ラグビーリパブリック

レイドローに見る、トッププレーヤーの人間性。

2020.08.26

終始、真摯な態度で質問に答えたレイドロー(撮影:BBM)

 東大ラグビー部と一橋大ラグビー部が8月21日、関東大学対抗戦Bの開幕に向けたキックオフ特別セッションをオンライン上で開催した。

「ラグビーレジェンドと語る『今、僕たちができること』」と題し、ゲストで元スコットランド代表キャプテン、グレイグ・レイドローが参加した。レイドローは7月にNTTコミュニケーションズシャイニングアークスへの加入を発表している。コロナ禍でのモチベーションやリーダーシップなど、主催者の代表質問を含め、両校部員の質問に答えた。

 答えの内容もさることながら、学生たちの目に映ったのは、セッションに臨むレイドローの真摯な姿勢だ。

 セッションのはじめ、両校の歴史を聞いては深くうなずく。その後、約1時間に及ぶ質疑応答にも、「Thank you for your question」、「Thank you to very good question」と丁寧に答えていった。

 一橋大の近藤吉泰監督は「とても胸が熱くなりました。彼の実直に真摯に答えてくれている姿、トッププレーヤーの人間性に触れられたところが学生にとっては心に残る、感銘を受けたところだったと思います。今後の彼らのモチベーション、奮い立つ気持ちに必ずつながる」と話した。

 そんなトッププレイヤーとしての人間性は、次のステージに日本を選んだ理由にも表れる。

「自分の慣れ親しんだ環境でなく、新しい環境で自分を試すことが重要でした。人生は経験が一番大事。プレーヤーとして自分を高めるのも大事ですが、それと同時に人間として新しい環境に触れて成長したいと思っています」

 来日は9月を予定している。

 両校の歴史は長い。東大が1921年に創部され、来年100周年を迎える。一橋大はその一年後の1922年に創部された。両校には多方面で活躍する優秀な人材を輩出してきたプライドがある。そして、約一世紀の伝統がある。そうした歴史と誇りが今回のセッションを実現させた。

 開催にあたっては両校OBが奔走した。発起人は一橋大OBの池口徳也さん(平成4年卒)と東海林(しょうじ)一さん(昭和63年卒)、そして東大OBの上林靖史さん(平成2年卒)。

「この年になって、いかにラグビーのおかげで今の自分の人生があるかを痛感した。卒業してからも、ラグビー仲間のつながりが生まれる。この大切さを受け継いで欲しい。だから学生たちのために何ができるかというのは、自然と考えてしまうんです」(東海林さん)

 ラグビーW杯2019期間中に東海林さんが開催したイベントに、後にレイドローのエージェントを務めることになる佐藤隆俊さんが出席したことで、両者はつながった。

 東海林さんはもしかしたら、という思いで今回のセッションを佐藤さんに打診。レイドローは「即答、二つ返事でした」。

 こうして実現した特別セッションは、両校による部歌斉唱とスリーチアーズで幕を下ろした。

 特別セッションを終え、一橋大の佐々木勇気主将は「これからの活動、シーズンに向けて気持ちを高めていけるような最高の機会でした。このような状況でも最高の結果が出せるように頑張りたい」と抱負を語った。

今季への意気込みを語った一橋大・佐々木勇気主将(撮影:BBM)

 コロナ禍の中で、未だ活動が制限されている両部。

 今は何をすべきかについてもレイドローは言及した。

「世界中で先の見えない日々が続いているが、(東大、一橋大は)100年の歴史あるチームなので、そうした歴史に誇りを持って、選手たちがこれからどうやって行動で示していくか。歴史と誇りを保つことができるかどうかは選手たちにかかっていると思います」

 そしてこんなアドバイスも。

「こういった状況の中でも、できるだけポジティブな態度を保つことが重要です。ラグビーがまたできるようになった時のために、できる限りの努力を尽くすことが自分たちに今できる唯一のこと。健康に気をつけて、ラグビーがまたできる日を万全の準備をしたうえで、待つのみです」

 彼らは伝統と誇りを胸に戦う。だから絶対に最後まで諦めない。

 レイドローがそれを再認識させてくれた。

 内なる熱い闘志をぶつける日が楽しみだ。