ラグビーリパブリック

規制の中での、アマチュアラグビーイベント in ロンドン

2020.09.28

笑顔が絶えなかった参加者たち。(PHOTO: Anthony Lynn)

 9月は、イングランドのアマチュアラグビー界にとっては、翌年4月まで続くシーズンの幕開けの季節。だが、コロナウィルス感染者の増加により、地域によっては再度の都市閉鎖が行われている現状では、それどころではない。

 国内最高峰のプレミアシップは8月に無観客試合という条件で再開されたが、2部以下のプロ、セミプロリーグ、そしてアマチュアチームが所属するリーグは、9月末の時点でまだ再開の目処すら立っていない状況だ。

 そんな中、かつて日本代表の伝説的選手も数多くプレーした、ロンドン・ジャパニーズRFCが、オックスフォード、ケンブリッジ大のOBを中心に結成されたキュー・オケージョナルズと共同で、合同タッチラグビーイベントを開催した。

 イベントがおこなわれたのは、ロンドン西南部のリッチモンドにある、リッチモンド・アスレチック・グラウンド。1985年に平尾誠二氏(故人)が所属したリッチモンドFCのホームグランドとしても知られる。

『密』な状況が多発するコンタクトスポーツという特性から、他競技に比べて再開の道のりが厳しいラグビー。政府の規制に従い、ラグビー協会は国内のアマチュアラグビーに向けて活動再開へのガイドラインを発表している。
 練習は20人以下でおこなう、コンタクトプレーの練習はやらないなど、様々な規制が出されているが、タッチラグビーの実行については、正式な許可が出されている。

 イベントの指揮をとったのは2003年に外務省の任務中にイラクで凶弾に倒れた故・奥克彦氏を偲んで毎年11月、12月に実施される奥記念杯の主催者、レジ・クラーク氏だ。観戦者も含めて両チームから70人以上の参加者を集めておこなわれたこの日のイベントでは、参加者の氏名、連絡先など質問票への回答をウェブで事前におこなった。また当日は全員が簡易体温計で体温を測り、健康状態を確認した。

 タッチラグビーは、1チーム7人で行い、ロンドンジャパニーズからは3チーム、キュー・オケージョナルズからは2チームが出場した。
 優勝チームはキューのチームとなったが、勝敗はともかく、久しぶりにグラウンドで試合の雰囲気に触れた選手たちは、応援に駆けつけた家族や友人と共に楽しい1日を過ごした。

「規制の中でのラグビーイベント」というミッションを背負った実行スタッフは、試合の前後でも規制の徹底を心掛けた。
 ロッカールームに同時に入れる人数は4人まで。試合後のビールを手にした懇親も一グループ=6人までと、徹底して密を避けた。規制の遵守を徹底するための監視官もアサインされ、楽しみながらもルールを守るイベントは、合法的に盛況に終わった。

 ロンドンジャパニーズの井上拓主将は、「晴天の中、タッチラグビーとはいえ対外試合ができたことが何よりも嬉しい。本格的なラグビーの試合ができるまでもう少し時間がかかりそうだが、コロナ対策は定着しつつある。伝統の奥記念杯も何とか実行できる状況になることを祈っている」と笑顔を見せた。

 参加者の検温から『反密ルール』の遵守まで忙しく動き回ったレジ・クラーク氏は、「今後、政府及びラグビー協会の規制がどのようになるかは分からないが、こんな時だからこそ、ラグビー仲間で集まり、楽しい1日を過ごす意義がある。ルールの中で激しく、そして楽しくプレーするのがアマチュアラグビー。皆で力を合わせれば、できることはある」と語ってくれた。

 感染者数の急増から、再度の全国規模での外出規制もあり得るとされる、現在の英国。
 だが、こんな時だからこそラグビーを楽しもうというクラーク氏の言葉には、参加者たちも笑顔で納得していた。

楽しむためにルールを守った。(PHOTO: Anthony Lynn)


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