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再三コンバートの明大・福田陸人、今季初黒星も頂点を目指し突進重ねる。

2020.11.02

明大の福田陸人(右)。慶大戦の前半、トライした齊藤誉哉と抱き合う(撮影:松本かおり)


 ラストワンプレーで12-13と逆転され、今季初黒星を喫した。

 11月1日、東京・秩父宮ラグビー場。昨季全国2位の明大は、前年度に大学選手権出場を逃している慶大に屈した。

 3年生FLの福田陸人は、かねて懸念していた。

「敵陣ゴール前でどうしても(トライを)取り急いじゃって、ミスをして得点機を逃した場面が多い。精度を上げればもっと得点できるチームなので、そこ(チャンスの場面での正確性)を上げたいなと」

 12-10と2点リードで迎えた後半36分頃。敵陣22メートル線付近左で自軍ラインアウトを得ながら、球を回す過程でエラーを犯す。さらに、慶大に渡ったボールを追いかける際にオフサイドの反則を取られた。

 以後、徐々に陣地を奪われ、最後は慶大に決勝ペナルティゴールを与える。ノーサイド。背番号6の福田が危惧した通りとなった。

 NO8の箸本龍雅主将も、攻撃中の接点での球出しを慶大に遅らされたのを受け「まだまだ自分たちに甘さがあった。自分たちがどうすべきかにフォーカスし、(練習で)課題を修正したいです」。福田は、戦前からプレー全般について「練習からミスが出て、終わっちゃっている」と捉えていた。

 この言葉はそのまま、2日以降に取るべき態度を示しそうだ。

「練習からもっと質にこだわってやっていければ、と思います。練習でやっていることが試合に出るので」

 頂点を目指すのが好きだ。

 小学3年の時に宇都宮ラグビースクールで楕円球と出会い、地元でもっとも強かった國學院栃木高の門を叩く。進学先を明大に選んだのは、「日本一を目指せるところがよかったので」。同じ高校の2年先輩で、尊敬する武井日向(リコー)が在籍していたことにも背中を押された。

 昨季の主将だった武井との共通点には、ポジションの変遷もあった。

 一線級にあっては決して大柄ではない2人は、大学在学中にFW第3列から最前列中央のHOへ転向。武井は1年時から主力HOとして活躍した。現在の公式記録で「174センチ、95キロ」の福田もまた、卒業後の国内トップリーグ入りを目指して身長の問われにくい働き場にコンバートしたのだ。

 ところが、HOの特殊技能に手こずった。特に空中戦のラインアウトでのボール投入では、「ちょっとでもミスれば(反則を取られる)」と無形の圧力を感じた。

 今季の始動に際し、田中澄憲監督は福田に「古巣」への復帰を打診する。ひとまず、もともとの主戦場だったFW第3列のFLでレギュラーを狙うよう勧めたのだ。

「もともといい選手。将来を考えてHOに転じましたけど悩んでいたので、FLで試合に出られるようになった方がいいのかなと。HOは、社会人になったらまたチャレンジできる」

 関東大学対抗戦が10月4日に開幕。福田は先発FLに定着する。

「緊張もあったんですけど、澄さんが強みを出して頑張れと言われて」

 守っては要所でのジャッカルで光り、球を持てば大男の懐を切り裂くように突進。相手に捕まっても前に出られるのは、ポールにくくったゴムチューブを腰にかけて足をかく個人練習のおかげだ。

「僕は低いので(突進時は)潜るプレーをする。以前は(大きな選手に)覆いかぶさられて潰れることが多かったのですが、そういうことも少なくなった」

 足腰の強さを活かし、開幕3連勝を下支えした。

「少しでも(相手から芯を)ずらしてゲインしよう…と」
 
 慶大戦でもジャッカルでピンチを救うなど気を吐いた。今季初黒星を喫してもなお、頂点を目指す態度は変えないだろう。

 さらには、「来年は(チームを)引っ張っていくことになる。だから(今年は)試合、経験を積んで成長できたら…という思いがあります」。逆境を乗り越えながら、修羅場に強いリーダーとなれるか。

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