この春、立正大学地球環境科学部地理学科を卒業して社会に出た。
卒論では、アジアの国々でスポーツが子どもにとってどういう価値を持つのか考えた。現在は、セコム株式会社の西関東本部熊谷支社で週3日働く。見積書を作成し、カメラの在庫を管理する。
女子セブンズ日本代表のバティヴァカロロ ライチェル海遥(みよ。以下、ライチェル)は、板橋有徳高校3年時からサクラのジャージーを着る。ピッチの内外でいろんな経験をしてきた。もうすぐ23歳。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて東京オリンピックが1年延期になっても、「やることは変わらない」と落ち着いている。
「延期になった当時は少し驚きましたが、準備期間が長くなったと考えています。ただ、自粛期間は予想以上に長くなった。もう少し早く(活動を)再開できると思っていました。他の代表メンバーと会いたいとウズウズしていました。以前は普通だったことが、そうではなかったと分かりました。いまの(活動を再開できた)環境に感謝しています」
8月25日から熊谷で始まった女子セブンズ日本代表候補の合宿(同27日まで)に、5人の仲間とともに参加した。トレーニング環境が「密」にならないように、候補選手たちはいくつかのグループに分かれ、時期をずらして活動している。
少人数とはいえ、チームメートと顔を合わせられる状況になったのは嬉しい。
ただ、社会の状況はなかなか好転しない。それを踏まえ、26日の練習後のオンライン取材時に言った。
「感染者数が減っていない中での活動です。アドバイスを受け、水を飲む前の消毒とか気をつけていますが、いつ感染してもおかしくない。不安と隣り合わせ、という意識はあります。いつものクセで、(練習中に)みんな寄ってきてしまう。両手をあげて手が届かない距離、ソーシャルディスタンスをとろうとお互いに言いあっています」
自粛期間中はウエートトレの器具を持ち込み、自室をジム化。所属するアルカス熊谷の田坂藍と組み、公園での練習も重ねた。
今回の合宿でも制限下でトレーニングはおこなわれている。
コンタクトプレーができるのは、まだ先。いまは防御の圧力を立てたフラッグなどに見立て、パススキルなど基礎プレーをあらためて高めている。
チームはボールを速く動かすスタイルを目指しているが、それがなかなかうまくいかない。ライチェルは、その原因を「アグレッシブなラグビーを掲げている中で、細かいミスが出る」と分析する。
「ベーシックなスキル(のレベル)をもう一度底上げしないといけないと思っています。なので、制限がかかっているいま、そこを徹底してやる。積み上げていきたい」
自分自身にもベクトルを向ける。
「突破できている一方で、14分の中に、まだ仕事量を増やせるところがある」。そこを改善していきたい」
一人ひとりの進化がなければメダル獲得には届かない。強く、そう理解している。
フィジー人の父と日本人の母の間に生まれ、明るい性格。チームのムードメーカーは、2018年の6月におこなわれたワールドラグビー女子セブンズシリーズのフランス大会でドリームチーム(ベストの7人)に選出された経験のある実力者だ。
腰の強いランからの突破で作るチャンスは、サクラセブンズに欠かせぬものとなっている。あと1年、チームも自分も目的地へ真っ直ぐ走る。