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青森県の代替大会では、ヤマダが大勝! 青森県高校夏季大会

2020.08.03

昨年花園は初出場で2回戦へ。青森山田が県内の夏季大会を制した(撮影:青森県高体連ラグビー専門部)


 異例の「夏の頂点」には青森山田が到達した。

 7月23日から28日にかけて、青森県内の高校が集う大会が開催され、青森山田が68-0で三本木農との決勝を制して優勝した。

 前半を終えて42-0。試合直前にけが人が出るアクシデントも乗り越えて、青森山田が完勝を収めた。

「落ち着いて判断ができた」と、橋本高行監督ががんばりを認めるのはHB団だ。

 昨年、初めて県予選を突破して花園に出場した青森山田は、その花園に1年生WTBとして出場していた伊藤和樹をSOに据えている。県内ラグビースクール出身(八戸RS)の1年生SH、町井大樹がテンポよくボールをさばいて、チームはトライを量産した。

 青森山田は、昨年の花園経験からディフェンスの強化を今年のテーマの一つに掲げている。失点0には、これまでの取り組みに自信を深めることができた。(文つづく)

優勝・青森山田。橋本監督は「相手のミスに助けられた面もある」(撮影:青森県高体連ラグビー専門部)
準優勝は花園出場過去9回の三本木農。準決勝では八工大一を28-7で下した(撮影:青森県高体連ラグビー専門部)

「昨日引退を先生に伝えてきました」

江上遼太郎(左)、戸田凜太郎(右)ら八戸の校内練習(写真は6月/撮影:福島宏治)

 1回戦で、合同チームとして出場した八戸高校の戸田凛太郎さんは、この夏季大会を最後に、部活動に区切りをつけることにした。

 校内の3年生はすでに連日の講習(校内の受験勉強対策)に通い詰め、受験勉強の夏・本番の様相。凛太郎さんはチームメートと一緒に部活動との両立に努めてきたが、3月の段階から各大会の中止が相次ぎ、先が見通しづらい状況になった。

 春の総体が中止になり、県内の先生たちは代替大会について早々に話し始めていた。

「春が中止になっても、夏には花園予選がすぐやってくる。この不安定な時期に、無理に開催しなくてもいいのでは」が最初のトーン。しかし、県内にはさまざまな理由で「春引退」をする選手たちがいることが共有されると、強豪校の先生方も漏らさず賛同し「なんとか、その子たちのためにも代替大会を開こう」と素早く判断、実行した。

 受験を控えた3年生である凛太郎さんが出場した「八戸合同(八戸、名久井農、八戸工大二、八戸高専)」は1回戦で、5-24で敗れ、大会を終えた。戦った十和田工とは、個々のレベルの差を感じたという。

「試合の1週間前はすごく雰囲気が良かったのですが、きょうはまったく(チームとして)力を出せませんでした」

 凛太郎さんは大会終了後の翌週早々、同じ3年生部員と一緒に、顧問の先生、そして合同校の先生を訪ねた。今後は、勉強に専念することを報告したという。

「花園予選には出ません。周りの生徒が勉強に集中している中で、部活動と勉強と、両方を追い続けるのが、かなり厳しく、しんどくなった」

 花園予選は9月頭にはスタートするのが常だ。わずか5週間ほど。この時期の受験生にとっていかに時間が重いかを物語る。両立のためのこれまでの苦難もうかがえる。

 最後の試合では歯痒い思いをしたが、しかし、春で引退をせず、この代替大会まで突っ走ったことに後悔はないと言った。

「しんどさを感じることができたのは、夏季大会までは『両方』やろうと、自分で決めたからこそ。自分にとっては必要なことだったと、今でも思っています」

これからも、前に進むしかない。勉強一本となることで、「退路が断たれた感じ」と凛太郎さん。もう、自分には部活もあるから、という言い訳は一切通用しなくなる。ダイレクトに返ってくる勉強の結果がそのまま自分の「勝敗」になる。

「合同チームを組んできた仲間には、花園予選まで続ける選手が多い。自分はここで違う選択をしたけれど、同じチーム(合同の)の3年生に恥じないように勉強をがんばりたい」

噛みしめるように言葉を大切にして話す凛太郎さんは、これからもチャレンジャーであり続ける。そんな宣言に聞こえた。学校の枠を超え仲間とまとったジャージーは見えないが、消えない。

CTB凛太郎さん(右)は、合同チームでも主将を務めた(写真は6月/撮影:福島宏治)