日曜日の舞台となるピッチの目と鼻の先で、約2時間、汗を流した。
女子セブンズ日本代表候補の選手たちが熊谷で合宿中だ。11月27日の午前のトレーニング後,5人の選手たちが29日におこなわれる『リポビタンD presents JAPAN RUGBY CHALLENGE 2020』(熊谷ラグビー場)への意気込みを語った。
男女セブンズ代表と、女子日本代表(15人制)のセレクションマッチが実施される同日。先陣を切ってパフォーマンスを披露するのがサクラセブンズの選手たちだ(11時キックオフ)。
選手一人ひとりに思いがある。
「自分の強みであるタテのプレーで勝利に貢献したい」と話したのは黒木理帆(アルカス熊谷/立正大4年)だ。
昨年12月、ワールドラグビー・セブンズシリーズのドバイ大会(昨年12月)で右足のアキレス腱を断裂した。今回の試合は、1年ぶりの実戦となる。「2020年に予定通りにオリンピックがおこなわれていたら、(ケガが)完治せずに焦っていたはず」と語る。
1年の延期を、自分が進化する時間に注いでいる。
「(五輪で)メダルをとりたい。世界一のCTBになることが目標です。そのために、まずはチームでいちばんのCTBに」
日曜の試合では、SOとCTBの間柄で何度もプレーしてきた大黒田裕芽の名を挙げ、「よく知っている分、負けたくない」と決意を口にした。
14分の間にどれだけボールを保持し続けられるか。それが勝負を大きく分けるセブンズでは、空中戦での攻防がとても重要になる。
その局面が自身の見せ場と自覚する小笹知美(北海道バーバリアンズディアナ)は、「キックオフのチェイスからのボールの再獲得と、ボールキャリーで力を発揮したい」と話した。
「(コロナ禍という)こんな状況の中でも試合ができることに感謝して、チームとして、これまでやってきたことを出したい」
172センチの長身を活かしたプレーを期待される。2014年にサッカーから身を転じて7年が経ち、年齢的にはベテランの域に入った(29歳)こともあり、「若い選手がのびのびとプレーできる雰囲気も作りたいですね」と続けた。
その言葉に応えるかのように、大学生たちは積極的にプレーすることを誓った。
「自分の強みである思い切りのあるプレーをしたい。ラインブレークして、チームを前に出す」と話すのは大竹風美子(日体大4年)だ。
ナイジェリア人の父を持ち、陸上の七種競技でインターハイにも出場したアスリートは、「久しぶりの試合ですが、ミスを恐れずやりたい。ここがゴールではないので、チャレンジしないと」と前向きだ。
コロナ禍で延期となった五輪を、スポーツの持つ価値をあらためて強調する舞台にしたいと考えている。そこで暴れる意志を示した。
靴のサイズは22・5センチで156センチ、56キロと小柄な体躯ながらもスピードに自信を持つ原わか花(わかば/東京山九フェニックス/慶大3年)は、「強みはスピード。新幹線のように突っ走りたい」と笑顔を見せた。
チームの中核にはスピードスター、堤ほの花がいるけれど、ひるむことはない。「身長、強み、ポジションと、重なっている部分が多いのですが、勝負して勝ちたい」と言った。
「14分間に何回もトップスピードのスプリントを繰り返せるところを見せたいです。そして、トライを取り切る」
「大外勝負」を宣言した。
元日本代表HOで、神戸製鋼の黄金期を支えた英司さんを父に持つ弘津悠(はるか/ナナイロ プリズム福岡/早大2年)は、「アグレッシブなディフェンスと、(バスケットボールをやっていた経験を活かして)クリエイティブなアタックを見せたい」と話す。
ワールドラグビー・セブンズシリーズへの参戦こそ経験があるものの、国内でサクラのジャージーを着てプレーした経験はない。それだけに「不安も緊張もある」と胸中を吐露したが、「大きなステップとなる機会。私の100パーセントを出せるようにしたい」と言った。
五輪が延期となったときには戸惑った。しかし、父から「経験を積むチャンスと思おう」とアドバイスを受けて気持ちを切り替えた。その成果をプレーで示したい。
たった7人しかピッチに立てないセブンズなのに、その座を狙う選手たちはそれぞれ、バックグラウンドも強みも大きく違う。
ただでさえ「ラグビーの面白さを詰め込んだ14分間」と言われるセブンズが、『セレクション』の要素によって、さらにエキサイティングになりそうだ。