ラグビーリパブリック

頭も体も、最新バージョン。今年のメイジは賢く速く、もちろん強く。

2020.09.30

突進力前面のLOから、より機能的なバックローへ。機動力を年々上げている明大NO8箸本龍雅主将(撮影:長岡洋幸)


「たとえば、ごはんなら100グラム単位で、食べる量をコントロールしてきました」

 まるでボクサーのような緻密さ。自らの体への取り組みの一端をそんなふうに話すのは、前回の大学選手権で準優勝、王座奪還をめざす明大の、箸本龍雅主将だ。

 10月4日、待ちに待った本格的ラグビーシーズンが、まず関東の大学シーンで幕を開ける。

 紆余曲折をたどった関西大学Aリーグを含め、各校が目指すのはもちろん、大学選手権(10月末に日程発表予定)。日本一を見据えて戦う強豪校から、編集部注目の2校を紹介する。1校めは、前回、決勝で周囲の予想に反して敗北を喫した明大だ。

 まさかの展開だった。盤石のレギュラーシーズンを送り、12月の早明戦でも圧勝していた明大が、41日後の決勝で一時31点差の完敗を喫した。その雪辱のため、今年のメイジはさまざまな取り組みで力をつけている。

 まず、「体」が違う。

 各人が昨年以上に高い意識でラグビーに向き合っていることは間違いない。冒頭で紹介した主将のコメントは、部で指導を依頼する栄養士とのやりとりを指したもの。それぞれの選手のポジションや、プレーイメージまでを明確にした上で助言をもらうという。

「年間のどの時期にどんな体でいたいのか、ということも一緒に考えていただいてのアドバイス。選手の意識次第ですが、レベルが上がるたび、変われている実感があるので、(取り組みが)続きます」(箸本主将)

 たとえば、箸本選手の身長は188㌢。体重は106㌔あり、体脂肪率はわずか14%。今年は数値を保ったまま、体重を2㌔増やすのが目標だと言う。

 たった2㌔、と言うなかれ。この条件での増量は1㌔ずつが本当にしんどいという。

「1年かけて、それが精一杯です。ただ、これを、ずっと積み重ねていきます」(箸本主将)

 機能的な強さだけではなく、スピードもアップした。

 各年代の日本代表で実績を残すスピードコーチの里大輔氏を招聘し、選手たちに変化を実感させている。CTB児玉樹は、「抜けたあとのスピードが上がった」という。「自分が抜けて、そのままトライまで持っていけるような感覚」。突破力あるバックスリーに磨きがかかっていることは間違いない。

 そして、今季劇的に変わったのが、メイジの頭と口と耳だ。

 選手たちは春から徹底してラグビー戦術の知識をインプットし、夏までに何百ものQ&Aを実践し、それをフィールド場で発信する力を養ってきた。昨年もあった選手のみのミーティングは今年、大小長短あわせ何百回も繰り返されている。一つの場面を題材にして、Aチーム側、Bチーム側に分かれ持論をPCでプレゼンするなど、暗記ではなくワーク型のセッションで、ラグビーを知る、考える、伝えあうことが全員に浸透しつつある。

「インゴールで誰かが指示を出す、その時のみんなの理解度が違う。ただ、聞くだけではなくて、その意味や後ろにあることがわかっているから、応用もきくと思う」(SO山沢京平)

 プランをみんなが深く理解できている。だから、予定外の事態にも素早く対応できる。より多くのブレーンがリンクするメイジは、もう昨年のような「意外な展開」には陥らない。

 15人のラインアップは今年も、多士済々だ。

 フロントローは大きく入れ替わったが、最上級生のHO三好優作が束ねるセットピースは安定感がある。天理高校の走り切るPR「リツキ」ことルーキーPR中山律希もトップチームに絡みそう。

 LOでは、昨年からラインアウトリーダーを務める頭脳派、片倉康瑛が4年生としてFW全体をリード、相方には新人の高校代表、山本嶺二郎が名乗りを上げる。

 バックローは昨年から存在感を放つ繁松哲大(4年)ら、機能性高い選手がしのぎを削る。主将の箸本はことし、NO8でよりダイナミックな役割を果たす。

 優勝した一昨季から出場機会を持つSHは飯沼蓮(3年)。山沢京平がケガで離脱するなか、SOには1年生が入る可能性がある。180㌢、86㌔、東海大相模の池戸将太郎だ。高校でも1年時から経験を積み、戦術理解の土台は高基準。チームのニーズに噛み合った。

SO池戸将太郎は1年で紫紺デビューなるか。中学時代は大型SH(撮影:長岡洋幸)

 中盤は、中軸の森勇登(4年)と江藤良(3年)のコンビが最有力。経験豊かな巨漢CTB児玉樹に、東福岡では共同主将を務めたルーキー、廣瀬雄也も控えている。

リーダーの一人、森勇登もユーティリティに優れる。競争激しいBKは、試合ごと組み合わせの楽しみも(撮影:長岡洋幸)

 バックスリーは魅惑のスピードスターがそろった。左WTBの位置では最終学年になった石川貴大と、7人制日本代表で輝く万能選手・石田吉平が競う。右WTBはポケット・ロケット松本純弥か。FBでは昨年、サンウルブズの食指も刺激した雲山弘貴(3年)が、キックにランにと幅広く機能する。

 春からの取り組みの中身と量では大学トップレベルにある明大の初戦は立教、翌週が青学。3週目にはタフな筑波とあい見える。

「チームとして、考えていることは統一できているなと感じます」(箸本主将)

 賢く、速く、もちろん紫紺はいつだって力強く。チームには、緊急事態が続いた期間を、着実に過ごしてきた自信がみなぎっている。

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