自国開催となる2023年のラグビーワールドカップで悲願の初優勝を目指すフランス代表“レ・ブルー”は、過去3回の優勝を誇るニュージーランド代表“オールブラックス”と一緒のプールAに入った。1987年の第1回大会決勝(NZ勝利)、1999年大会の準決勝(フランス勝利)、2007年大会の準々決勝(フランス勝利)、2011年大会の決勝(NZ勝利)、2015年大会の準々決勝(NZ勝利)など、数々の名勝負を歴史に刻んだ因縁の両チームが、2023年大会はプールステージから観る者を興奮させる。
イタリア代表“アズーリ”も同組に入ったが、イタリアは過去ワールドカップで一度もベスト8入りしたことがなく、プールAから決勝トーナメントに進む2チームはニュージーランドとフランスが有力か。
フランスは、今年のシックスネーションズ(欧州6か国対抗戦)は2位だったが、優勝したイングランドに黒星をつけた唯一のチームだった。秋のオータム・ネーションズカップも準優勝に終わったが、決勝は先発15人のキャップ総数がわずか「68」という極めて経験が浅い布陣で臨みながら、スタメン合計「772」キャップのイングランド相手に奮闘し、延長にもつれる死闘を演じた。選手層が厚くなっている証拠だ。
2018年と2019年にワールドラグビーU20チャンピオンシップで優勝を遂げた選手など、若手が育っている。そのうちのひとりであるロマン・ンタマック(21歳)は、2019年のワールドラグビー年間最優秀新人賞(ブレイクスルー・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)を受章。今年のシックスネーションズで大会最優秀選手に選ばれたのはハーフ団でコンビを組むSHアントワーヌ・デュポン(24歳)であり、ふたりは自信に満ちている。
2019年ワールドカップでベスト8に終わったあと、ファビアン・ガルティエ ヘッドコーチ率いる新体制となり、今年のテストマッチは7勝2敗の好成績。世界ランキングは1年前の7位から4位に上昇している。
ニュージーランドは、2020年からイアン・フォスター新ヘッドコーチ、サム・ケイン新主将がリードする新体制となり、3勝1分2敗。連敗はしないオールブラックスと言われていたが、11月のトライネーションズ(南半球3か国対抗戦)でオーストラリアとアルゼンチン相手に連敗して9年ぶりの屈辱を味わい、しかも格下のはずだったアルゼンチンに初めて負けたとあって国内外から厳しい批判を浴びた。
それでも、スコッドには経験豊富なワールドクラスがずらりと並ぶ。
サントリーサンゴリアスに新加入するボーデン・バレットはワールドラグビーの年間最優秀選手賞を2回も受賞したプレーメーカーであり、日本のラグビーファンにとってはトップリーグ2021で彼の姿を見られるのは楽しみだ。
神戸製鋼コベルコスティーラーズに所属している世界最高峰LOのブロディ・レタリックは、サバティカル(充電期間)をとって今年はオールブラックスでプレーしなかったが、ニュージーランド協会とは2023年まで契約を結んでおり、ワールドカップ奪還へのキーマンのひとりとなる。
イタリアは、ヨーロッパの強豪グループとされるシックスネーションズに入っているが、その中で唯一、ワールドカップでベスト8入りしたことがない。シックスネーションズでは2015年3月から勝っておらず、27連敗中だ。
偉大な大黒柱だったセルジョ・パリッセが代表チームから退き、世界的なビッグネームはいない。替わって、29歳のHOルカ・ビジがキャプテンを務める。
今年から指揮を執る南アフリカ出身のフランコ・スミス ヘッドコーチは、グロスター(イングランド)に所属する19歳のSHステファン・ヴァーニーや、20歳のSOパブロ・ガルビシ、CTBフェデリコ・モリなど有望な若手にチャンスを与え育てており、2019年ワールドカップ経験者でプレミアシップ(イングランド最高峰リーグ)を主戦場としているWTB/FBマッテオ・ミノッツィ(ワスプス)、FL/NO8ジェイク・ポレドリ(グロスター)らが中心選手として引っ張っていく。
このプールに入る残り2チームは、アメリカ地区1とアフリカ地区1。
アメリカ地区は、2021年の北米予選で1位となったチームと南米予選の1位チームが激突し、勝った方がアメリカ地区1として出場権獲得となる。よって、アメリカ、カナダ、ウルグアイのどれかがこの組に入る可能性が高い。
アフリカ地区は、2022年のラグビーアフリカカップが予選となり、ナミビア、ケニア、ジンバブエ、ウガンダなどが出場権を争うことになりそうだ。