「3歳から始めたラグビーを、選手として終えることの寂しさはもちろんありますけど、32年間全力で走り抜けてきた。残り1シーズンしか戦う気力、体力が残っておりません。残された1シーズンをみなさんへの感謝の思いを胸に全力で戦いたい」
来年1月開幕のトップリーグ2021を最後に、現役引退を表明したFB五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)が12月16日、アクトシティ浜松にて記者会見を開いた。会見には静岡県内の報道機関のみが入場を許され、その他の報道機関はオンラインでの参加となった。
五郎丸自身が決めたというシーズン前におこなった引退発表会見。その理由をこう述べた。
「新型コロナウイルス影響で、昨年のトップリーグが6試合で終了したことが大きな要因です。もうひとつは、2015年のワールドカップ後から本当に多くの方々に応援していただき、支えていただいた。そこで、もしかしたら中断してしまうかもしれないこのシーズンを前に、しっかりとした形でご挨拶させていただき、自分のラストシーズンを迎えることが、みなさまに対しての私の考える礼儀であると考えました」
現役引退はヤマハ発動機ジュビロと2008年にプロ契約を交わした22歳のときから決めていたことだと明かした。
「契約した瞬間から35歳までは第一線で戦い抜くことを決意して、13年間その気持ちは変わらなかった。ここ数か月、ここ数年ではなく、長いスパンでこの日を迎えることになりました」
自分が第一線で戦えるのは35歳までだと22歳ながらに考え、初志貫徹した。“35”という数字を節目として設定したからこそ、ここまでの努力を重ねてこられたのかもしれない。
「アスリートというのは体力だけではなくて、気力というものも大事になってきます。その気力が衰えていることを感じ、35歳という節目で現役を退くことが自分にとっても周りにとってもベストだと感じて決断した」
五郎丸が会見中に繰り返し語ったのが、「日々の努力、夢への近道」という言葉。ラストシーズンを迎えるにあたってもこの思いは変わらない。プロ選手としての使命は全うする覚悟だ。
「後輩たちに何かを残すという考えはない。同じ現場、フィールド生きている人間ですから。上も下もないですし、まずは彼らとレギュラーをかけて争うことがプロ選手としてやるべきこと。試合のときだけでなく、日々の準備を大事にしながら努力していきたい」
「(当時)優勝したことのなかったチームで、みんなと切磋琢磨して日本一のタイトルを取りたい」とヤマハへの加入を決めた五郎丸。ヤマハ悲願となるトップリーグ制覇のラストチャンスをものにしたい。
引退後の予定については「全くの白紙」。「2つ同時に考えられるような器用な男ではない。不器用ですが目の前のことを積み上げてきたので、自分の役目を終えた後にシーズン後のことは考えたい」と話した。