ラグビーリパブリック

筑波大は準備力で開幕戦勝利! チャンス逃した慶大は…。

2020.10.04

慶應相手に、昨季に続く白星を挙げた筑波大。厳しい練習環境を克服してこの日を迎えた(松本かおり)


 今年の大学ラグビーの公式戦で、最初に白星を記録したのは筑波大だった。

 10月4日、東京・秩父宮ラグビー場。午前11時半キックオフの関東大学ラグビー対抗戦Aの初戦で、前年度5位の慶大を30-19で破った。同4位からの躍進を目指す嶋崎達也監督は、簡潔に述べた。

「準備したことをひとつひとつ、選手が発揮してくれた。本当によく、身体、張ってくれた」 

 入口付近のゲートでの検温、手指消毒が徹底され、観客席でのソーシャルディスタンスやマスクの着用がアナウンスで求められるなか、公式で3579人の観客が集う。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で活動時間が限られたなか、筑波大は聡明だった。

「春にグラウンドに出られない時間があったので、リーダーとオンラインミーティングをして、序盤の(上位校との対戦が続く)3連戦をどう戦うかについて整理して、グラウンドに出た時は試合で使うプレーを念頭に置いて練習をした。(従来なら)2月に基礎をやるというイメージがあると思いますが、(今年は)時間がないなか『これは、この試合のこの場面でやるプレーだ』とゲームのイメージで取り組みました」

 指揮官がこう言えば、インサイドCTBで先発の岡﨑航大主将はこう続ける。

「きょうはいかに慶大の厚いディフェンスをこじ空けられるか、いかに自陣に入れないかにフォーカスしてきました。前後半、なるべく敵陣でプレーできたのがよかったです」

 リーダーの言葉通り、スカイブルーのジャージィは高い弾道のキックで首尾よく陣地を獲得。落下地点へ新人アウトサイドCTBの谷山隼大らを走らせ、そのまま捕球したり、球の落下地点でミスを誘ったり。

攻めては少機を活かす。

5点リードで迎えた後半2分には、敵陣10メートルエリア左のラインアウトから右へ展開。SHの鈴村淳史、岡﨑主将と順に繋ぎ、バトンを受け継いだ谷山がタックラーをはじいて前進する。

2人目の防御に掴まれながらバックフリップパスを放つ。最後はFBの植村陽彦が約30メートルをジグザグに走り、フィニッシュ。直後のゴール成功と相まって、17-10と点差を広げた。岡崎主将はこうだ。

「4年生が積極的に引っ張り、フレッシュな下級生にフリーで(ボールを)持たせる。そこができたこともよかったです」

当初は昨季からエース格で3年の松永貫汰がFBで先発予定も、アクシデントにより急遽、植村が繰り上がった格好。しかしその植村は、茨城・茗渓学園高3年時にユースオリンピックの7人制日本代表となった好ランナーだ。緊急登板でも輝きを放った。

17―12と差を詰められた後半20分にも、敵陣10メートル付近左中間から鋭いステップを繰り出し快走。再びトライを決め、直後のゴール成功により24―12と勝利に近づいた。嶋崎監督は安堵する。

「(ベンチ外から繰り上がった)23番の嶋田修は先週まで母校へ教育実習に行っていて、ギリギリ間に合った! 松永は週のなかばで少し痛めた部分があり、100パーセントではなかったので交代させました。ただ植村も松永と同等のランナーと評価していた。少し若いプレーをするのを心配していましたが、いいところを出してくれました」

 他方、大外の防御を破られた格好となる慶大CTBの三木亮弥副将はこう悔やんだ。

「まず立ち位置のところ(の見当を誤ったこと)で、枚数で向こうに上回られた。筑波大さんの本当に素晴らしいランナーにスペースを与えてしまった。それが、走られた要因かなと」

 守っては要所でのカウンターラックも光り、LOの中原健太副将は「チームとしてタックル後に起き上がってラックを超えていくことを意識している。やり切れた」。岡﨑主将はこうも続けた。

「練習ではBチーム(控え)の選手たちが『仮想・慶大』としていいディフェンスをしてくれていました。(本番では)想定できないことが起こると思っていましたが、それをBチームの選手が僕らに想定させてくれていた」

かたや敗れた慶大はFLの山本凱のジャッカルなどで筑波大の反則を誘発。何度もチャンスを手繰り寄せたが、敵陣深い位置での落球、ペナルティーに泣き、初戦を落とした。

 さらに好守を連発したLOの相部開哉主将は、後半3分にドクターストップがかかった。試合終了間際には、途中出場した2年生FLのアイザイア・マプスアもグラウンドに沈んだ。次戦以降のメンバー構成にも影を落とした。

しかし、敗れた栗原徹監督はスマートさを貫く。

「選手は一生懸命やってくれたと思います。次節に全力でできるよう備えたいです。チャンスでのミス、ペナルティーが多々ありました。最後の詰めのところの丁寧さ、誰かが抜けた後のサポートの遅れが要因で、どこか他人任せだった。ただ、チャンスが作れたところはポジティブに捉えています。来週(の試合で)、またチャンスを作ってスコアができるよういい準備をしたいです」

 次戦はともに11日。筑波大は昨季3位で2017年度まで大学選手権9連覇の帝京大に都内の敵地で挑む。かたや慶大は、神奈川県内の本拠地で同5位の日体大とぶつかる。