ラグビーリパブリック

医学部志望のビッグマン、横須賀高校3年・萩原雄也。

2020.09.02

仲間と満面の笑みを見せるビッグマン・萩原雄也(右)(撮影:横須賀高校ラグビー部)

 初のオンライン形式で行われた4回目の「Bigman&Fastman Camp」。主に高校1、2年生が選考される同キャンプだが、今回初めて高校3年生で唯一選ばれたのが、横須賀高校の萩原雄也だ。

 今キャンプから設けられた自薦枠。それを見つけた伊藤唯一朗先生が萩原に勧めた。普段は物静かな119㌔のビッグマンは応募基準の115㌔を越えていた。「全国のレベルはどのくらいなのか、”興味”がありました」。

 2年前にこのキャンプに参加したWTB/FB小林宗也の影響が大きい。1つ上の先輩である。

「同じチームにいて、本当に頼りになる先輩でした。だからこのキャンプのレベルの高さを知っていたし、野澤さん(武史・日本協会リソースコーチ)がおっしゃっていたように、ダイヤの原石と呼ばれる人たちが集まる。そういった人たちと肩を並べて交流できるのは、コロナ禍で試合が中止になっていく中で、数少ない貴重な経験になると思いました」

 応募理由になった”興味”は、将来は医者になりたいという思いからでもあった。

「ラグビーも、もちろん高いレベルに行きたいけれど、医者になる上でもラグビーをいろいろ学びたい。そういう面でも関われたらいいなと思っていました」

 自薦枠は2分以内の自己PR動画を作成しなければならない。それは高校生にとっては決して低くないハードルだ。

「自分の強みを活かせているときって試合中どんな場面だろうと考えました。チームメイトにも『僕の強みって何だと思う?』と聞きました。自分はビッグマンなので、ひとつの強みはやはりスクラム。あとボールキャリーで、相手と当たった時の強さ。この2つを中心に動画を作りました」

 まず簡単な自己紹介をして、自分の強みだと思うプレーを切り抜いてつなげた。そして最後に今後自分がどうなりたいのかをカメラにぶつけた。その思いは動画を見た野澤氏の胸に響いた。

「トップのレベルを体感したいという、このキャンプに来る目的がはっきり伝わりました。動画の中身も良く、自分のコメントもあり、プレー動画もあった。セルフプロデュースした動画を作ることの教育的価値を再認識しましたこともあり、今回参加してもらいました」(野澤氏)

 実際に選ばれたときは実感がわかなかった。でもキャンプの日が近づくと緊張した。

「始まる前は名のあるキャンプなので、変なこと発言してしまったら嫌だな、とか強豪校の選手ばかりだと不安だなと思っていました。でもグループワークの際に、まだ数か月しかラグビーをやっていない選手や、ずっとにこにこしていて楽しそうな選手など、いろいろ選手がいたので、緊張しているのは自分だけではないのかなと思って、気が楽になりました」

 参加してよかった。いろいろなことを学べた。その中でも、一番印象に残っているのは「どんなスキルも基礎があってこそ」ということ。セットプレーの細かい部分を水間良武U20代表監督に学んだ。

「自分でも意識していたつもりでしたが…。それよりもさらに細かく意識するべきことがたくさんあって、もっといろいろな視点から見ていかなければいけないと思いました」

 中学時代は吹奏楽部だった。高校入学時は85㌔。「そこそこ太ってた」。

「言い方は悪いですけど、当時の高校3年生にしつこく誘われました(笑)。でもみんな楽しそうで面白くて…」

 120㌔近くまでの増量は簡単ではないと想像したが、さすがダイヤの原石。「筋トレも頑張りましたけど、気づいたら増えてました(笑)」。

 でも楽しく、真剣に向き合ってきたラグビーはもう最後かもしれない。高校からラグビーを始めたからまだ3年目だ。でも医学部に行ったら、ラグビーができなくなるかもしれない。

「神奈川では桐蔭学園と東海大相模が強いのでまずはベスト4を目指そうとやってきたんですけど、関東大会が中止になってしまった。だから最後(花園予選)はみんなでベスト4に行きたいと思っています」

 一番の目標はチームで頼られる存在になること。どんなに高いレベルでも、社会に出ても、まず身近なところで頼られなかったら高みは目指せないと思っています。だからまずは一番近いところで熱心に努力して、頼られる選手になりたい」

 かつてファストマンでキャンプに参加し、チームから頼られる存在だった小林選手のように。今度は自分がビッグマンとしてそうありたい。

 高校で最後になるかもしれないラグビーを日々かみしめ、ビッグマンはひた走る。

セットプレーの細かい部分を教える水間良武U20代表監督