ラグビーリパブリック

優勝争い4つの視点。早の連覇か、明リベンジか。天理の初登頂は。

2020.10.03

昨年はシーズン終盤の成長力で違いを見せた早大。今季は短期決戦(撮影:福島宏治)

 シーズンの先陣を切り、10月4日にいよいよ関東から開幕する大学ラグビー。ウイルス感染拡大防止との両立を迫られる難しい今季、試されるものは何か。前例のないシーズンを、各媒体などの識者4人が占った。

総合力で、メイジが一歩リード。

野村周平 [朝日新聞]

 今季の大学ラグビーの中心に明治がいると思う。選手の顔ぶれはもちろん、練習の雰囲気がいい。3年目の田中澄憲監督は大学選手権準優勝に終わった昨季の反省を糧にチーム作りを変化。夏合宿から「競争」のマインドを浸透させ、一本目を固定せず、試合形式でバチバチとやり合わせている。

「昨季はチームの成熟が早かった。今季はチームを作り込むのではなく全体の力を上げていく」。FB雲山弘貴(3年)ら主力にケガ人はいるが、指揮官に焦りはない。

 そんな明大の壁となりそうなのが慶大、帝京大、早大か。慶大とは練習試合で対戦し「泥臭くひたむきなチームに原点回帰していた」と田中監督。昨季からのメンバーが残り、強力な新入生も加入した帝京大には「作戦どうこうで勝てるチームじゃない」と覚悟を決める。そして、早大。斎藤、岸岡、中野ら大駒は抜けたものの「チーム力は落ちていない。タレントはそろっている」。ベクトルは自分たちに向けつつ、ライバルの動向にも目を光らせる。

明大SH飯沼蓮はリザーブとして一昨季の優勝を経験(撮影:長岡洋幸)

基礎と準備と、Xファクター。

成見宏樹 [ラグビーマガジン編集部]

 ぶっつけ本番、新規DATAなしの短期決戦。一気に頂上へ駆け上がる100日レースはかなり特殊なシーズン。まず試されるのは「今あるもの」の確かさになる。

 建物でいえば基礎部分。その指標の一つが、チーム方針とメンバーの継続性だ。そして、今年どれだけ充実した準備=基礎練習と実戦練習ができたかも重要だ。

 優位を保つのは早大だろう。相良南海夫監督就任以来3季、一貫したベースはディフェンス。そして丸尾崇真主将が下級生時代からこだわるのがFWの強さだ。前8人は昨季から5人が残り、リザーブも合わせればほぼ全員に昨年からの蓄えがある。ボールを持ち続けられるチームが、アタックの精度を高めていく姿が想像できる。入れ替わったHB団の適応力に注目だ。

 プレシーズンの実戦経験ではやや後れをとる。しかし、その初戦の福島合宿・流経大戦(9月13日)ではすでに、ユニット同士の連携に、他校にはないスムーズさがあった。練習のリアリティー、部の文化がうかがえる。11月初めの4戦目、帝京大戦で強い土台を築ければ、明治、帝京、慶應、天理といった「経験または準備」の豊かなライバルたちに並ぶ。直近3年の優勝経験を持つ早大、明大、帝京大は決勝に上がれば負けにくい。そして、がちがちのしのぎ合いの中、違いを生み出すのは型破りのXファクターか。早大は新人・伊藤大祐の存在が不気味だ。勝負所で力を出し切る能力は、全大学生の脅威となりそうだ。

慶大は地道に着実に、下田グラウンドで力を蓄えてきた。写真はHO原田衛(撮影:長岡洋幸)

15人中13人が残る天理には経験値がある。

村上晃一 [ラグビー解説者]

 コロナ禍で準備不足のチームが多い中、大学日本一争いは昨季までの経験値がものをいうだろう。

 早大、明大、帝京大が優勝争いの軸になりそうだが、優るとも劣らない力を持つのが天理大だ。

 経験値という視点で見ると、2018年度は全国大学選手権で準優勝、2019年度はベスト4に進出。LO,NO8アシペリ・モアラ(3年)、SH藤原忍(4年)、SO松永拓朗(4年)、CTBシオサイア・フィフィタ(4年)らの主力選手は両方に出場しており、昨季の準決勝(対早大)の先発メンバーは15人中13人が3年生以下だった。

 8月中旬に新型コロナウイルスの陽性者が複数確認され、約1か月活動を休止したが、症状のない選手がほとんどでリカバリーは早かった。熱血漢のFL松岡大和キャプテンの下、スクラムを組み込み、パスで防御を切り裂く展開ラグビーに磨きをかける。フィフィタは、サンウルブズに参加して世界レベルの突破力を証明済み。攻撃力は関東の上位校を凌駕する。悲願の初優勝をつかむ好機だ。

スーパーラグビー規格。天理大のシオサイア・フィフィタ(撮影:早浪章弘)

最終学年にかける思い

大谷 寛 [J SPORTSプロデューサー]

 今年の覇権争いの行方を占うのに興味も時間も尽きないが、ここは最終学年である4年生たちに注目してみたい。

 早明戦での激突が予想されるのが、丸尾崇真と箸本龍雅の主将NO8対決。箸本が今季からNO8にポジションを変えたことで、トイメン対決が実現しそうだ。互いにチームを背負う生粋のリーダーだけに、この二人の直接対決には大いに注目している。

 帝京の4年生は、日本一を知る唯一の学年となった。メンバーとして優勝を経験したSO北村将大(副将)、FB奥村翔(BKリーダー)、WTB木村朋也が引っ張る、今年の帝京の巻き返しも楽しみである。

 関西王者の天理には、今年サンウルブスとしてスーパーラグビーを経験したCTBシオサイア・フィフィタがいる。副将としてどんなリーダーシップを発揮するのか興味深い。

 ラストイヤーに賭ける4年生の意地と覚悟、時として信じられない力を発揮させることがある。これこそ学生ラグビーの魅力。

 そんな彼らの姿をしっかりお伝えできるよう、我々中継スタッフも心して臨みたい。

3季前の王者は帝京大。その景色を知る4年生・奥村翔 副将(撮影:福島宏治)

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関東大学対抗戦/関東大学リーグ戦 

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