熱戦の連続で日本にラグビーブームをもたらし、6464億円という史上最高の経済効果を生んで大成功と称賛されたラグビーワールドカップ2019日本大会は、ラグビー普及の面でもすばらしいレガシーを構築したことが明らかになった。
国際統括団体のワールドラグビーは9月9日、「Impact Beyond 2019」の報告書を発表。「Impact Beyond 2019」とは、ラグビー普及などを目的に、ワールドラグビー、アジアラグビー、日本ラグビー協会、そしてアジアの22の協会が協働で取り組んだプログラムだ。アジア初開催となったラグビーワールドカップ2019の中心的プログラムであり、報告書によると、プログラムがスタートした2016年以来、アジア全土における新規参加者数は225万人に達したという。
パキスタンでは23万7000人以上、中国では約18万人、インドでは約10万6000人、また、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ネパール、スリランカ、そしてインドネシアでも数え切れないほどの人がラグビーを初体験した。
アジアにおける新規参加者のうち、43.1%は女子だったという。
この新規参加者数は競技登録者数とは異なり、タグラグビーを含めてラグビーを初めて体験した人の数となる。20万人以上を目標としていた日本だけでも100万人を超えた。
日本では、1万4552人のタグティーチャーが養成され、6616の小学校で76万9000人の児童がタグラグビーを体験したという。
日本ラグビー協会、各地域協会、各都道府県協会も自治体などと連携して普及に取り組んでおり、全国一斉ラグビー体験会を毎年春に展開し、子どもと保護者が気軽にラグビーを体験できる機会として継続している。体育授業にラグビーを導入する小学校が増え、平日のトレーニング機会を維持するため放課後プログラムも増加した。
また、ニールセン社の調査結果によれば、世界中のラグビーファンの人口は6100万人増加し、そのうち3分の2はアジアで伸びたもので、アジアのラグビーファン人口は1億4400万人になったという。
アジアはラグビーワールドカップ2019の動画視聴の20%を占め、そのなかでもラグビー伝統国ではない日本、マレーシア、スリランカが高い数値を示したデータもある。インドは、ラグビーワールドカップのフェイスブックページに4番目に最も多くの「いいね」をつけた国になった。
さらに、ラオス、ベトナム、カンボジア、東ティモール、フィリピンの厳しい環境で暮らす2万5000人の子どもたちが、ラグビーワールドカップ2019の主要慈善団体パートナーであるチャイルドファンドの「パス・イット・バック」プログラムに参加したことも大きな成果のひとつである。
ワールドラグビーはほかに「Get Into Rugby」という普及プログラムも継続しており、UAEラグビー協会は公立学校を対象にこのプログラムを実施。ラグビーを教えるため1000人以上の教師が350校から講習に参加し、その結果、学校で開催するフェスティバルやリーグの試合を通じてアラブ首長国連邦の14万8000人の生徒たちが学校での授業の一環としてラグビーを楽しんだとされる。
バングラデシュでは、79人の専任ラグビーデベロップメントオフィサーとボランティアコーチを採用。2018年、同国ラグビー協会のデベロップメントオフィサーはわずか8人だったが、2年間で素晴らしい成果を上げ、ラグビー普及に携わるスタッフは学校でのラグビーの拡大や、ラグビープログラムの継続、また100校以上の学校でラグビーチームを発足させるなど、積極的な活動をおこなっている。2016年にはわずか1700人の子どもしかラグビーをプレーしていなかったが、2019年には合計約4万人の子どもたちがプレーしたと報告されている。
ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「『Impact Beyond』の成功は、アジアラグビー、日本ラグビー協会、そして関係協会の皆さんのご尽力の証です。また、ラグビープログラムのために定期的に時間と体力を捧げて応援してくださった何千人もの世界中のボランティアの皆さまに、特に感謝を申し上げます。彼らはラグビースポーツの縁の下の力持ちです。2021年には東京でオリンピックが開催されますが、世界中でより多くのファンと参加者が私たちの愛するラグビーに関与していけるよう、今後も『Impact Beyond』の取り組みを続けます」とコメントした。
2016年のリオデジャネイロ大会からラグビーはオリンピック競技に返り咲き、エキサイティングなセブンズ(7人制ラグビー)が多くの人を魅了し、6主要国でファンが1700万人増加したと言われている。来年開催予定の東京オリンピックでは、世界中の新規ファン人口がさらに3000万人増えると見込まれている。