ラグビーリパブリック

一般入試→トップリーガー。NEC吉廣広征が高校生へ「絞る」勉強法勧める。

2020.07.25

高校生にアドバイスを送るNECグリーンロケッツの吉廣広征。オンライン取材で


 新型コロナウイルス流行後の日本ラグビー界にあって、注目される取り組みのひとつに「#ラグビーを止めるな2020」がある。各種大会の中止で自己表現の場を失った高校3年生などを対象に、ハッシュタグつきのプレー映像をSNSで拡散するよう促す。

 アピール機会を失った高校生と新入生を探す大学側とのマッチングを生んだ動きは、他競技にも伝播。元日本代表の野澤武史さんが今年5月に発案した「#ラグビーを止めるな2020」は「#スポーツを止めるな2020」に昇華し、7月には一般社団法人「スポーツを止めるな」が立ち上がった。

 多くの現役選手も支援するこのムーブメントに対し、大勢と異なる角度から賛同の意を示したのが吉廣広征。トップリーグのNECでチーム最年長という35歳だ。

『#ラグビーを止めるな2020 に私自身大賛成ですし素晴らしい取り組みだと思います。ただ高校生に忘れないで欲しいのは受験でも大学に行けるということです。まだ大学入学共通テストまで半年以上あります。ラグビーへの情熱を勉強にも注げば可能性はいくらでも拡がります!』

 自らのTwitterでつぶやいた背景を、改めて語る。

「あそこに動画をあげるのはいい取り組みですけど、あげた後に勉強をしながらいろんな選択肢を持つのはいまからでも遅くない、と思い、生意気にも…」

 当の本人も、一般入試に合格した過去を持つ。

 神奈川・桐蔭学園高3年の秋までは推薦で筑波大へ進もうとしたが、「一般で入れそうな人は一般で受けてと直前で言われた」。描いていた青写真が崩れた11月以降は、「ラグビーをしている時間より、勉強している時間の方がはるかに長かった」という。大阪・花園ラグビー場での全国大会に出ていた年末年始も、ホテルでテキストを開いた。

 結果的には、筑波大の体育専門学群を卒業。昨年度までの12シーズンをトップリーガーとして過ごしてきた。

「僕は普通の受験生と違って、ずっと勉強してきたわけじゃない。他の受験生たちが(心身ともに)きつくなってくる時から勉強し始めて、過去問をやればやるほど点数が上がるといういい流れのままセンター試験を受けられた。(チームに)受験する仲間が多かったことにも助けられた。部活が終わるとそのまま図書館へ行く流れがあったので。その時はSHの同級生も東大に行きました」

 話をしたのは今年6月。短い準備期間をフル活用して難関校に受かった吉廣とあって、「皆もいまからなら半年以上ある。僕でできたんで」と一般入試へのチャレンジを後押しする。

 強調するのは、「絞る」の勧めだ。

 受験生時代の自身も志望校を筑波大と早大に定め、過去問などをもとに出題傾向を徹底分析した。「絞らないと、いろんな大学には受からないと思ったので」。当日の試験問題を難なく解くことから逆算して日々の計画を立てるさまは、限られた準備期間で打倒強豪を目指すラグビーのチームと重なるような。

 とにかく吉廣は、ただ受験を勧めるだけでなく受験を制する具体策も口にしたのだ。

「もともと勉強ができる人はどうやっても大丈夫ですけど、勉強に自信がなかったりラグビーに時間をかけたかったりする選手は、行きたい大学の受験要綱を見て、どんな勉強をしたらいいかを考える(ことが大事)。そこ(いくつかの志望校、学部)だけに絞ればまだまだチャンスある」

 一般入試の可能性と一般入試を切り抜ける策を語った吉廣は、グラウンド内では最後尾のFBを主戦場とする。身長180センチ、体重89キロのサイズにして、的確な位置取りと判断力が光る。

 開幕6連敗したまま不成立に終わったトップリーグ2020を「長くやっているなかで上位に入る練習量。皆でミーティングする時間もあった。『あれやればよかった』というより『あんなにやったのに、なぜこんなにうまくいかないんだろう』という感じ」と総括。21年1月からの新シーズンを見据える。

「ただ一生懸命やっていたら勝てないのがよくわかった。何が足りないのか、どう攻めるのかを(選手自身が)考えるきっかけになったのはよかった。次のシーズンで結果が出れば、『勉強になった』となるけど、活かせないと、ただ負けて弱いチームになる。次が大事」

 グラウンド外ではクラブのマネジメント業務にも携わり、新たなファンの開拓を目指す。普段使いやすいグッズを企画したり、SNSで選手の情報を発信したり。一般入試で入った筑波大時代からスポーツマネジメントに興味があり、現在は22年1月発足予定の新リーグ参加に向け認知度アップを目指す。

 高校3年の夏から17年の月日が経ったいまも、目の前の難題に立ち向かっている。

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