ラグビーリパブリック

「アクティブかつポジティブに」 W杯見据える女子15人制選手たちがオンラインキャンプ実施

2020.07.29

オンラインキャンプのスクリーンショット(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)


 来年9月、10月にニュージーランドで開催予定のラグビーワールドカップ2021(女子大会)をビッグターゲットに、まずは2大会連続の出場権獲得を目指す女子15人制日本代表の候補選手たちが、活動を再開した。
 新型コロナウイルス感染に注意しながら、物理的に集まっておこなう合宿ではなく、オンラインでのリモートキャンプを実施している。強化選手とTID選手(国際競技力向上を目的に、ジュニア・ユース世代を対象に次世代の人材発掘と育成を図るプログラムによる参加選手)がリストアップされ、FW23人が7月27日~30日、BK22人が8月1日~4日にかけ、フィジカルトレーニングから座学までさまざまなセッションをおこない、4日間で精神、身体、技術、戦術を磨く。
 初日は朝11時から夜9時までおこなわれた。

 レスリー・マッケンジーHC(ヘッドコーチ)は4か月ぶりとなる今回の合宿について、リモートというオンラインキャンプという形にしたのは簡単な決断ではなく、さまざまな議論があったと明かす。
「ただ、現時点ではこれが一番安全であり、みんなが安心して参加できる形であることも事実。自分たちがおこなった決定によって何か悪い影響が世の中に出てしまうのは絶対避けたいというのは我々も敏感なところだった。こういった形にしたことによって、良かったことももちろんあって、リハビリ中の選手や、けがから復帰したての選手も今回のメンバーに加わることができたので、その点は良かったと思う」

レスリー・マッケンジーHC。3月の合同合宿以降も帰国せず、そのまま日本に滞在している

 通常の練習が困難な現状、自分たちは何をすべきかというところに着眼点を置き、アクティブかつポジティブに乗り越えたいと指揮官は言う。
「我々がやりたいプログラムから逸脱しないことが非常に大切。テーマをきちんと保ちながらプログラムをどう進めていくかというのが重要なので、より良い内容にしていくのがすごく大事だと思っている」

 コンタクト強化を重視するマッケンジーHCにとって、そういう部分のフィジカルトレーニングができないのはつらいところだが、その代わり、これを機会に深堀した議論をみんなですることができる、とポジティブにとらえている。
「それにより、選手たちのゲームの理解をより深めることにもなり、個人個人がこれまで無意識のなかで持っていた思考やクセを洗い出すこともあると思う。物理的に集まる合宿と同じくらい、いいこともたくさんあると思っている」

南早紀キャプテンは自宅から参加

 南早紀キャプテンも、オンラインという形だが全員が顔を合わせて合宿ができるということをポジティブにとらえている。
「オンラインを通じてディスカッションやミーティングを重ねることによって、お互いの普段知れない面を知るいい機会になるんじゃないかと思う」

 当初、今年3月に予定されていたワールドカップ2021のアジア予選は、5月に変更になり、それも延期となった。いつアジア予選を開催するかはまだ決まっておらず、選手たちには不安も生じているはずだ。
 しかし南は、「日程が延びたとしても自分たちの目標を達成することには変わらない。期間が延びた分、逆に準備する時間が増えたと思って、ポジティブにとらえてマインドセットしていた。(自粛期間中)ラグビー自体はできていないが、トレーニングの観点では、走ったり、ウエイトトレーニングが重点的にできる期間になったので、逆に自分自身も体を大きくできたし、コンディションも上がってきているのでいい状態だと思う。基礎の部分を上げるというのは私を含め、チーム全員が取り組んできたことだと思う」と前を向く。

 マッケンジーHCも「見通しが立たないというのは受け入れなければならない。いつになるのかというのを考えすぎると、自分たちを苦しい状況にしてしまうので、いま自分たちが練習できる環境があること、そして強化することができるチームがあること、そういう自分たちがコントロールできるものを目の前に見据えながら、いまやっていくことが大事」と語る。

 自粛期間中、海外にいるコーチたちとのコミュニティーで情報を共有をしたり、ディスカッションをして充実した時間を過ごせたというマッケンジーHC。選手たちの心構えや考え方も進化したはずと期待しており、いい形で進んでいた強化はいったん止まったが、そのときの温度感を取り戻しながらこれからの強化を進めていきたいと話した。

画面を通じて指示に従い、さまざまなセッションを実施(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)

 今回のオンラインキャンプに参加するメンバーは以下のとおり。

<女子15人制合同オンラインキャンプ 参加メンバー>

【FW:強化選手】
五十嵐裕佳(名古屋レディース)、岡田恵梨香(神戸ファストジャイロ)、齊藤聖奈(MIE WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB PEARLS)、櫻井綾乃(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、鈴木実沙紀(東京山久フェニックス)、谷口琴美(MIE WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB PEARLS)、玉井希絵(MIE WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB PEARLS)、永井彩乃(YOKOHAMA TKM)、星野恵(自衛隊体育学校)、マテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェ(ナナイロプリズム福岡)、南早紀(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、用貝涼乃(神戸ファストジャイロ)

【FW:TID選手】
牛嶋菜々子(日本体育大学)、加藤幸子(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、金芳歩(追手門学院大学)、小鍛冶歩(Hanazono Hollyhocks)、小西想羅(横河武蔵野アルテミ・スターズ/青山学院大学)、小牧日菜多(日本体育大学)、佐藤優奈(東京山九フェニックス)、永岡萌(RKUラグビー龍ケ崎GRACE)、永田虹歩(国際武道大学)、細川恭子(日本体育大学)、吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/立正大学)

【BK:強化選手】
庵奥里愛(MIE WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB PEARLS)、小野ゆき(ながとブルーエンジェルス)、葛西杏奈(自衛隊体育学校)、阪本結花(YOKOHAMA TKM)、鈴木彩香(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、谷口令子(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、名倉ひなの(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、野田夢乃(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、平野恵里子(YOKOHAMA TKM)、平山愛(自衛隊体育学校)、古田真菜(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、本間美月(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)、山本実(MIE WOMEN’S RUGBY FOOTBALL CLUB PEARLS)

【BK:TID選手】
阿部恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/立正大学)、今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/立正大学)、内海春菜子(RKUラグビー龍ケ崎GRACE)、大塚朱紗(RKUラグビー龍ケ崎GRACE)、小林花奈子(日本体育大学)、高木萌結(横河武蔵野アルテミ・スターズ/青山学院大学)、津久井萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ/青山学院大学)、西村蒼空(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/立正大学)、堀毛咲良(追手門学院大学)