異例の「夏の頂点」には青森山田が到達した。
7月23日から28日にかけて、青森県内の高校が集う大会が開催され、青森山田が68-0で三本木農との決勝を制して優勝した。
前半を終えて42-0。試合直前にけが人が出るアクシデントも乗り越えて、青森山田が完勝を収めた。
「落ち着いて判断ができた」と、橋本高行監督ががんばりを認めるのはHB団だ。
昨年、初めて県予選を突破して花園に出場した青森山田は、その花園に1年生WTBとして出場していた伊藤和樹をSOに据えている。県内ラグビースクール出身(八戸RS)の1年生SH、町井大樹がテンポよくボールをさばいて、チームはトライを量産した。
青森山田は、昨年の花園経験からディフェンスの強化を今年のテーマの一つに掲げている。失点0には、これまでの取り組みに自信を深めることができた。(文つづく)
「昨日引退を先生に伝えてきました」
1回戦で、合同チームとして出場した八戸高校の戸田凛太郎さんは、この夏季大会を最後に、部活動に区切りをつけることにした。
校内の3年生はすでに連日の講習(校内の受験勉強対策)に通い詰め、受験勉強の夏・本番の様相。凛太郎さんはチームメートと一緒に部活動との両立に努めてきたが、3月の段階から各大会の中止が相次ぎ、先が見通しづらい状況になった。
春の総体が中止になり、県内の先生たちは代替大会について早々に話し始めていた。
「春が中止になっても、夏には花園予選がすぐやってくる。この不安定な時期に、無理に開催しなくてもいいのでは」が最初のトーン。しかし、県内にはさまざまな理由で「春引退」をする選手たちがいることが共有されると、強豪校の先生方も漏らさず賛同し「なんとか、その子たちのためにも代替大会を開こう」と素早く判断、実行した。
受験を控えた3年生である凛太郎さんが出場した「八戸合同(八戸、名久井農、八戸工大二、八戸高専)」は1回戦で、5-24で敗れ、大会を終えた。戦った十和田工とは、個々のレベルの差を感じたという。
「試合の1週間前はすごく雰囲気が良かったのですが、きょうはまったく(チームとして)力を出せませんでした」
凛太郎さんは大会終了後の翌週早々、同じ3年生部員と一緒に、顧問の先生、そして合同校の先生を訪ねた。今後は、勉強に専念することを報告したという。
「花園予選には出ません。周りの生徒が勉強に集中している中で、部活動と勉強と、両方を追い続けるのが、かなり厳しく、しんどくなった」
花園予選は9月頭にはスタートするのが常だ。わずか5週間ほど。この時期の受験生にとっていかに時間が重いかを物語る。両立のためのこれまでの苦難もうかがえる。
最後の試合では歯痒い思いをしたが、しかし、春で引退をせず、この代替大会まで突っ走ったことに後悔はないと言った。
「しんどさを感じることができたのは、夏季大会までは『両方』やろうと、自分で決めたからこそ。自分にとっては必要なことだったと、今でも思っています」
これからも、前に進むしかない。勉強一本となることで、「退路が断たれた感じ」と凛太郎さん。もう、自分には部活もあるから、という言い訳は一切通用しなくなる。ダイレクトに返ってくる勉強の結果がそのまま自分の「勝敗」になる。
「合同チームを組んできた仲間には、花園予選まで続ける選手が多い。自分はここで違う選択をしたけれど、同じチーム(合同の)の3年生に恥じないように勉強をがんばりたい」
噛みしめるように言葉を大切にして話す凛太郎さんは、これからもチャレンジャーであり続ける。そんな宣言に聞こえた。学校の枠を超え仲間とまとったジャージーは見えないが、消えない。