐蔭・藤原秀之監督は常々、「ヒガシ相手に3トライ差では厳しい」と話していた。後半開始直後、31―10と21点差に広げた。
死力を尽くした両チーム
最初の大きなポイントは後半7分、東福岡はFB藤田がインゴール右隅に執念のトライを挙げたが、この難しいゴールキックをFB藤田自らがねじ込んだこと。14点差となり東福岡が息を吹き返した。
24分には東福岡が得意のモールでトライ、ゴールも決まり7点差。さらに終盤には中盤ラインアウトからも、モールを組む東福岡。最後は、この密集に集中する桐蔭の防御を尻目に、途中出場のSO大政亮が大胆な移動攻撃を仕掛けてトライ。ゴールも決まり31―31と同点に追いついた。
そのままノーサイドの笛。過去2年間、公式戦負けなしの重圧があったが、東福岡LO水上彰太主将はこう話した「これほど大きな責任を背負うことはもうないと思う。すごい経験でした」。
最後に追いつかれ茫然となったが、桐蔭にとっては初優勝。東日本勢として國學院久我山高以来13年ぶりの日本一だった。春から比べれば日本一にふさわしい、可能な限りの成長を遂げても、まだ隣にはライバルがいた。
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