ラグビーリパブリック

あそびを、とめないで。『ラグビートオッツ』再開に子どもの声ひびく

2020.07.22

菊谷崇氏、廣瀬俊朗氏、野澤武史氏ら元日本代表の、メンバーがアドバイザーを務める(撮影:小宅崇)

 渋谷区内の人工芝公園から、小さな子供たちの歓声が聞こえてくる。

 7月21日の午後、渋谷区深町小公園で、ラグビー遊びの無料イベントが開催された。

 集まったのは幼児6人とそのファミリーたち。約40分間、ラグビーにルーツを採った多様な動きやゲームを楽しんだ。

「やったね!」。ハイファイブがトレードマークだった活動だが、今はボールでタッチ!(撮影:小宅崇)

 初めて参加した女の子の保護者は「見ていても、本当に楽しそうでよかった」。セッション中は、子どもたちの動きを見守るママたちからも笑顔があふれた。

 イベントを主催するのは社会人トップチームでトレーナーも務める桑田淳史氏。イングランド発祥、幼児のためのラグビーあそびプログラム「ラグビートオッツ」のライセンス下で展開している。

 心配されるのは巷の感染拡大の状況だが、ラグビートオッツは予防のため手を尽くしている。社会人チームでも職域として感染予防対策に取り組んでいる桑田氏、S&Cコーチでもある籏智健(はたち・たける)氏が、フェイスシールドなどをメニューに応じて駆使し、安心して参加できる仕組みづくりを進めている。

再開初日は6人の幼児さんたちが集まった。リピーターも初参加の子も、短い時間でたくさんの体験をした(撮影:小宅崇)

 ラグビートオッツはラグビー教室ではない。対象は2歳から5歳。とりわけ低年齢の年代を意識し、「ラグビースクールに通う前」のステージを重要視している。ラグビースクール、ラグビー教室とは内容も一線を画す。チームワークよりもまず個々の子供。しゃがむ、歩く、走る、転がる、ボールを運ぶ、投げる、蹴るなどなど、体と心の動きのバリエーションを大切にしている。学ばせるのではなく、子供自身がたくさん遊べることにフォーカスしている。

 桑田氏は、ラグビートオッツを、昨年来のラグビー熱を定着させるための下支えになると考えていて、子供たちとのセッションはもちろん、渋谷区にソフトラグビーボールを200個贈呈するなど、積極的な活動を行ったきた。それが、ウイルス対策でストップ、中断前以来の利用者から請われて再開に踏み切った。

これまでとは違った無料での展開は、自身が一児のパパでもある桑田氏の切なる気持ちにも後押しされている。もう何か月も、子どもの遊ぶ場や時間が削られている。

「あそびは子どもにとって欠かせない日常であり、体験であるはずです。世の中では見えていない、お母さん、お父さんのご苦労もあると思う。私たちが実際にご提供できるのはほんのわずかな機会だけれど、少しでも役に立ちたい」

 ラグビートオッツの無料セッションは、今回の渋谷をリスタートに、各地を回る予定だ。詳細はFacebookページ「Rugbytots JP」まで。