ラグビーリパブリック

大東大×関東学大のロスタイムは14分間。未勝利同士の激戦を当事者が語る。

2020.11.04

接戦となった大東大×関東学大。ボールを持つのは大東大の鎌田進太郎(撮影:長岡洋幸)


 今季初白星を狙う者同士の一戦はトータル94分。最後までもつれた。

 11月3日、東京・駒沢陸上競技場。関東大学リーグ戦1部の第4節があった。昇格の関東学大は、5点差を追う後半ロスタイムに自陣ゴール右で自軍スクラムを得る。

 対する大東大はさかのぼって後半23分、危険なタックルを放ったNO8のサイモニ・ヴニランギを退場処分で失っていた。

「さらにハードワークしよう。一人ひとりがさらにギアを上げないと、やられるよ!」

 この頃はまだ28-5と大きくリードしていた大東大のLO、呉山聖道ゲーム主将は、仲間をこう叱咤したものだが、結局、関東学大が後半25、27分と加点し、僅差でクライマックスを迎えたのだ。

 前線で組み合うFWの数が8対7と多い関東学大は、ヒットすれば自陣中盤まで進む。大東大のコラプシング(故意に塊を崩す反則)を誘う。

 ここで大東大は、途中出場していた右PRの四ツ屋勇樹を一時退場で失う。PRはスクラムの成立に不可欠のため、すでに退いていた先発右PRの藤井大暉が再投入される。代わりにFLの田中侑輝が退く。大東大のFWは6人となった。

 ペナルティキックから再度スクラムを選んだ関東学大は、ここでも押し込む。大東大の反則を引き出す。アドバンテージを得ながらの攻撃などを経て、あっという間に敵陣中盤まで進む。ここでも自軍スクラムに臨む。

 大東大の日下唯志監督は「6人でスクラムを組み切るのは難しい。BKを1人、減らしてでもFWを投入したかったのですが、反則が繰り返されていたので交代ができなかった」。FLのシオシファ・ラベマイ・マウ・トルがタッチライン際で待機も、ピッチには出られない。急遽、BKラインにいたCTBのペニエリ・ジュニア・ラトゥがスクラムに加わる。練習時から準備していた応急処置だ。

 大東大はこの1本を、なんとか、耐える。

 関東学大は球を出して攻める。縦の突進を重ねる。しかし最後は、大東大のジャッカルが関東学大にノット・リリース・ザ・ボール(寝たまま球を手放さない反則)をさせた。

 ノーサイド。14分にも及ぶロスタイムの末、31-26で大東大の初白星が刻まれた。

 もしもこのジャッカルがラックの成立後に繰り出されたと判定されれば、大東大が反則を取られている。クロスゲームの終盤戦におけるこの繊細なジャッジについて、敗れた関東学大の板井良太監督は「ベンチからは見づらかったですが、レフリーの判断(を尊重する)。あの時、我々に攻撃のオプションが少なかった。彼らに勇気を持って攻めさせられなかった指導者の準備不足です」。かたや勝った呉山ゲーム主将は、やや間を開けて言った。

「(詳しい状況は)見えなかったんですが、自分たちの方に(レフリーの)手があがった時は、嬉しかったです」
 
 昨季の入替戦で2部から昇格の関東学大は、10月18日の流経大戦では31-95と大差で3敗目を喫した。

 以後、板井監督いわく「身体を張り続けることを、学生たちと一緒にやってきた」。戦士たちは当日、鋭いタックルを放つ。なかでも3年生FLの山崎海、4年生NO8の尾崎遼太朗が目立った。

 後半12分までプレーした1年生LOの矢野裕二郎は、前半30分からはシンビンで一時退場も、再三にわたって肉弾戦への身体の差し込みを披露。大東大のペナルティを誘発していた。

 4年生WTBの福士萌起は後半27分に自陣22メートルエリアから一気に駆け上がるなどし、合計3トライの活躍だった。

 プレーの改善ぶりに手ごたえをつかんだだけに、WTBの萬田開人主将は「前後半とも、課題の入り(の時間帯)にやられてしまった」と悔しさもひとしお。特に悔やまれるのは、5-21とリードされていた後半8分頃の過ごし方か。

 自陣中盤でフリーキックを獲得も、その球をタッチラインの外へ直接、蹴り出してしまう。ルールに基づき、右タッチライン上の蹴った地点からの直線上の箇所に戻され相手ボールラインアウトを与えた。ここから大東大に首尾よく攻め込まれ、11分、FBの鈴木匠にとって2本目となるトライを許し、23点差をつけられてしまった。萬田はこうだ。

「フリーキックは奥に蹴ろうと考えていたのですが、テンパっていたのか、『(タッチの外へ)出してもいい』と話し合う選手が出てきた。主将としてしっかりと意思統一をするべきでした」
 
 かたや前年度4位の大東大は、春から夏に入るまで活動を制限されていた。10月の開幕までの準備期間が不十分だったことは否めないが、もう過去は振り返らない。この日まで1分2敗だった呉山ゲーム主将は、これまでの経緯を克明かつ前向きに語っていた。

「全体練習の強度は徐々に上げていき、夏合宿の部内マッチ、練習試合をしてきました。(最初は)個人、個人、意識というか、モチベーションの差があった。それでひとつになるのが難しかったのですが、いまは僕らチームリーダーがまとまって戦おう、と強い気持ちを出しています」

 特異な2020年度の大学ラグビーシーンは終盤戦に突入。各々が現実を受け入れ、各々が信じた道を突き進む。

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