大柄で愚直なルーキーが今季初白星を控えめに喜んだ。
3シーズンぶりに関東大学リーグ戦1部へ復帰の関東学院大にあって、身長192センチ、体重95キロの矢野裕二郎は先発LOに定着している。
11月14日、埼玉・セナリオハウスフィールド三郷。専修大に48-21で勝った。
4年生HOの岡輝剛は突進とビッグタックルで光り、芳崎風太、長尾貴大という3年生CTBも攻守で身を粉にした。1対1の制圧と素早いスペースへの配球との合わせ技で、終始、優勢に立った。
昨季まで2部でプレーしてきた上級生とともに、新人の矢野もハードワーク。下働きに徹する。防御ライン上でロータックルを放ったり、接点に身体をねじ込んだり。後半17分に退くまで、大学レベルにあっては大きな身体を低く折りたたんだ。ただただ謙遜する。
「(攻撃で)前に出られない分、自分がジャッカルに入って相手の球出しを遅らせるように意識しています。(首脳陣からは)自分のやることだけをしっかりやればいいと言われています」
戦前、「あんまり声は出すなよ!」と言い合っていたベンチ外部員が歓喜に沸くなか、背番号5は静かに心でガッツポーズを作ったような。当時の心境を簡潔に後述する。
「いままでずっと負けていたんですけど、初めて勝てて、嬉しいです」
2006年度までに通算6度の大学日本一に輝いた通称「カントー」は、現体制発足から7シーズン目にして今季通算3度目の1部挑戦となる。
5歳から中学卒業まで鎌倉ラグビースクールへ通っていた矢野が「カントー」の門を叩いたのは、高校が系列の関東学院六浦高だったからだ。
「高校の監督、コーチ、親から勧められて、進学しました」
ちなみに幼少期から背が大きかったようで、中学卒業の時点ですでに「185センチ」はあったようだ。大学ラグビー界にあって希少な長身選手。さぼらぬ気質を兼ね備えているから、これから上昇したいクラブでは自ずと主力組に加われた。
在籍する経営学部では「まだ対面授業がない」ようで、社会の変化による影響は受けている。ただしラグビー部の寮生活は快適そのものだと話す。上下関係がさほどタイトではなさそうなクラブにあって、「皆とご飯を食べ、話している時が楽しい」。穏やかに笑う。
「きょうの練習きつかったね、とか、次のオフはどこへ行こうか、とか。自転車で行ける範囲のところで何をしようか、って、皆で話し合っています」
選手としての目標を聞かれれば、「やっぱり、ボールを持って前に出ること」と即答する。
「フィジカルのところでまだまだ前に出られなくて、先輩に頼っているところがある。もっともっと自分で前に出られるようにしたいです。1年生の自分が前に出ることで、先輩ももっと勢いづくと思うので」
残されたリーグ戦の試合はあと2つ。鎌倉の海が好きな19歳は、大好きな仲間のために最後まで身体を張る。