5大会ぶり9度目の花園出場を決めた東海大相模(神奈川)の津田将FWコーチ。
國學院久我山(東京)を19-17でしりぞけ、関東ブロックの敗者復活出場1枠を勝ち取った関東オータムチャレンジ大会の決勝戦後、こんな言葉を口にしていた。
「ここまでハマったら嬉しいだろうと思います。メンバー外の子たちには頭が上がらないです」
神奈川県予選では桐蔭学園に17-19と肉薄。全国での活躍を期す東海大相模に笑みはない
津田コーチが「ハマった」と表現したのは、第100回全国高校ラグビー大会への出場を決めた國學院久我山戦のラインアウト・ディフェンスだ。
筆者が確認した國學院久我山のマイボール・ラインアウトは11回中5回の成功に留まり、前半に至っては6回中2回だった。東海大相模のジャンパーは少なくとも前後半で4回のカットを見せていた。
勝利後、指揮官の三木雄介監督もラインアウトのディフェンスが「かなり大きかった」と振り返った。
「あれがないと今日のゲームはしんどかったと思います。津田(将)FWコーチが徹底して取り組んでくれました。メンバー外の子たちも一生懸命に練習をして、台になってくれました」
東海大仰星-東海大でプレーした津田コーチは、元HOの経験も活かして、ラインアウト分析の最終責任を負っている。対戦相手の映像資料を集めて分析し、分析結果を選手に伝える。
今年は特にラインアウト・ディフェンスに注力しているといい、17-19で敗れた県予選決勝の桐蔭学園戦でも前半20分、相手ボールのラインアウトをカットしていた。
ただ國學院久我山戦に向けては大胆な手を打った。選手に分析資料を渡して、あとは見守ることにしたのだ。
「(花園出場が決まる)大事なタイミングでしたが、久我山さんとの試合では資料だけを渡して、あとは選手に任せました。メンバー外の3年生に指揮を執ってもらい、1年生にはこの動き、2年生にはこの動き、と。今まではこれほど任せてはいませんでした」
メンバー外の選手たちは國學院久我山のラインアウトを学び、模倣し、グラウンドでラインアウト練習の相手役を演じた。
迎えた関東オータムチャレンジの決勝戦では、群馬・敷島公園サッカーラグビー場の観客席から、メンバー外の選手たちも声援を送った。彼らはラインアウトで好守を連発するチームを見て、大きな手応えを掴んだだろう。
彼らが精度向上に携わったラインアウト・ディフェンスは大一番で抜群の威力を発揮し、5大会ぶりの花園出場に大きく貢献していた。
津田FWコーチは彼らの努力を「思っていた以上に頑張ってくれた」と驚き、そして感謝の念を抱いている。
「メンバー外の子たちには、全国に行くための力になったんだと胸を張ってほしい。ここまでハマったら彼らも嬉しいだろうと思います。頭が上がらないです。あとで『ありがとう』と伝えたいと思います」
まさにチーム一丸で掴んだ、5年ぶりの花園切符だった。