令和2年度(2020年度)の全国高校ラグビー大会は第100回を迎えることを記念し、各都道府県予選・ブロック予選を勝ち抜いた史上最多の63校が出場する予定で、激戦区のひとつである福岡県には2枠が与えられた。そして、福岡県予選は11月7日に博多の森陸上競技場で決勝を迎え、花園への切符をつかんだのは東福岡高校と筑紫高校だった。
東福岡高校は第1地区予選決勝で東海大学付属福岡高校を99-0と圧倒し、21年連続31回目の優勝。
筑紫高校は第2地区予選決勝で修猷館高校を31-10で下し、29年ぶり5回目の優勝で、全国大会は、第95回の記念大会枠で出場して以来、5年ぶり6回目の花園となる。
記念の100回大会で日本一を目指す東福岡は、コンタクト、スピードで圧倒し、計15トライ。最初のスクラムでいきなりターンオーバーするなどセットピースも強かった。各自が自主的にトレーニングに励むという文化が浸透している常勝軍団は、GPSを使って数値的にアドバイスしてくれる分析チームを作り、選手にオーバーワークさせないなどコンディション調整をうまくできたことも大きかった。
藤田雄一郎監督は失点ゼロで抑えたことを評価。
「FWがよく頑張ってくれた。全国を獲るにはコンタクトが強いというのは第一条件。ブレイクダウンを圧倒していくことが大きなキーポイントとなる。そこを重点的にやり続けたので、(東海大福岡の)留学生選手に対しても、BKも含めてしっかり体を当てることができたのは頼もしく思う」
花園では、まずは4年ぶりにファイナルの舞台に立つことを目指す。そのためには、今後2か月間の過ごし方が大事だと指揮官は気を引き締める。
「全国へのチャレンジ権をもらった。そこを狙っていくのが東福岡」
筑紫は、1週間前の準決勝で福岡高校相手に苦しんだが(15点ビハインドから17-15と逆転勝ち)、この経験が活きたと長木裕監督は言う。
「福高さんの伝統のタックルを見習って、決勝はゲームというよりも『戦う』ことにこだわってやろうという話をして準備をした。それが活きた前半だったと思う」
筑紫は序盤から落ち着いていた。前半4分、モールでゴールに迫り、FL高木海斗のトライで先制すると、18分にも強みとするFWで追加点。対する修猷館2年生の大型FB福島秀法が力強く駆け上がっても、筑紫は懸命に食らいついてタッチラインを踏ませるなどディフェンスでも流れをよくし、徐々にリードを拡大。後半2分には修猷館が自陣深くでパスを乱し、ルーズボールを筑紫のFL高木が足にかけて自らインゴールに押さえ、チーム5トライ目で勝利を引き寄せた。
筑紫は、新型コロナウイルスの影響によりチーム練習ができなかった期間、オンラインを活用して週3回、朝にみんなでマインドフルネス瞑想(めいそう)をした。この日の朝も7時半からみんなで実施し、気持ちを高めて決勝に臨んでいた。コロナ禍で活動を制限されたなか、例年やっていなかったことを新たに取り入れたこともプラスとなった。
もちろん、選手たちがトレーニングと食事で体を大きくし、強く鍛えたことも勝因である。
そして、強化合宿等を目的とした県外への移動が厳しい状況のなか、東福岡高校に出向いて7、8回ほど合同練習をできたことも大きかったと筑紫の指揮官は感謝する。
大きなライバルの存在。第100回大会の福岡県予選は2地区に分かれ、別々のトーナメントに振り分けられたから対戦はなかった。
だから、それも選手たちのモチベーションとなった。
「東福岡とは今回あたらんけど、花園で東福岡とやるぜ!」
花園への切符をつかんだ。全国でも、筑紫の魂を見せたい。