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男子7人制日本代表候補が4か月ぶりに合宿 東京五輪へ向け岩渕HCはレメキ招集に前向き

2020.07.25

東京オリンピックへ向け男子セブンズ日本代表を鍛える岩渕健輔ヘッドコーチ。オンライン取材の映像写真


 2021年に開催延期となった東京オリンピックまであと1年。
 新型コロナウイルス感染に注意しながらトレーニングを再開し、7月25日から2か所(東京、大分)に分かれて候補選手たちの強化合宿を始めた男子セブンズ(7人制ラグビー)日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチがオンラインで合同取材に応じた。

 6月29日から7月18日にかけて全国5か所(北海道、東京、名古屋、大阪、福岡)に分かれて少人数での日帰り練習はおこなわれていたが、宿泊をともなう合宿は4か月ぶり。感染症の専門家のアドバイスも受けながら、グラウンドやジム以外でも新型コロナウイルスへの対策を十分にして、安全第一で進めていく。

「オリンピックが1年延期となり、選手のメンタル面をいかにサポートしながら、もう一度前へ進めるかを図った」という岩渕ヘッドコーチ。「メンタル的にもフィジカル的にもチームにとって非常に大きな試練。これはオリンピックを目指している世界中のすべてのアスリートが直面している課題で、我々も前向きに乗り越えていきたいと強く思っている」

 7月28日まで予定されている今回の合宿では、選手のフィジカルの向上をおもな目的とする。「戦術的なことよりは、体力的なところを戻すことを優先したい」と指揮官は言った。コンタクトをともなう練習はしないが、少しずつ練習の強度を高めていく予定だ。

7月25日に始まった強化合宿に参加している小澤大(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)

 目標とする東京オリンピックでのメダル獲得へ向け、今後、貴重な強化の場となるのが、強豪国と一緒に世界中を転戦するワールドセブンズシリーズ。男子セブンズ日本代表は昇格をかけた大会を勝ち抜きコアチームとして来季シリーズに参加する。
 例年、12月上旬(または11月下旬)から6月上旬(または5月下旬)にかけ約半年間にわたって開催されるワールドセブンズシリーズは、コロナ禍、来季のカレンダーはまだ決まっておらず、不透明な状況だが、岩渕ヘッドコーチはスケジュール通り開催されない場合も想定して強化計画を立てていくことが大事だと語った。
「国際的な移動が制限されているなか、(日本からの渡航者に対して)到着してから2週間の自主隔離がなく受け入れてくれる国も出てきているので、すでにいくつかの国と協力について具体的な会話を始めている。そういう話をしていても、それができるかどうかは今後の状況にもよるが、なるべく目標を立てて、選手たちがそこに向かっていけるような強化計画にしていきたい」

 東京オリンピックが1年延期になったことで、前回の2016リオ・オリンピックでキャプテンを務めてベスト4に導いた桑水流裕策や、経験豊富な橋野皓介、山内俊輝が第二次オリンピックスコッドから離脱し、医学の道に進むことを選択したワールドカップ2019ヒーローの福岡堅樹も東京オリンピックを断念したが、これについて岩渕ヘッドコーチは、影響は大きいことを認める。
「しかし、チームとしては前に進んでいかなければいけない。代表チームというのは、どんな代表チームでも人が替わっていくものだと思うので、どのような状況になっても、いま一緒に戦える選手で前に進んでいこうと考えている」

 リーダーシップについては、2年くらい前から、ベテランやそれまで中心にやってきた選手だけではなく、若手にも自覚をもってチームを引っ張ってもえらえるように進めてきた。着実に経験を積んでいる選手たちが、いなくなった選手たちの穴を埋めるような活躍をする存在に1年後にはなってくれると指揮官は期待している。
「福岡は非常に能力が高い選手だと思うし、オリンピックに向けても戦力のひとりになりうる存在だったが、彼に匹敵するような能力のある選手はたくさんいると思っている。明日、明後日にも、と急には難しいかもしれないが、1年後に向けて、オリンピックの舞台でも活躍できるような選手を育てていきたい」

将来、追加招集の可能性があるレメキ ロマノ ラヴァ。2016リオ・オリンピック経験者(Photo: Getty Images)

 オリンピックまで1年時間が増えたことにより、候補選手の見直しは当然おこなわれる。
「いまはトレーニングで絞り込むような段階には全然来ていない。選手には焦ってほしくないし、少なくとも11月の終わりまではいまのメンバーのままでいくことを想定している」
 そう語った岩渕ヘッドコーチだが、新しい選手の補充については「門を閉じることは一切ない」とも言っており、いろんなチームや選手と話をしていることを明らかにした。

 前回のリオ・オリンピックに出場したメンバーのひとりで、15人制日本代表として昨年のワールドカップでも活躍したレメキ ロマノ ラヴァが東京オリンピックの代表候補に追加されるのではないかと噂されているが、それについて訊かれた岩渕ヘッドコーチは、「(レメキは)7人制の世界でも実績があるので、力になってくれる選手だと思っている。彼自身は移籍したので(Honda HEAT→宗像サニックスブルース)、話は丁寧に、状況に応じて進めていきたい。積極的に7人制に参加してくれるようであれば、ぜひやってもらいたいと思っている」と答えた。

 そのほか、今回の合宿には石田吉平(明治大学)、ティモ・スフィア(朝日大学)、カヴァイア・タギベダウア(白鷗大学)といった学生候補が参加していないが、これは新型コロナウイルスの影響で学業の問題が生じ、所属大学でのトレーニングがなかなかできていないという事情も考慮して招集しなかったとのこと。彼らは候補選手のままで、家庭の事情等により今回の合宿に不参加となった外国出身の選手についても、今後の状況次第で招集される可能性はある。

 岩渕ヘッドコーチ自身は、日本ラグビー協会の専務理事も兼任している身。東京オリンピックが1年延期となり、男子セブンズ日本代表ヘッドコーチの職を続投するかどうかは9月の理事会で決まるが、本人は、1年後のオリンピックまで続けたいという意志は「強く持っている」とハッキリ口にした。