長く日本の女子ラグビーの真ん中にいる者の使命感と、ひとりのプレーヤーとしての向上心が行動の前提にある。
15人制と7人制の女子日本代表として活躍してきた鈴木彩香がイングランドのワスプス(WASPS LADIES)でプレーする。
11月15日には日本を経ち、新たなチャレンジを始める。
昨秋のイタリア・スコットランド遠征でもプレーしたCTBは31歳。いい年齢の重ね方をしている。
予定では来年の5月頃まで現地でプレーする。9月に開幕が予定されているワールドカップ(女子15人制/ニュージーランド)へ向け、心身ともに成長する。
現在、アルカス熊谷に所属する鈴木が海を渡る決断をしたのは、代表ヘッドコーチを務めるレスリー・マッケンジーの勧めがきっかけだった。海外でのプレーを提案された。
コロナ禍でいろんなことに思いを巡らせる時間があった。
自分自身、どうしたらもっと進化できるのか。アルカスや代表チームをもっと強くするには。日本の女子ラグビーの未来図も。
「体が大きく、当たりの強いラグビーをする中に身を置いて、自分の判断力やスキルをもっと高めたい。激しい競争があるチームが強くなると思っています。日本とは違う文化の中に身を置き、持ち帰ることができるものを得てきたい。将来、同じような道を歩む選手が出てきてくれたらうれしいですよね」
レスリーHCがアプローチしてくれたワスプスとコンタクトを取り、話を進めた。
太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ(中止)を終えた後のタイミングなど、もっと早い時期の渡英を考えていたが、ウイルス感染拡大の状況に計画は変わり、やっと今回の出発に漕ぎ着けた。
2018年にはニュージーランドへの短期留学も経験している。
そのときは現地でのレスリーHCの仕事ぶりを見るのが目的だった。女性コーチが男性選手をどうコーチングするのか。同HCと行動をともにして、セカンドキャリアを考える時の参考にしようと考えた。
しかし今回は、下部組織のコーチングに携わる時間も予定されてはいるが、ラグビー選手として毎日を過ごす。「プレーの引き出しを増やしたい」という意欲は、自身のためであり、チームの競争力と代表チームがワールドカップの8強入りを実現させるため。
国をまたいでの行き来は簡単ではない時期。約7か月、ワスプスでの生活に専念することになりそうだ。
とりあえずは、コーチの住まいに他の選手たちとともに住み込み、生活を始める予定。自分自身での体調管理も考慮し、セルフケアグッズも荷物に詰め込んだ。
日本代表FWの加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)がひと足先に、同じ女子プレミアシップのエクセター・チーフスに加わっている。
日本選手の対決も楽しみだ。