来年開催予定の東京オリンピックを目指す7人制ラグビー(セブンズ)日本代表候補の松井千士が、7月9日、オンラインでの合同取材に応じ、現在の練習状況と今後について語った。
現在、セブンズ日本代表候補選手たちは新型コロナウイルス感染拡大防止の対策で全国5か所(北海道、東京、名古屋、大阪、福岡)に分かれて少人数でのトレーニングを実施している。
この日、東京で2回目の練習参加となった松井は、ソーシャルディスタンスにも注意しながら練習していることを明かし、「久々にセブンズファミリーの顔を見れて、やっと練習が始まってきたなという感じ。充実している」と語った。
セブンズの国際舞台で戦うため、松井は現在、ウエイト増量にも取り組んでいるとのこと。「過去、セブンズの大会に出るときは83キロとか84キロだったが、いまは88キロにウエイトアップして、スピードが落ちないように体を慣らしているところ」だという。
今年の夏に開催されるはずだった東京オリンピックは、新型コロナウイルスの世界的大流行により、1年延期が決定。本番まであと4か月というところでスケジュール変更となり、松井はメンタルの部分で落ちてしまったことを認める。しかし、「逆に言えば、あと1年間準備する時間が増えたということを考えれば、セブンズ日本代表にとってはいいことだったと思う。よりいっそうチーム力も上がると思うし、個々の能力も上げていく1年にすれば確実にプラスになると思う」と前を向く。
松井は先週、3年在籍したサントリーサンゴリアスを退団し、キヤノンイーグルスへ移籍することが発表された。プロ選手となり、決意も新たに、大きく飛躍しようとしている。
「僕自身、オリンピックに賭ける思いは強い。2016年のこともあるし(リオオリンピックのメンバーから落選。バックアップ選手として参加)、悔しい思い出もあったので、何かを賭けてやらないと。オリンピックにただ出るだけでは僕自身も満足できないし、メダルを獲って、なおかつ自分自身も活躍して世界で注目されるプレーヤーになりたいと思ったときに、よりいっそうラグビーにかける時間を費やすために決断した。もともとプロ選手になりたいという気持ちはあった。(東京オリンピックが)1年延びたということもあって、勝負を仕掛けようとしたのがこのタイミングだった」
サントリーでは社業後に練習をしていたが、プロになり、コンディショニングでけがをしないような取り組みもしっかりできているという松井。個人的にも、元陸上競技選手に教わってスピードに特化した練習もおこなっている。
現在25歳の松井は、東京オリンピックまではセブンズに専念し、その後は、15人制にシフトするプランを持っている。来年1月から5月に開催予定のトップリーグ2021は不参加になる可能性が高いが、オリンピック後は、同志社大学生時に経験した15人制日本代表への復帰を目指し、2023年のワールドカップをもうひとつの大きな目標として掲げている。
「来年7月まではセブンズに特化して、オリンピックで結果を残したいと思っている。東京オリンピック後は、キヤノンでしっかりアピールし、15人制の日本代表に食い込んでいきたい。2023年のワールドカップも、プロ選手として、自分のラグビー人生を賭けて勝負したい」
とにかく、いまはセブンズに集中だ。
日本はワールドセブンズシリーズの来季コアチームに昇格することが決まり、東京オリンピックまでの時間を世界の強豪と戦いながら強化していく。
セブンズ日本代表候補からは、2016年のリオオリンピックでキャプテンを務めた桑水流裕策(コカ・コーラレッドスパークス)や橋野皓介(キヤノンイーグルス)といったベテランが離脱し、医学の道へ進むワールドカップ2019ヒーローの福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ)も延期になったことで東京オリンピックを断念しており、昨季ワールドシリーズでキャプテンも経験したスピードスターの松井にかかる期待は大きくなっている。
リーダー格のひとりとして精神的にも成長している松井は、「自分自身、まだまだ若い選手だが、しっかりチームをまとめていきたい」と力強く語った。