潮の香り漂う街に居を構えて16年。43年の人生のうち、3分の1以上の歳月をここで暮らす。
開放的な土地柄と愉快な人たちのことが好きだ。まもなく始める新しい生活を通して、少しでも地域に恩返しできたらいいな。
長崎北陽台高校で主将を務め、早稲田大学ラグビー部でも主将(1999年度)。リコーでも活躍し、指導者の経験も豊富な小森允紘(まさひろ)さんが、自身が暮らす街、茅ヶ崎に『ハイアルチ茅ヶ崎』をオープンさせる(9月19日プレオープン/10月1日グランドオープン)。
2016年からチェイスラグビーアカデミーも運営し、茅ヶ崎と大船で子どもたちにラグビーの魅力も伝えてきた。新たな分野で、地域の人たちの健康も支えたい。
『ハイアルチ茅ヶ崎』は、高地トレーニングを実践できるトレーニング施設だ。
日本で初めて同トレーニングのスタジオを展開する『ハイアルチ』では、低酸素環境の中でのトレーニングにより、30分で2時間分の運動効果を得られる。神奈川県では初のスタジオとなる。
特別な装置で、標高2500メートル級の山と同程度の高地環境を作り出し、使用者に提供する。
その環境にいるだけで体に負荷がかかることで、ハードな運動をしなくても高い効果を得られるのがメリットだ。血液中の赤血球が増え、スタミナ向上や持久力アップを実現。また、それだけでなく、乳酸の増加を抑制するため疲れにくい体質になる。
スタジオには、ラン&ウォークやヨガなどのスタジオプログラムが用意される。
体質改善により効率良く脂肪が燃焼され、痩せやすい体に。冷え性改善、アンチエイジング、美容など、多様な効果が期待できるほか、茅ヶ崎スタジオには小中学生プログラムも提供する。
この小中学生プログラムの用意に、小森さんの思いがにじむ。高いレベルの競技環境を求める子どもたちが過度なトレーニングをおこない、ケガに悩まされる現実を知っている。
「だから、子どもたちにも利用してもらいたいですね。効果的にトレーニングをして、ケガをしない体を作り、それぞれの競技に必要なトレーニングをやれるようになると、うまくなるし、楽しくなる」
おとなから子どもまで。アスリートからおじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、若者たちも、みんな笑顔になってほしいと思っている。
29歳まで、トップリーグのリコーブラックラムズでプレーした小森さん。自身は首の怪我で引退を決めた。だから余計に、関わる人たちのコンディションが気になる。
2014年の7月までサラリーマンも、37歳になってラグビーにどっぷり浸る生活に戻った。
「明日死んでもいい。そう思えることをしていたいな、と思って。人生、何があるか分からない。それなら後悔のないように」と思い、スーツを脱いだ。
そんな心境になったのは、サラリーマン時代に中途採用担当となったのがきっかけだった。
「中途採用を望んでいる人たちは、自分はこういうことができる、こう生きたいと、明確なものを持っていました。そういう人たちと会っているうちに、自分はどうなんだ、と考えた。やっぱりラグビーだな、と。いつどうなるか分からない人生。ラグビーに関わって生きたいと思いました」
新しく運営するスタジオで多くの人たちを笑顔にして、事業を軌道にのせた先には、茅ヶ崎のラグビーをもっと元気にしたい気持ちがある。
いま、地元の高校ラグビー部は思うように活動ができていない。自分が取りまとめ役となり、地域の高校生たちに楕円球に触れさせてあげたい。そうなれば、ラグビースクールや自身のアカデミーともつながり、道ができる。
自身のスタジオで、ラグビーでのプロ生活を終えた選手を雇用する考えもある。
茅ヶ崎駅の北口から徒歩6分。楽しいお店が並ぶエメロードを歩いていくと、国道1号線との交差点の右にスタジオはある。
明るく、開放的な空間は、実は2500メートル級の高地と同じ環境。小森さんは、そこで多くの笑顔と幸せなストーリーが生まれることを楽しみにしている。