「ふたを開けてみないとわからない」
関東大学対抗戦の開幕前に、筑波大の嶋﨑達也監督が言った。本来は未来の予想がつかないときに使う言葉だが、前後の会話からネガティブな未来を予想しているように映った。
なぜか。大学当局から本格的な活動許可が下りたのは8月11日。他大学に比べ、やや遅れたスタートになった。その上、教育実習によって多くの4年生が離脱。突貫工事によってけが人が増えてしまった時期でもあった(取材は9月11日)。嶋﨑監督の口からこうしたネガティブな情報が出るのも当然だった。
それでも開幕戦は、昨年の雪辱に燃える慶大をまたも退けた。その勝利は、対抗戦デビューのメンバーが多い筑波にあって、昨年から掲げてきた「接点」がチームの文化になっていることを証明するものでもあった。
しかし10月11日におこなわれた帝京大戦ではその「接点」で苦杯をなめた。嶋﨑監督も重いFWに対し、どこまでできるかは懸念事項であったと認める。
シーソーゲームの試合展開は開幕戦の慶大戦と似ていた。ただその内容が異なった。追いつかれた直後に突き放す慶大戦とは異なり、突き放した直後に追いつかれた。波に乗り切れず、ついには追い抜かれ、そこに食い下がることができなかった。岡﨑航大主将も悔しさを滲ませながら反省を口にした。
「自分たちのペースにできなかったところと点差の離れた状況を変えるプレーができなかった…。そこが反省点だと思うので」
突き放された後半。筑波は文字通り沈黙した。ベンチからは「筑波、トーク!」の声が飛ぶ。一方帝京は盛り上がった。ラインアウトでは全員が言葉を発してプレッシャーをかけ、高い集中力を見せた。
嶋﨑監督は開幕前にこうも言っていた。
「今年は春夏にどことも戦っていない。チームには波があって、例年は春夏を通して、悪い時にどういう行動をとって、どういうチームになりたいか議論が起きてきた。そういうプロセスがない。挫折に当たってない」
そういう意味ではやっと挫折に当たったと言える。筑波にとっては今季初めてのビハインドで戦うゲームであり、FWは平均体重で約10㌔上回る相手とコンタクトするのも初めてだった。
「本番を通して成長するのは当たり前だけど、今季はより一層そうなるかも。まだまだこれから」と嶋﨑監督。
関東大学ラグビーは始まったばかり。どのチームも1試合1試合で出た課題をどう修正するか。そして4年生がどう導いていくか。選手にとって大学ラグビーの面白いところはここからである。