来年6月に38歳の誕生日を迎える副島亀里ララボウ ラティアナラにとっては、東京オリンピックの1年延期は大きな問題だった。
「1年は結構、長い。延期が決まったとき、あきらめようかと少し考えました。でも、ここまでやってきたことを振り返って、考え直して、体がいけるならばもう1年頑張ろうという気持ちになった。それに、日本開催ということで、自分にとっても母国と言える国での開催なので大きなモチベーションになりました」
フィジー生まれ。佐賀県出身の日本人女性と結婚した縁で2009年に来日し、2013年には日本国籍を取得。7人制ラグビーがオリンピック競技となった2016年のリオデジャネイロ大会には日の丸をつけて活躍し、4位入賞という快挙に大きく貢献したひとりである。いまは東京オリンピックでのメダル獲得を目指している。
「リオのときも自分が最年長だった。次はないかなと思っていたんですが、長期的な自分の目標として東京オリンピックがあって、どれだけ体がいけるか見ながらここまでやってきたんですけど、いまのところ体はついてきている。東京で、日本の代表として舞台に立ちたい」
副島を含む7人制ラグビー日本代表候補選手たちは、10月8日から鹿児島で強化合宿をおこなっている。リオオリンピックで一緒に戦った福岡堅樹やコカ・コーラレッドスパークスのチームメイトでもある桑水流裕策などは、新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック延期が決まったあとスコッドから離脱したため、いない。鹿児島合宿期間中にオンラインでの合同取材に応じた副島は、不安はないかという質問に、こう答えた。
「もちろん、あります。でも、個々に理由がある。そこに関しては理解できるし、戦力を失ったのは確かですが、いい結果が出せるようにいまのチームで一丸となってやっています」
東京オリンピックでのメダル獲得へ向け、必要なのはガッツと強い意志だと副島は言う。
「ゲームのあらゆる面を磨かなければならない。アタックもディフェンスも。プラス、あきらめない気持ち、目標を達成する信念が必要です。いまのところ、みんな正しい方向に向かって練習できていると思います」
メダルへのチャレンジでは、副島の母国であるフィジーも強敵となるだろう。リオオリンピックの金メダルチームだ。2016年の大舞台では準決勝で対戦し、5-20で敗れている。倒す秘策はあるのだろうか?
「自分たちにフォーカスして勝ちにいくだけです。来年の東京オリンピックでフィジーと対戦することになったら、我々にとってはホームで戦うことになるのですごくアドバンテージになる。自分たちがホームということで全力を出せると思うし、相手がフィジーなら失うものはない。あきらめない気持ちで、みんなで挑みます」
現在の7人制ラグビー日本代表候補には、トゥキリ ロテやジョセファ・リリダム、セル ジョセなど、副島のほかにもフィジー出身選手がいるが、「(自分だけでなく)ほかのフィジー出身選手も日本代表に選ばれた時点で、覚悟を決めているし、全力でやっています」ときっぱり言った。
スコッド最年長のベテランは、4年前と比べて進化しているのだろうか?
「おそらく、あらゆる面で伸びたと思いますが、まだまだもっと伸ばさないといけないところはあると思って、毎日取り組んでいます。良くなっているのは、年を取っても足が速くなっていることでしょうか?」
そう言ってニッコリ笑った副島はいま、気力、体力とも充実している様子だった。